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「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」ピーター・ティール

2019/03/29公開 更新
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ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか


【私の評価】★★★★★(95点)


要約と感想レビュー

 著者のピーター・ティールは、決済システムPayPal(ペイパル)の創業者であり、初めてFacebookに資金提供した人としても知られています。最終的にはPayPal(ペイパル)を15億ドルで売却、Facebookの株式は10億ドルで売却しています。現在も、自ら創業したデータ分析企業やベンチャーキャピタルを運営しているというシリコンバレーの伝説と言える人です。


 驚くべきはペイパルの創業メンバーや関係者からテスラCEOのイーロン・マスク、リンクトイン創業者のリード・ホフマン、ユーチューブ創業者スティーブ・チェン、チャド・ハーレー他、数多くの創業者が出ていることでしょう。官僚的な大組織の中では既得権者がリスクを避けたがるので新しいものは開発しずらく、新しいテクノロジーを生み出すのは、ベンチャー企業、つまりスタートアップだと断言しています。


・ペイパルの創業者6人組のうち、4人は高校時代に爆弾を作っていた。5人はちょうど23歳か、それより若かった。僕らのうち4人はアメリカ生まれではない。3人は共産圏からの脱出者だ・・・ユーパンは中国、ルーク・ノゼックはポーランド、マックス・レヴチンはソ連時代のウクライナ出身だ(p227)


 この本のオススメする起業方法は、他社と全く違う社会を変えるようなコンセプトの事業を立ち上げることです。全く違うからこそ競合のない中で成長できるのです。しかし多くの人は、現状に満足し、他人からの孤立を避け、リスクの小さい改善を選択してしまう。従来と同じようなコンセプトでは競争が激しく、利益はどうしても小さくなってしまうというわけです。


 新しいコンセプトの事業を立ち上げたら、ニッチ市場を創造してそこを支配します。少しずつ大きな市場に拡大していくのです。アマゾンが本の販売から始めたのは、極めて意図的と分析しています。


・競合とは大きく違うどころか、競合がいないので圧倒的に独占できるような全く違うコンセプトを事前に計画し、それに全てを賭けろ(p8)


 興味深いのは、スタートアップの組織づくりに注意している点です。まず、創業チームは技術的な能力やスキルも重要だけれど、創業者同士がお互いをどれだけよく知っているかや、一緒にうまくやっていけるかも重要だというのです。仮に問題のある取締役がひとりでもいると、それが原因で失敗することもあるという。取締役は三人が理想だという。


 そして、スタートアップの人間はフルタイムで、ストックオプションを持つ人が中心となります。CEOの年収は15万ドルを超えてはならないとしています。給料が安いから企業全体の価値を上げることで、持っている株式の価値をあげようとするわけです。だから株式を持たないコンサルタントやパートタイムの社員は、うまくいかないという。遠隔地勤務も避けるべきとしています。


 世の中を変えるのは、若者、よそ者、変わり者と言われますがまったくそのとおりだと思いました。ベンチャー企業では能力も大事だが、気心が知れて仲良くやっていけるメンバーが大事とか、CEOの給料は安く設定するなど、経験に基づく助言が素晴らしい。


 ティールさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?(p7)


・隠れた真実とは、いうなれば「主流が認めていないこと」だ。だから間違わないことが君の人生の目的なら、隠れた真実を探すべきじゃない(p135)


・アップルの価値は、ある人物のひとつのビジョンから生まれていた・・・逆に、訓練されたプロフェッショナルが運営する個性のない官僚組織は、ひとりの寿命を超えて存続するけれど、目先のことしか見ていない(p245)


・幸福な企業はみな違っている。それぞれが独自の問題を解決することで、独占を勝ち取っている。不幸な企業はみな同じだ。彼らは競争から抜け出せずにいる(p57)


・君の使命に説得力があれば必要な人材を惹きつけられる。その使命の漠然とした重要性ではなく、ほかの会社ができないことを君の会社がなぜできるのかを説明しなければならない(p164)


・プロダクト自体に友人を呼びこみたくなるような機能・・・友だちと何かをシェアしたり支払いをしたりするたびに、より多くの人が自然にそのネットワークに招き入れられる。安いだけでなく、早いやり方だ・・・ペイパル・・僕たちは加入者に直接キャッシュバックを行い、さらに友だち紹介に現金を支払うことで、桁外れの成長を遂げた(p183)


・最も価値ある未来の企業は、コンピュータだけでどんな問題を解決できるかとは問わないはずだ。人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどう助けられるだろうかと考えるだろう(p199)


・ティール・フェローシップ・・・20歳以下の若者に対して、学校をやめる他には特に条件なしに二年間で100万ドルを支給し、研究や仕事に没頭させるというプログラムである(p6)


ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
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ピーター・ティール ブレイク・マスターズ
NHK出版
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【私の評価】★★★★★(95点)


目次

1.僕たちは未来を創ることができるか
2.一九九九年のお祭り騒ぎ
3.幸福な企業はみなそれぞれに違う
4.イデオロギーとしての競争
5.終盤を制する―ラストムーバー・アドバンテージ
6.人生は宝クジじゃない
7.カネの流れを追え
8.隠れた真実
9.ティールの法則
10.マフィアの力学
11.それを作れば、みんなやってくる?
12.人間と機械
13.エネルギー2.0
14.創業者のパラドックス



著者経歴

ピーター・ティール(Peter Thiel)・・・1998年にPayPalを共同創業して会長兼CEO に就任し、2002年に15億ドルでeBayに売却。初期のPayPalメンバーはその後ペイパル・マフィアと呼ばれる。情報解析サービスのパランティアを共同創業したほか、ヘッジファンドのクラリアム・キャピタル・マネジメントと、ベンチャーファンドのファウンダーズ・ファンドを設立。Facebook初の外部投資家となったほか、航空宇宙、人工知能、先進コンピュータ、エネルギー、健康、インターネットといった分野で革新的なテクノロジーを持つスタートアップに投資している。


 ブレイク・マスターズ(Blake Masters)・・・法律調査と分析のためのツールを作成するテック系スタートアップJudicataの共同創業者。ティールの講義を聴講してまとめたノートが本書のもととなった。


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