【書評】「マレーシア大富豪の教え」小西 史彦
2019/01/08公開 更新

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【私の評価】★★★★★(97点)
要約と感想レビュー
マレーシアの繊維工場を365日巡回
マレーシアにおいて50社、社員8000人の企業グループを作り上げた小西さんのインタビューです。小西さんは大学卒業後、語学力を活かし、マレーシアの華僑の染料商社に就職。マレーシアの全土の繊維工場を365日休みなしで車で巡回。月2回の訪問営業を4年間続けたのです。
売上を伸ばしていきますが、大口顧客担当者から賄賂を求められ、上司の了解をもらってからトラブルになります。しばらくすると上司が直接賄賂を渡すようになり、その上司が賄賂を横領。大口顧客担当者からは賄賂が約束より少ないと抗議され、上司はちゃんと渡しているという。
マレーシア全土の繊維工場をすべて地図に落とし込みました。そして、シンガポールを車で出発して、もっとも効率的にすべての工場を訪問する・・1ヶ月に走った距離は2往復で約5000km・・ほぼ365日マレーシア全土を駆けずり回る生活を4年間続けました(p64)
新規事業を立ち上げる
そんな状況に嫌気がさして、日本に帰国することにしました。ところが日本への帰国を伝えると、繊維工場と日本の染料メーカーから著者の営業力を見込んで、独立して仕事を続けてくれないかとお願いされたのです。
その後は、染料の仕事だけでなく様々な新規事業を立ち上げていきます。強みは営業力です。靴の小売事業、カニかまぼこ、蚊取り線香、使い捨てライター、プリント配線基板など、成功もあれば、失敗もありました。
世界は広い。誰でも、自分が有利に戦える「場所」はある。だから、できるだけ広い視野をもって、「戦う場所」を探してみるべきという、起業家としての心構えが参考となりました。
「持たざる者」としての戦略はシンプルです。ビジネス・パートナーとして技術やノウハウの面で協力してくれる企業を探して、ジョイント・ベンチャーを組んで事業をスタートさせる。私の武器は「営業力」(p148)
トラブルにどう向き合うのか
著者はこれまで、何人もの人々に騙され、苦しめられ、侮辱を受けてきたという。著者は「なにくそ」「いまに見ていろ」と、屈辱をバネにして頑張ってきたのです。今の自分に満足できるならば、自分を苦しめた人々にも「成長させてくれてありがとう」と感謝できる日が来るはずだと思っているという。
だから人が窮地に陥ったときに、その人の本質がわかるという。「目の前」の問題解決にどれだけ誠実に向き合うか、トラブルから逃げずに、全力を尽くすかどうかで、その人が信頼できるのかどうか見極めることができるという。
そんな前向きな著者でも、二度ほどあまりのショックに何も考えられない。ただ茫然とするだけということがあったという。そんなときは一旦退き、そのことを考えないようにして、運動をして、ぐっすりと眠るという。体調、心理状態とともに健全な状態になってから、はじめて対策について考え、決断するという。
私は、人生においては「根性」が非常に大切だと考えています。人間誰にでも、逆境や苦境は何度も訪れます。そのときに腐らずに、しっかり生き抜いていく。どんなにひどい目にあっても我慢して、誰よりも努力を続ける。この姿勢を持ち続けられる人でなければ、ビジネスにおいても人生においても、何事かを成し遂げることはできないでしょう(p245)
70の事業を立ち上げ20の事業が失敗
著者の新規事業の成績は70の事業を立ち上げ、20の事業が失敗したという。そして友人からファイターと言われるくらいですから、筋の通らないことには立ち向かったことがわかります。株式上場を目の前に、株の30%を政治家に渡すよう脅され拒否したら上場中止になったこともあるという。
海外での仕事、新規事業の立ち上げは甘くないことがよく分かりました。小西さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・部下を登用するときには、「現場」としっかり向き合う姿勢をもつ人物を起用する。これが、ビジネスを成功に導く鉄則です(p169)
・知力も気力も、その根源は体力に支えられています。だから、若い人にはいつもこうアドバイスしています。「まず、身体を鍛えておきなさい」と(p213)
・リベートを要求しているのです・・購買額のおよそ3%・・大手の工場でも次々と契約が取れるようになったのです(p79)
・交渉・・相手が飲むはずがない高いハードルを突き付けて、駆け引きをしながら自分の望む交渉妥結を目指す・・華僑はこの手をよく使います。しかし、私はこの手法は使いません。最大の理由は、時間がかかるからです・・・交渉だけで疲れ果ててしまう・・・そこにはすでに不信感がある(p173)
・重要なのは価値のある事業を志すことです。社会にとって、人々にとって値打ちのある事業に投資をして、成功させるために汗をかく。そうすれば、必ず「お金」はあとからついてくるのです(p150)
・生半可な自信は慢心と変わりません。世の中は甘くはない。・・・だったら、自信などないほうがいい。常に不安だからこそ、細心の注意を払う。臆病な目で世の中の動きを観察する。考えに考え抜いて最善の策を打ち立て、必死で準備をして全力でモノゴトに当たる。この姿勢を徹底することで、初めて成功を手繰り寄せることができるのです(p223)
・身につけるものはケチらないほうがいい。洋服や時計、カバンなど、いまの自分には分不相応と思えるような高級品を身につける・・私は部下を社長に抜擢したときには、ベンツを買い与えるようにしています。社長にふさわしい貫禄をつけてほしいからです(p225)
・欧米人だからといって「引け目」を感じる必要はないと言いたいのです。人種を問わず、優れた人もいればそうでない人もいる。誠実な人もいればそうではない人もいる。それが、この世界の実相なのです(p142)
・軋轢を避けるという理由で安易に謝罪しているとすれば、それは間違った対応です。なぜなら、それは自分に誇りを持たない人間のする行為だからです。それでは、世界のなかでリスペクトされることは不可能。自分の頭で考えて、自分がアンフェアだったときのみ謝るのが誇りある人間の振る舞いです(p197)
【私の評価】★★★★★(97点)
目次
プロローグ マレーシア大富豪との出会い
第1章 「持たざる者」の武器(
第2章 「幸運」をつかむ秘訣
第3章 「人生の背骨」をもつ
第4章 人生は「下」から始める
第5章 人生の成功とは何か?
著者経歴
小西史彦(こにし ふみひこ)・・・1944年生まれ。1966年東京薬科大学卒業。日米会話学院で英会話を学ぶ。1968年、明治百年を記念する国家事業である「青年の船」に乗りアジア各国を回り、マレーシアへの移住を決意。1年間のマラヤ大学交換留学を経て、華僑が経営するシンガポールの商社に就職。1973年、マレーシアのペナン島で、たったひとりで商社を起業(現テクスケム・リソーセズ)。その後、さまざまな事業を成功に導き、1993年にはマレーシア証券取引所に上場。製造業や商社、飲食業など約50社を傘下に置く国民的企業グループに育て上げ、アジア有数の大富豪となる。2007年、マレーシアの経済発展に貢献したとして同国国王から、民間人では最高位の貴族の称号「タンスリ」を授与。現在は、テクスケム・リソーセズ会長。既存事業の経営はほぼすべて社長に任せ、自身は新規事業の立ち上げに采配を振るっている。
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