「主任設計者が明かす F-2戦闘機開発」神田 國一

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主任設計者が明かす F-2戦闘機開発

【私の評価】★★★★☆(82点)


■東日本大震災で松島基地で水没した
 F-2戦闘機は、日米の共同開発です。
 三菱重工の主任設計者から
 開発の経緯を教えてもらいましょう。


 もともと日本は独自の支援戦闘機FS-Xを
 開発しようとしていましたが、
 日本の航空機独自開発を潰すために
 アメリカは共同開発を提案してきました。


 共同開発のため見かけはアメリカ空軍の
 F-16そっくりなのですが、
 アメリカからの技術情報の提供が制限され、
 ほとんどが自主開発となっています。


・今回のように他人、他社が開発した航空機については
 設計の経緯や試験の結果などのデータも不十分だし、
 わからないことも多いので、改造前にまず
 改造母機の現状についての勉強が必要で、
 新規開発のほうがよほどやりやすい・・・
 平屋の家を二階建てにするのと似たところがある(p131)


■FS-Xでは対艦攻撃能力が追加されており、
 主翼はF-16より大きくなり、
 複合材一体形成主翼を採用しています。


 アメリカは図面と数字は渡すが
 根拠は渡さない。
 アメリカの新技術は提供したくない。


 そうした制約の中で結果的に
 F-16の図面と数字を参考に
 独自開発するのと同じプロセスで
 F-2は開発されたのです。


 アメリカの日本の航空機独自開発技術を
 潰すという目的は達成できませんでしたが、
 日本の独自技術である複合材一体形成技術を
 アメリカは取得したようです。


・米国から移転された技術は、F-16の図面
 (日本が独自の技術を適用したいと
 主張した主翼の図面は除く)
 とその計算書などでした・・・
 「試験結果は含まない」と断り書き付きでした(p12)


■アメリカの技術者と日本の技術者の
 技術の囲い込みの考え方の差を
 興味深く読みました。


 日本は組織で技術継承しますが、
 アメリカは個人が技術を持っている。


 アメリカの企業を買収するときは
 買ってみたものの技術を持っている人は 
 いなくなっていた、
 という恐れもあるのでしょう。


 神田さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・飛行試験や運用の結果得られた資料は、
 非開示とされていたのである・・・
 自分たちで時間と経費をかけて
 習得するしかなかった(p48)


・ジェネラル・ダイナミックス(以下GD)
 技術者はGDの分担部位の設計はしっかりするが、
 日本の分担部位については間違っていることに
 気がついても何も言わない・・・
 このような非開示の範囲に何が含まれているかは、
 非開示で言えないとのことで・・・
 とうとうわからず仕舞いであった(p93)


・GD技術者の一人一芸・・・
 日本では厳しく一芸にこだわってはおらず、
 できるだけ担当業務を拡げようと考えていた。
 GDでは「芸」の幅が狭く、
 いろいろな種類の芸があって、しかも
 隣との境界を守る姿勢が強いように思われた(p87)


・1994年5月の米国議会への報告書では、
 日本の主として旅客機の開発技術力が向上してきて、
 民間航空機産業を席巻することを心配する人が
 少なからずいることを記載していた(p197)


・米国が飛行制御のソフトウェアを開示しないと決めた時も、
 何も心配しなかった。米国の上下院議員は、
 私たちがこのような技術はすでに
 持っていることを知らなかったのか・・
 日本はフライ・バイ・ワイヤの民間機を
 開発できないと考えたようだ(p121)


・欧米で実現している技術は、
 技術資料はなくても、必要な資金と
 「できたという正しい情報」があれば
 少なくとも類似のものはできる。
 米議会の人たちはそうしたことを
 ご存知ないのだろうか(p196)


・GDは分担部位になっていた後胴を
 複合材構造にすることを考えて、
 独自の新しい複合材で作ることを提案してきた。
 ところがこれは、米国政府から注文がついて、
 新しい独自の複合材は、米国で開発された
 新しい技術なので、FS-Xに適用してもいいが、
 材料特性データを日本の開示することは
 いっさい許されないといわれた。私たちは、
 強度計算書もないような構造は採用できない・・(p135)


・GDの提案資料の離陸滑走距離の計算根拠・・・
 技術者が分厚いジャンク・ファイルを抱えて出てきて、
 私たちの質問にテキパキと答えてくれた・・・
 なぜジャンク・ファイルの内容を会社の資料として
 残さないのか訊ねると、ジャンク・ファイルは
 自分のノウハウなので、この類の資料はみな
 自分で持っているとのことだった・・・
 このやり方ではGDに技術が
 蓄積されないだろうと心配に思った(p97)


・ボーイング787の長大な主翼を、
 F-2の複合材一体形成主翼の技術で作ることを
 三菱重工が提案して、受け入れられ・・
 という記事がボーイングのPR雑誌に紹介された(p150)


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■目次

第1章 FS-Xの初飛行
第2章 超音速技術習得の出発点
第3章 FS-Xの開発計画
第4章 FS-Xの基本設計
第5章 現実化した「平成のゼロ戦」
第6章 米国に技術移転された複合材
第7章 ロールアウト
第8章 社内飛行試験
第9章 技術実用試験へ
第10章 米国の評価
第11章 絶やしてはならない技術の継承



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