「図解 戦闘機の戦い方」毒島刀也
2017/12/02公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★☆(80点)
要約と感想レビュー
現代の戦争はレーダーしだい
現代の戦闘機の作戦を図解で解説してくれる一冊です。後半は中国の本土や空母を目標とした作戦シミュレーションが面白い。
現在の戦争は、電子機器の性能が半分以上、勝負を決めることがわかります。例えば、交戦はレーダーで発見した敵にミサイルを発射するだけであり、パイロットの技量が役立つのは、ミサイルの回避くらいなのです。そのため、戦闘機は巨大なレーダーを持ったAWACSと連携しながら戦うのです。ただ、ソ連(ロシア)ではAWACSの機数に限りがあるため、MiG-31やSu-30といった戦闘機が"AWACSの代わり"を行える能力を有しているという。
現代の戦争はミサイルしだい
では、ミサイルはどれくらいの確率で回避できるのか?とえいば、ミサイルが到達する1分で打てる手は、ECM(電子対抗手段)を作動させて外れることを祈り、それでもダメならチャフを撒いて、機動で回避するしかなくミサイルによる撃墜確率は10~30%という。必中ミサイル(スラマー)と呼ばれるAIM-120の撃墜確率は0.46であるという。
したがって、レーダーが働かなければ機関砲も撃てないわけで、現在の航空戦はレーダーに大きく依存し、そのレーダーを封じれば、ちょっとやそっとの機体の性能差は関係なくなるのです。そこで、ステルス戦闘機が開発されているのですが、ステルスはレーダーにどう映る?のでしょうか。
ステルス戦闘機は、熱反応はありますが、レーダーには反応がなく、追尾できないのです。そうしているうちにステルス戦闘機はミサイルを発射し、こちらが回避行動を行うことになるのです。
現代の戦争は防空網しだい
こうした事情がわかると、中国がどうして韓国のサード(終末高高度防衛ミサイル:Terminal High Altitude Area Defense missile)に反対するのかがわかります。つまり、サードがあると、韓国や周辺を狙った中国のミサイルや戦闘機が迎撃されてしまうからです。地対空ミサイル(SAM)が存在するだけで、仮に制空権を得るためには、敵防空網制圧(SEAD)/敵防空網突破(DEAD)を行わなくてはならなくなってしまうのです。
これでは、朝鮮半島で戦争が起きた時、前回のように中国が参戦するとした場合、韓国を攻撃しにくくなるのです。毒島さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・射出座席を使用した場合の生還率は、90.7%となる・・射出の際には最大20Gもの加速を掛けるので、首や背骨を含めてパイロット生命が断たれる場合も多々ある(p30)
・地対空ミサイル陣地の捜索レーダーと交戦レーダーは離して置かれている。直接の脅威となる交戦レーダーを潰すためには、どうしても一度ロックオンさせる必要がある(p75)
・機体の後方は、「チェッキング・シックス(6時の方向に注意せよ)」という合言葉があるほど危険で、最も注意すべき場所である・・管制レーダーの支援がない場合は、上方、特に太陽のある方角からの攻撃に気を付けなくてはならない(p112)
・ASM-1(空対艦ミサイル)は赤外線画像誘導なのでチャフや電子妨害に強く・・ただしASM-1の射程が短いので、手前で護衛する駆逐艦の射程圏内にF-2が飛び込む格好となる(p189)
▼引用は下記の書籍からです。
【私の評価】★★★★☆(80点)
目次
第1章 戦闘機とは何か?
第2章 戦闘機の構造
第3章 アビオニクスの科学
第4章 兵装の科学
第5章 戦闘機の力学
第6章 [シミュレーション1]空対空戦闘のプロセス
第7章 [シミュレーション2]空対地攻撃&ステルスvs. ステルスのプロセス
第8章 [シミュレーション3]空対艦攻撃のプロセス
著者経歴
毒島 刀也(ぶすじま とうや)・・・1971年、千葉県生まれ。1994年、日本大学工学部機械工学科卒業。卒業後、ミリタリー誌「Jウイング」(イカロス出版)、航空雑誌「エアワールド」(エアワールド)の編集者として勤務。2004年より、フリーランスの軍事アナリスト、テクニカルライターとして活動。
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