「事件現場清掃人が行く」高江洲 敦
2018/06/20公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(89点)
要約と感想レビュー
テレビで事件現場清掃人として紹介されていたので手にした一冊です。自殺、孤独死、不審死で人知れず亡くなった方の住居の清掃・補修・消臭をする仕事です。一番キツイのは故人の体液が床材に染み込み匂いが消えないことです。
著者は、染み込んだ部分を削り、表面は薬品で体液を除染し、完全に匂いをなくすまで処置します。匂いの原因は「菌の増殖」であり、現場では感染症への対策に万全を期しているとのこと。
・現場では感染症が一番怖いので、カートリッジ交換ができる防毒マスクとゴーグル、ゴム手袋は必需品です目、鼻、口の粘膜や傷口から感染源が侵入してくるのです(p108)
以外だったのは、孤独死の多くは50代の男性だという。女性の場合は、人との関わりが多いので発見されやすい。60歳以降は入院してしまう人が多いのではないかと、分析しています。さらに、毎年3万人を超える自殺者がそこに含まれ、心を痛めているようです。
・孤独死をするのは年金暮らしの老人が多いと思われるかもしれません。ところが実際には、50~60代の男性が多いのです。まず統計を見ると、2006年に東京で亡くなった一人暮らしの人の数は4896人で、このうち男性は3379人と70%近くを占めています(p29)
孤独死が多いという現実は、孤独な人が多いということであり、社会の構造的な課題があるのではないかと思いました。核家族、単身世帯が増え、人との交流も少なくなっているということなのでしょう。
高江洲さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・12年間で36万人以上が自殺しているという事実は、先進国の中で最も自殺が多いことを示していますが、この事態の異常さは10年で県庁所在都市が一つ消えてしまった、あるいは一日に100人近い人が自殺しているという譬えを使うとよくわかると思います(p42)
・「家つき、カーつき、ババア抜き」などという言葉が流行ったおとがあります・・今では彼女たち自身が、一人取り残され、40年来暮らし続けている団地の一室でひっそりと余生を送っているのです(p211)
・葬儀社の社員には原因不明の死を遂げるケースが少なくないと聞いたことがあります・・初めて現場に行くときは、決してスタッフを同行させませんし、私自身も現場に入るときには必ず防毒マスクをするようにしています。どんな菌が漂っているかわからない現場に、スタッフを連れて行くのはあまりにリスクが大きいからです(p107)
・大家さんには、次の入居希望者があっても通常は五年程度、「事故物件」として自殺があったことを告知する義務があります・・長期間空室になる可能性が高いうえ、家賃を大きく値引きしなければ入居者が決まりません(p50)
・風呂場で練炭自殺を図った男性・・彼は奥様から責められ続けていたのかもしれません。「これからどうするの!どうするつもりなの!」今、私の目の前に立っている奥様の顔は夜叉の顔です。彼女はその顔を生前のご主人にも向け、今の私と同じような気持ちにさせていたのではないでしょうか(p92)
・においでわかる故人の死因・・一番わかりやすいのは糖尿病とアルコ―ル依存症で亡くなった場合です・・同じように、内臓系のガンで亡くなった人の場合も、独特のにおいがして、なんとなく死因を判断することができます(p75)
・この神社には二カ月に一度くらいの割合で足を運び、お祓いを受けては神主さんと語らうようになりました。キリスト教でいえば懺悔をしに行くという感覚に近いでしょうか(p131)
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【私の評価】★★★★☆(89点)
目次
第1章 孤独死の現場
第2章 自殺の現場
第3章 特殊清掃という仕事
第4章 天職
第5章 事件現場清掃人への道
第6章 事件現場清掃ビジネスの可能性
第7章 死のスタイル
著者経歴
高江洲敦(たかえす・あつし)・・・1971年沖縄県生まれ。料理人、内装業者、風俗店専門リフォーム職人などを経て、自殺・孤独死・殺人現場などを扱う「事件現場清掃会社」を設立する。これまでに立ち会ってきた事件現場は1500件を超す
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