本のソムリエおすすめ本を紹介する書評サイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病(上・下)」ダニエル・E・リーバーマン

本のソムリエ 2021/12/28メルマガ登録
このエントリーをはてなブックマークに追加

「人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病(上・下)」ダニエル・E・リーバーマン


【私の評価】★★★★☆(81点)


要約と感想レビュー

 ハーバード大学で進化生物学を教えている著者は、ときどき裸足でランニングします。「足、痛くないの?」と言われるたびに、著者は何百万年も裸足で歩いていた人間が4万年前、靴を履きはじめた頃のことを思うのです。実際著者の足の裏は、春になって裸足で歩く時間が増えていくと角質が厚くなり、冬になって裸足でいるのをやめると厚くなった足裏の角質は薄くなります。人は自分で足裏にクッションを作り出すことができるのです。しかし、靴を履くことでその能力は使われることがないのです。


 骨粗鬆症という骨がスカスカになる病気もありますが、原因は若い時に運動量が不足するために骨をつくる骨芽細胞の活動が活発化せず、骨量が減ってしまうためです。これも楽な生活が骨芽細胞の能力が使われないないようにしていることが原因なのです。つまり、数百万年にわたる人間の進化は、栄養を脂肪として蓄えながら、汗で体温調整し、裸足での長距離移動や激しい運動に耐えることを前提にしているのです。現代社会の十分な栄養と運動の不足の生活とは相容れないものなのです。


・若いときに座っていることの多かった人は中年にさしかかったときの骨量が、若いときに活発だった人よりも大幅に少なくなる(下p187)


 著者が上巻で説明するのは、ヒトがチンパンジーとわかれたのが600万年前くらいで、その後、ホモ族が出現し、20万年前にやっと現在のホモ・サピエンスが出現したという歴史です。それまではヒトずっと狩猟採集生活をしてきて、最終氷期が終わった1万年前に農業を始めます。さらに産業化によってヒトの生活が楽になるのは、ここ数百年の出来事なのです。


 数百万年かけて狩猟採集に適応してきたヒトが、農業や産業化に適応するには時間がかかります。ヒトの身体が今の生活に適応するまでは、ヒトは食べすぎと運動不足で肥満に悩み、糖分のとりすぎで虫歯に苦しみ、栄養過多で心臓発作と脳卒中を心配しながら薬を飲む生活を続けることになるのでしょう。


・心臓発作と脳卒中はおもに進化的ミスマッチの一例であって、農業以降の(とくに産業化以降の)食事と座ってばかりの生活様式との複合作用によって引き起こされている(下p159)


 現代人が肥満になりやすいのも、心配性なのも、虫歯になるのもすべて理由があるのだとわかりました。欲望の欲するままに糖質過多の食事をしながら、運動不足の生活をしていれば、病気になるのは当然のことなのです。これらの問題をなくすためには、1万年前の狩猟採集生活に戻るのか、運動を毎日の生活に取り入れるしかありません。それが裸足で歩くことであり、エスカレーターも、エレベーターもできるだけ使わない生活なのです。


 生物としてのヒトの可能性と「鍛えると強くなる」という無限のヒトの可能性を感じました。「辛いときが、一番伸びている」とも言われますが、それは事実なのでしょう。リーバーマンさん、良い本をありがとうございました。


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 


人気ブログランキングへ


この本で私が共感した名言

・今日の人間全員の祖先は、サハラ以南のアフリカ出身の1万4000人足らずの繁殖個体の集団で、非アフリカ人のすべてを生んだ最初の集団は、おそらく3000人以下だったとされている(上p201)


・心配性で、ストレスを抱えやすい傾向を持つことは、さまざまな悲劇や不幸の原因になっているが、もともとそれらの性分は、危険を避けるため(上p32)


・人間の奇妙な特徴の一つは、脳と消化管(空の時)がどちらも重要が一キログラムあまりで、同じような大きさをしている・・・人間と同じくらいの体重の哺乳類の大半は、脳の大きさが人間の約五分の一で、腸の長さが人間の二倍ある(上p145)


・大きな脳には相当なコストがかかる。脳は、重さで見ると体重の2%程度なのに、安静時の身体のエネルギー収支の約20%から25%を消費する(上p170)


・近東では、農業が始まる前は虫歯を持った個人の割合が約2%だったのに、初期新石器時代には約13%へと跳ね上がり、時代がくだるとさらに高くなった(下p28)


・人間は肥満になりやすいように進化したが、それは脂肪が私たちを健康にするからではなく、脂肪が妊娠能力を高めるからである(上p32)


・私たちの祖先は・・・ほかの霊長類よりも大量の脂肪を身体に蓄えられるようにした・・・とくに人間の赤ん坊は、霊長類の赤ん坊に比べるとずいぶん太っている(上p182)


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村へ


▼引用は、この本からです
「人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病(上・下)」ダニエル・E・リーバーマン「人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病(下)」ダニエル・E・リーバーマン
ダニエル・E・リーバーマン、早川書房


【私の評価】★★★★☆(81点)


目次

序論―人間は何に適応しているのか
第1部 サルとヒト
第2部 農業と産業革命
第3部 現在、そして未来



著者紹介

 ダニエル・E・リーバーマン(Daniel E. LIeverman)・・・ハーバード大学人類進化生物学教授、同大エドウィン・M・ラーナー21世記念生物学教授。"ネイチャー""サイエンス"誌を初めとする専門誌に100以上の論文を寄稿。ヒトの頭部と「走る能力」の進化を専門とし、靴を履かずに走る「裸足への回帰」を提唱、「裸足の教授」と呼ばれる


メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本 :



同じカテゴリーの書籍: