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「情報を正しく選択するための認知バイアス事典」山﨑紗紀子、宮代こずゑ、菊池由希子

2021/05/28公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(75点)


要約と感想レビュー

 人には陥りやすい錯覚や思い込み、思考の偏りがあります。これは動物から進化した人間の思考が、完璧ではないから生じることです。この本では人が陥りやすい錯覚、認知バイアスについて学びます。


 例えば、チェリピッキングというのは、自分に都合のいい証拠だけを提示してしまうこと。自分の主張を守るために、自分で自分を正当化しようとしてしまうのです。見方によっては、一部だけを切り取って報道するマスコミそのものだと感じました。


・チェリーピッキング・・・自分に都合のいい証拠だけを提示することで、相手を説得しようとする(p39)


 また、興味深いことに世の中の不条理やおかしな主張にも、人の認知バイアスを使っているものがあります。例えば、知らない人よりも知っている人を大切にしてしまうという「身元のわかる犠牲者効果」。昨日見たテレビで貧乏なシングルマザーが取材されていて、「苦しい生活が何も変わらない、政権が悪いのではないか」という文脈で編集されていましたが、これもシングルマザーという具体例を出すことで、影響力を大きくしようとしているのです。


 また、子宮頸(けい)がんワクチン接種後の健康被害の裁判によってワクチン接種率が低下していましたが、これも被害を受けた一部の人が可哀想という感情的なバイアスによるものでしょう。データで考えてみれば、日本では毎年約1万人が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しているのです。数十、数百人の本当に子宮頸がんワクチンが原因かどうかわからないような健康被害によって、1年で3000人、10年で3万人が安定して命を落とすことになっているのです。


・身元のわかる犠牲者効果・・・顔の見えない大多数の犠牲者よりも、身近に存在する1人の犠牲者(p238)


 ただ、現実の人間社会にあっては認知バイアスに気づいて「それは本当に科学的に正しいのか」と、理論的に主張しても通りにくいのが現実です。なぜなら、人は感情的な動物だからです。さらに人には他人の行動を見て、自分の行動を合わせるという同調バイアスもあり、多数派意見を作るのが難しいのです。


 極端な例だと、世の中が地球温暖化を前提に動いているときに、「温暖化とCO2濃度の相関は明確ではない」と主張しても、簡単に通るはずがないのです。「人をバカにする人が一番バカ」という言葉を思い出しました。知識のない人ほど、自分を過大評価して、意見の合わない人を簡単に否定するのが現実なのです。


 認知バイアスについて簡単に復習できる一冊ということで★3つとしました。情報文化研究所さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・ダニング=クルーガー効果・・・知識のない人ほど、自分には能力があると過大評価してしまう効果のこと(p250)


・疑似相関・・・アイスクリームの売上が上がると・・・溺死事故が増える(p173)


・滑りやすい坂論法・・・「弁護士になれなければ、お金に困る」のは本当なのか、証拠の提示を求める(p33)


・希望的観測・・・目上の人の楽観的な見通しに対して、「でも、何の客観的なデータもありませんよね・・・などと、ストレートに反論できるだろうか(p59)


・バーナム効果・・・あいまいな性格に関する記述を目にしたとき、人は自分に当てはまっているととらえてしまう・・・占いにだまされないために(p193)


・現状維持バイアス・・・挑戦して失敗するくらいなら、最初から挑戦しないほうがいい(p222)


・チアリーダー効果・・・集団の中にいるときのほうが、個人がより魅力的に見える(p234)


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▼引用は、この本からです


【私の評価】★★★☆☆(75点)


目次

第1部 認知バイアスへの論理学的アプローチ
第2部 認知バイアスへの認知科学的アプローチ
第3部 認知バイアスへの社会科学的アプローチ



著者経歴

 山﨑紗紀子(第1部執筆)・・・東京医療保健大学非常勤講師。専門は哲学、論理学。人間が普段行っている何気ない推論の形式化や、形式体系そのものの仕組みに関心がある。


 宮代こずゑ(第2部執筆)・・・宇都宮大学共同教育学部助教。専門は認知科学、認知心理学。音声や文字など、言語を表現するための物理的な媒体が持つ感性情報の処理や、またそれらと言語情報処理とのかかわりに関心がある。


 菊池由希子(第3部執筆)・・・長野県林業大学校非常勤講師。専門は社会心理学。職場などの日常的な場面において、本人や周囲の人々のストレスを最小限に抑える対処方法(ストレスコーピング)や、方法ごとの効果の差を検討することを研究テーマとしている。


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