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「日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち」谷崎 光

2018/11/23公開 更新
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日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 知的財産権の侵害を理由とした対中制裁を強化するトランプ大統領が頭に浮かんで、手にした一冊です。中国は、トランプ大統領がグローバル化と自由貿易に逆行していると主張してますが、本質は中国への技術流出阻止でしょう。この本ではいかに中国が外国の技術取得に動いているのか、ルポしてくれます。


 例えば中国企業で働く日本人のエンジニアなら、1年で200万元(3600万円)程度の報酬を受け取る人はけっこういるという。多いのは150万元(2700万円)程度。これに加えて、高級マンションが用意され、通訳と送迎がつき、年数回の帰国費用も会社が負担するというのです。


 実際、中国に進出するためには、中国企業との合弁しか認めず、資本も50%未満に制限しています。それだけリスクがあったとしても中国市場へ進出し、利益を上げたい日本企業は多いのです。金と技術を出させられ、合弁企業が順調に成長したら難癖をつけて乗っ取ればよい。そうでなくとも、各部門が低価格の部品へのすり替え、製品の横流しなど不正が常習化することが多いという。


・中国も市場をエサに、中国企業との合弁と技術開示を迫る。工場ごと持っていくわけだから、どんなに注意しても生産技術の流出はまぬがれない(p207)


 また、中国の技術開発とは製品を買ってきて分解し、同じものを作ることだという。もし作れないところがあれば、日本人の技術者を雇って作らせればよい。それでもだめなら、金で技術を買うか盗んでくればよいのです。実際、中国の研究所では買ってきたものをバラしたりして単に設計する場所であり、中国で本当に『研究』をしている研究所があるメーカーはまずないという。東芝の白物家電事業を買収した美的集団でさえ、その商品はすべて市場からのパクリといわれており、他社の製品を買ってきて分解してコピーしていたのです。なるほど中国の戦闘機もどこかの国の戦闘機にそっくりなわけですね。


 特許についても出願して認められると公開になるのですが、これをパクリの格好のデータベースとしているのが、中国と韓国と言われています。川崎重工が中国への日本の新幹線技術供与を行いましたが、反対も多い中、二階俊博氏の訪中時に「日本は、中国から文化を教わり、その延長線上に日本の繁栄がある・・この技術が中国の発展にもしお役に立つならば、どうぞひとつお使いください。積極的に協力します」などと発言することもあり、・川崎重工は、結果として技術開示で中国に車両を売って、結局、中国は約束を反故にして中国製新幹線を他国に売り込んでいます。盗んでも金で買っても製品が売れて儲かればよいという、現場の雰囲気が伝わってきました。


 こうした中国の情報は、中国の情報統制でなかなか日本人に伝わりません。例えば、NHKの中国での取材には、かならず中国中央電視台の職員が同行監視し、技術者流出の報道をするときも、中国側の反感をもらわぬよう在中「台湾企業」を取材させるなど、情報統制されているのです。日本のテレビ番組では最後に正義が勝ちますが、現実の国際社会では悪が勝つのではないかと感じました。谷崎さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・部品を換えて安物を買って、利益を内輪に流して、どんな部門も全部やっている・・誰かのために働くんじゃなくて、全部金のためにやる・・・こういうことは日本人はできない。でも韓国人はできる。中韓は同じ穴のムジナです(p79)


・低価格の部品へのすり替え、製品の横流し、処分品の横領、仕入先からのバックマージンなど以外に、サービスセンターなら修理費のごまかし、製品の消耗品の転売、おまけの販売など、よくそんなこと思いつくなと思うほど、様々な手口がある(p77)


・中国における民間の急成長の会社は、黒社会か軍が地方、中央政府か、もしくはイコールで複雑に結ばれたそれらと深く結びついていることが多い(p30)


・中国は、軍事力=政権である・・・尖閣諸島などでくりかえされる日本への挑発行為。あれは実は自国民への武力のアピールの意味も大きい。今、我々はこれだけの軍事力を持っているぞと。そうでないとこの国は治まらない(p190)


日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち
日本人の値段: 中国に買われたエリート技術者たち
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谷崎 光
小学館
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第1章 自動車メーカーのエンジニア
第2章 ふたりの家電技術者
第3章 国際ヘッドハンターという仕事
第4章 建機メーカーの対日戦略
第5章 中国が狙う日本の技術


著者経歴

 谷崎光(たにざき ひかり)・・・1964年生まれ。作家。京都市生まれ、大阪市育ち。武庫川女子大学から、京都芸術短期大学(現・京都芸術大学)造形芸術学部染織科へ転学。卒業時は藍染絣織り着物の制作で学長賞を受賞。1987年卒業後、ダイエーと中国の合弁の貿易商社(大阪の旧ダイエー本社内)にて総合職として5年間勤務。1992年に貿易商社退職後、執筆活動を開始。2001年、北京に渡り、北京大学(経済学院)留学を経て、北京在住で作家活動を続けている。


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