「流転の海 <第一部>」宮本 輝
2017/11/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(73点)
要約と感想レビュー
■自分の父親をモデルにした
自伝的小説です。
父をモデルとした松坂熊吾は、
自動車関係の仕事で財をなしました。
豪快で、先を読む目を持ちながら、
人に騙されるような人情に厚い男。
母は、バツ一ながら大阪の茶屋の仲居で
身を立てていたところを
父に見初められた。
■当時は、お妾さんが普通の時代です。
体を売って生きていく人もいれば、
闇で商売して儲ける人もいる。
当時でも金のある人と、
金のない人がいるのですね。
宮本さん
良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・戦争で死ぬくらい馬鹿げたことはないぞ。ええか。わしが『突撃』っちゅうたら、前に進んどるようなふりをして、安全なところに身を隠せ。わしが『後退』っちゅうたら、誰よりも先に逃げ出せ。死ぬなよ。鉄砲も空に向けて撃て。わしもお前らも、中国人に何の恨みもないんじゃんけんのお(p9)
・世の中にはいろんな人間がおるぞ。こっちがええときは、大将やの社長やのと言い寄よるが、悪うなると掌を返しよるやつもおる。日ごろはそうでもないかったのに、困ったことがあるとそっと助けてくれるやるもおる。人の心はわからんもんやが、わしはお前に、人間を見る目を持たせてやるけん。人の心がわかる人になれ。人の苦しみのわかる人間になれ(p78)
・人間は、物だけではしあわせにはなれん。と言うて、心だけでも生きちゃあいけん。共産主義も、本当のしあわせを民衆に与えることは出来んぞ(p108)
・丼(どんぶり)勘定で商売したらあかんでェ。それから自分以外の人間を信じたらあかん。熊さんはなァ、人を見る目があるくせに、人に騙される。承知で騙されてやってるんやろ。昔なら、それでもびくともせなんだろうやろけど、これからは、それではあかん(p132)
・百万人の繁栄のためには、千人を殺してもええ。私はこれが共産主義の指導者たちの本音じゃと解析しとります。この共産主義者が、なんぼ自由じゃ自由じゃ、平等じゃ平等じゃと、スローガンを並べたてても、私はそんな自由や平等を信じるわけにはいきませんなァ(p174)
・共産主義は、ひとりの貧困にしいたげられた男の病的な復讐心から生み出されたアヘンかもしれません。それこそ、我々人間から本当の自由を略奪する最大の麻薬になるかもしれん(p175)
・どうやったら、懐の深い、他人の心のわかる人間に育てあげること出来るだろうと考えた。「苦労させるんじゃ。辛いめに遭わせるんじゃ」・・けれども苦労と辛酸が、人間を歪めてしまう場合もある。しかし、それによって歪んでしまうか、反対に豊かな心根の持ち主となるかは、その人間の持って生まれた素質の問題だ。歪むなら歪め。伸びるなら伸びろ(p178)
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【私の評価】★★★☆☆(73点)
著者経歴
宮本 輝(みやもと てる)・・・1977年(昭和52年)『泥の河』で、第13回太宰治賞。1978年(昭和53年)『螢川』で第78回芥川賞を受賞。