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日本の恥の文化のオリジナル「菊と刀」ルース・ベネディクト

長谷川嘉宏 2020/12/19メルマガ登録
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「菊と刀」ルース・ベネディクト


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 日本人が日本人を知る上で、多くの人がこの本を奨めていましたが、これまで手に取るに至ってませんでした。たまたま5段階欲求説で有名なAマズローの本を読んだとき、彼が生涯尊敬していた2人のうちの1人がこのRベネディクトということで興味が再燃。ググってみたらすごい美人ではありませんか(笑)。


 かなり衝撃的な本でした。第二次世界大戦中の1944年に米国戦時情報局から日本研究を委嘱され、一度も日本の土を踏まずに書かれた本です!インターネットもない時代に!


 文化人類学の第一人者であったベネディクト女史は、その手法を最大限駆使し、訳者の度肝を抜くような鋭く深く詳細な観察と考察を行いました。頼りにしたのは、米国に在住していた日本人と各種文献や文芸、類稀なるイマジネーション、そして質問力、洞察力でした。


 自分の眼で見て解釈することに満足せず、常に相手の眼を通して見ることに努め、行動の内面的意味を捉えようという姿勢が、端々に感じられます。


・「恩を忘れない」ということが日本人の習性の中で最高の地位を占めてきた(p125)


 対戦国を誹謗中傷するプロパガンダを行うことは戦争当事国としてはある意味当り前ですが、相手の本質を、学者を通じて深く知ろうという発想が日本にはあったでしょうか?しかも敵国民の非常に優れている面も併せて、しっかりと捉え軍部に伝えているのです。残念ながらこの段階で国力の差があったと感じざるを得ませんでした。


 日本語訳が発刊されたのが1948年。さすがに月日が経過し、今の日本人にはまったく見られない特質も数多くとりあげられています。生活様式そのものが欧米化し、それとともに消えていった慣習と考え方があるなぁ、と。


 しかし、恩とか義理についての沁みついた感情は、取り去ることがむずかしいほどに私達の一部として厳然として残っていることに改めて気づかされます。東日本大震災で世界が驚嘆した秩序などもその一例と言えるでしょう。


・日本人の見解に従えば、強者とは個人的幸福を度外視して義務を全うする人間である(p253)


 二年半ほどの海外暮らしで、私も日本人の当たり前が当り前でない経験は多々あります。その中の1つ、それほど気に留めていませんでしたが、恩義についての感覚の違いを思い出しました。


 例えば夕食に招待されたとして、翌日その人に再会したら、日本人のほとんどは「きのうはご馳走様でした」と、かなりその話題を引っ張ることでしょう。そうすることがいただいた恩に対する礼儀であり、当たり前であると。しかし欧米ではサラリ。すでに過去のことです。


 このように異国人の眼を通して見ないと、当たり前なことはスルーしてしまいます。文化人類学の素養はまったくありませんが、第12章で子育ての仕方を見ればその国民がわかる、という視点も新鮮でした。


・彼らはなるだけ恩のさまざまな結果に巻き込まれることを避けたいのである(p129)


 第二次大戦に日本が開戦しなければならなかった第一義的理由は、石油をはじめとする資源の包囲網、そして第二義的理由は、排日移民法など日本人に対する差別侮辱であった、という意見を聞いたことがあります。


 差別侮辱に対する抵抗感は世界共通の部分ももちろんあると思いますが、日本人(当時)が汚名をすすぐ=復讐する、ことを徳と捉えていた(あるいは今でも心情的に理解できる)ことを本書を通じてよく理解できました。


 天皇制をどうするか、ということが占領統治において重大な決定だったわけですが、彼女の果たした役割はその点でも非常に大きかったと思わざるを得ません。ベネディクトさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・それは仏教的でもなく、また儒教的でもなかった。それは日本的であったー日本の長所も短所も含めて(p33)


・いやしくも日本人を理解しようとするに当たって、まず取りあげねばならないのは、「各人が自分にふさわしい位置を占める」ということの意味について、日本人はどう考えているかということである(p60)


・根強い国民的習性はわずか人間一生にすぎない短い期間に消えてなくなるものではない(p90)


・礼儀正しさは、彼らが汚名をすすがなければならないような機会をいかに極端に制限しているかを測る尺度となる(p195)


・日本人は失敗や誹謗や擯斥(ひんせき)のために傷つきやすく、したがってあまりにも容易に、他人を悩ます代わりに自分自身を悩ましがちである(p203)


・各人の魂は、本来は新しい刀と同じように徳で輝いている。ただ、それを磨かずにいると錆びてくる。この彼らのいわゆる「身から出た錆」は、刀の錆と同じようによくないものである。人は自分の人格を、刀と同じように錆びつかせないように気をつけねばならない。しかしながら、たとえ錆が出てきても、その錆の下には依然として光り輝く魂があるのであって、それをもう一度磨き上げさえすればよいのである(p241)


・「まこと」は私利を追求しない人間をほめる言葉としてたえず用いられる。このことは、日本人の倫理が、利潤を得ることを非常に悪いことと考えていることの反映である(p266)


・人は人前で嘲笑され、拒否されるか、あるいは嘲笑されたと思いこむことによって恥を感じる(p273)


・日本の生活曲線は、アメリカの生活曲線のちょうど逆になっている。それは大きな底の浅いU字型曲線であって、赤ん坊と老人とに最大の自由と我儘とが許されている(p310)


・ある個人もしくは国家が、他の個人もしくは国家に辱めを与えるのは、誹謗や、嘲笑や、侮辱や、軽蔑や、不名誉の徴標を押しつけることによってである。日本人が辱めを受けたと思いこんだ時には、復讐が徳となる(p377)


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▼引用は、この本からです
「菊と刀」ルース・ベネディクト
ルース・ベネディクト、講談社


【私の評価】★★★★★(90点)



目次

第1章 研究課題――日本
第2章 戦争中の日本人
第3章 「各々其ノ所ヲ得」
第4章 明治維新
第5章 過去と世間に負目を負う者
第6章 万分の一の恩返し
第7章 「義理ほどつらいものはない」
第8章 汚名をすすぐ
第9章 人情の世界
第10章 徳のジレンマ
第11章 修 養
第12章 子供は学ぶ
第13章 降伏後の日本人


著者紹介

 ルース・ベネディクト(Ruth Benedict)・・・1887-1948。アメリカ合衆国の文化人類学者。ヴァッサー・コレッジ、コロンビア大学卒。同大講師および助教授、客員教授を歴任。アン・シングルトンのペンネームで、詩人としての顔も持つ。


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