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「脱! 残念な考え方」幸本 陽平

2021/05/17公開 更新
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「脱! 残念な考え方」幸本 陽平


【私の評価】★★★★☆(82点)


要約と感想レビュー

本当に因果関係があるのか

この本では日本人がついやってしまう思考の落とし穴、残念な考え方を避けるコツを学びます。タイトルの「残念な考え方」とは、現実を反映していない推論です。現実を乖離した仮説と表現してもよいかもしれません。


例えば販売促進策を顧客アンケートに基づいて提案するとしましょう。アンケートではトイレが汚いという意見が多かったのでトイレを掃除すれば売上が上がるだろうと考えました。本当にそうなるでしょうか。結果としてはトイレをきれいにしても、売上は上がらず、顧客の不満が減っただけであったという。因果関係が弱かったということなのでしょう。


「犯罪者の99%はパンを食べたことがある。パンを食べると犯罪者になるに違いない」というジョークがあるように、本当に因果関係があるのか、仮説は仮説として検証する必要があるということなのでしょう。


・開発において、モニターの意見は・・・ちょっと違和感のある意見や「おっ」「へぇ」と感じる鋭い意見を拾い上げることこそが重要です(p237)


「異業種」を参考にする

面白いのは、こうした残念な考え方のパターンを教えてくれるところです。データの一部を切り取ってもっともな結果を導いてしまうパターン。仮説の中に論理の不十分や思考の抜けがあるのに誰も検証しないパターン。因果関係の逆も正しいと考えてしまうパターン。


例えば、進学校ほど校則が少ないのは、校則が少ないから進学校なのか、進学校だから校則が少ないのか。それとも因果関係が本当にあるのか。同じようにCO2が増えてきたから温暖化なのか、温暖化したからCO2が増えてきたのか。それとも因果関係が本当にあるのか。よく考えたいものです。


失敗が少ないのは、「異業種」を参考にすることです。また、正しい意思決定をするためには「比較」が必要であり、「標準」が決まっているから比較ができるという。よくあるのは、全員の作業のやり方がバラバラなのは標準が決まっていないからなのです。


・優秀な進学校ほど、校則が少ない。一方、生徒に不良が多く、学業もいま一つな学校ほど、校則が多い。校則が多いと生徒が反発し、不良が増えるのではないだろうか・・・本当にそうでしょうか(p51)


真因に迫る

「地球温暖化はCO2増加が原因である」と決め付けている人類への警鐘だと感じました。(笑、冗談です)著者は未来を変えようとすれば、仮説を立てることとなり、必ず途中で予期しないことが起こったり、異なる結果となるとしています。いくら考えても現実を完璧に予測することはできませんが、誤差をできるだけ小さくしようとする事前の努力は必要だと思うのです。


現場では、現場・現物・現実とかなぜ5回などと言われますが、真因に迫る努力を続けていきたいものです。幸本さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・数字は嘘をつかない。しかし嘘つきは数字を使う(p204)


・肉屋さんがコロッケを売っているのはどうして?・・・ある洋食屋さんのシェフが関東大震災によって失業・・・お肉屋さんで、そこで開業資金を貯めました・・・得意のコロッケなどの洋食も販売したところ評判になり、他のお肉屋さんもコロッケを売るようになった(p57)


▼引用は、この本からです
「脱! 残念な考え方」幸本 陽平
幸本 陽平、自由国民社


【私の評価】★★★★☆(82点)


目次

序章 ロジカルであるための三つの条件 
第1章 残念な考え方 つながっていない
第2章 残念な考え方 深く考えていない
第3章 残念な考え方 広く考えていない
終章 ロジカル思考をどう生かすか



著者経歴

幸本 陽平(こうもと ようへい)・・・(株)東風社 代表取締役、中小企業診断士。新潟県生まれ。一橋大学卒。大学卒業後、日本ロレアル(株)入社。マーケティングを担当。日系化粧品会社に転職。2010年、幸本陽平事務所(現・東風社)を広島に設立。マーケティングや営業、組織運営などのコンサルティングを提供している。研修・セミナー講師として、ロジカルシンキングやプレゼンテーションなどの講座も担当している。


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