人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「建設業現場代理人に必要な21のスキル―これから現場代理人を目指す人へのメッセージ」鈴木 正司

2021/06/04公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

「建設業現場代理人に必要な21のスキル―これから現場代理人を目指す人へのメッセージ」鈴木 正司


【私の評価】★★★★☆(86点)


要約と感想レビュー

 現場代理人とは工事現場において、工事の指示を出して安全・品質管理を行い、工程を管理し、原価を管理し、発注者と交渉する請負工事の責任者です。つまり、現場のすべてを管理する責任者であり、工事が遅れたり、品質に問題があれば、真っ先に対応しなくてはならないのが現場責任者なのです。


 発注者からは契約通りの完工を求められ、協力業者からは採算が合わないと文句を言われ、部下からは問題を相談される。こうした現場代理人の仕事の重責にノイローゼのようになってしまう人がいるのだという。そこで人との付き合い方、精神的な心構えまで含めて現場代理人になる人に教えたいスキルをまとめたのがこの一冊なのです。


 著者のお勧めは現場代理人というキャラクターを演じてみるということです。


・現場代理人にふさわしいキャラクター・・・いつも前向きで、声が大きく、冗談が言えて、どんな人にも物怖じせずに話ができる・・・必要なキャラクターを演じてみるという発想になってやる(p41)


 現場の雰囲気は現場代理人しだいです。この本でも声がけ、雑談を通じた発注者、部下、協力業者とのコミュニケーションの大切さを強調しています。


 発注者に対しては毎朝5分の朝駆け5分詣でをして雑談する。
 部下から「できない」と言われたら、その理由と代案を聞いてみる。
 新規入場者には教育に立ち会って安全への思いを伝える。
 問題が起こればすぐに上司に報告、連絡、相談して、自分で抱え込まない。


 そうしたすべての面において高いレベルの人間的資質が求められているのです。


・現場代理人には雰囲気づくりが必要です。無駄話を1~2分してから、「申し訳ないけど、このように変更してもらうと安全で事故が防止できると思っているので、お願いします」(p20)


 技術者的な視点では、コンクリートのスランプ(硬さ)を目視で管理する技術や目測、歩測で測量をチェックするなど私の知らない土木の話が興味深く読みました。こうした技術的なノウハウ、人間関係のノウハウ、仕事の管理のノウハウを伝えていくことが大事なのでしょう。


 こうした本ももう少し探してみたいと思います。鈴木さん、良い本をありがとうございました。


この記事が参考になったと思った方は、
クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 


人気ブログランキングへ


この本で私が共感した名言

・現場で働いてくれる人々は、新規に現場に入ってきた瞬間に、安全管理レベルを値踏みします。「この現場の安全はこの程度でよさそうだ」・・・と一瞬で現場の雰囲気を感じ取ります(p90)


・現場代理人は新規入場者教育を部下に任せきりにせず、立ち会って様子を観察してください(p98)


・現場代理人が朝礼で毎日同じ行動指針や目標を話すことが、電車内のアナウンスと同じ効果を及ぼすと考えてください(p23)


・指示を部下に出した時、「~はできません」と答えが返ってきたらチャンスです・・・部下なりの意見がある証拠です。そこで、現場代理人は、優しく「なぜ」、「どうして」と問い返しましょう。3回くらい問答しても部下から「~はできません」という答えが返ってきたら、・・・「これをやるためにはどうすればいい?」(p47)


・不安(すなわち仕事)を人に振る・・・「この不安は、部下に任せる」「この不安は、会社に支援をお願いする」(p113)


・受注してから工事開始までの間は、自分を売り込む最高のチャンスです・・・発注の担当者に、朝何時に来られているか聞いてみてください・・・冗談を言えるくらいの関係になるためには、経験上会う回数が少なくとも10回以上必要となります・・朝駆けをして5分詣でを繰り返し行って信頼関係を深め・・(p59)


・支払金額が常用金額よりも少ない場合は、その原因を追求しておく必要があります。2ヶ月以上も連続してくると、協力業者から採算が合わないと申し入れが来るようになります・・・責任が明確になっていれば、金銭のやりとりも明確になりますので、協力業者との関係もこじれずに済む・・・月ごとに協力業者の出来高管理を実施してください(p144)


・発注者からもらえる金額は工事最終時点まで分かりません・・・したがって協力業者への発注金額は、官積算の工事金額×落札率×0.85以下に抑えることが現場代理人の仕事となります(p145)


・測量には間違いや勘違いがつきものだ・・・歩測で測って、「P1とP2の間は20歩。P2とP3の間は18歩だ」・・・再測量を行ったところ、1m間違っていました(p170)


・「測量をチェックしなさい」と言う言い方はあまり効果がありません・・・具体的な疑問を投げかけるだけで、部下は心配になり必ずチェックをするようになります。「AとBのどちらが高いの?」(p173)


・目視でスランプ値を管理する・・・1台目の生コンクリートは硬い・・・(p179)


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村へ


▼引用は、この本からです
「建設業現場代理人に必要な21のスキル―これから現場代理人を目指す人へのメッセージ」鈴木 正司
鈴木 正司、経済調査会


【私の評価】★★★★☆(86点)



目次

1 現場代理人に必要な7のスキル
2 上手に現場を運営する7のスキル
3 現場を把握して利益を確保するための7のスキル


著者経歴

 鈴木正司(すずき まさし)・・・坂田建設株式会社執行役員土木本部副本部長兼土木統括部長。昭和28(1953)生まれ、東京都出身。東京都立大学工学部土木工学科卒業。京都大学大学院工学研究科土木システム工学専攻博士課程修了。京都大学博士(工学)。技術士(建築部門)、コンクリート診断士、コンクリート技士、1級電気施工管理技士、1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士


メルマガ[1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』]
3万人が読んでいる定番書評メルマガです。
>>バックナンバー
登録無料
 

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: