「99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方」竹内 薫
2016/05/10公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
要約と感想レビュー
「人間とは時に大きな間違いをする」ということを再確認させてくれる一冊です。今、正しいとものとして扱われていても、それは「仮説」にすぎず、実際は間違いであったということもありえるのです。
この本で紹介してくれる昔の例では、精神病の治療として脳を切り取るロボトミー手術は、ノーベル賞を受賞しています。1960年代には、「赤ちゃんには、母乳よりもスキムミルクを与えたほうがいい」という医学仮説があったこともあります。また、地球が宇宙の中心である(天道説)と思っていたことさえあるのです。
今、考えると「本当ですか?」というかんじですが、当時はそれがまかり通ったのです。そういう視点では、京都議定書などの地球温暖化への取り組みなども、30年もしたら、温暖化対策の名のもとに、厳しい削減目標を設定した国から、金を引き出す仕組みとして評価されているかもしれません。
・地球温暖化が起こる理由も、実はよくわかっていません。(p29)
この本を読んで、世の中で当たり前のこととして信じられていることは怖いと思いました。ソクラテスの「無知の知」の現代版のようなものです。仮説にすぎないのに、それが正しいものとして、社会全体で動いているため、影響がどんどん大きくなってしまうこともある。現在正しいと思われていることが、とんでもない間違いであったと分かることも出てくるのでしょう。
例えば、スタップ細胞は存在するのか?重力と磁力は統一できるのか?現在のガン治療法は、20年後の未来にはどう評価されているのか?科学技術が発達した現在でも、分からないことだらけだ、ということを再確認する内容となっています。
財政法で禁じられている赤字国債が、田中角栄大蔵大臣が1965年に発行してから、1000兆円にまで増え、今も増え続けているという現実。これも、ちょっとなら法律違反をして、赤字国債を発行してもいいだろうという仮説が間違っていたということになるのかもしれません。
歴史はあくまでも仮説の集まりであり、真実ではありません。科学も同様に仮説の集まりであり、真実でないことも多いのです。何事も分からないからこそ、未知の世界は面白いのでしょう。
ただ、仕事としてやる場合には、面白いだけではだめでしょう。分からないからこそ失敗の可能性を恐れる慎重さが必要なのだと思いました。こうした常識を疑うきっかけを与えてくれる一冊でした。こうした歴史的な間違いを一覧にしてみるのも面白いかもしれません。人間の愚かさを認識させてくれる一冊として、★3つとしました。
竹内さん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・西洋では、科学の前身は哲学でした・・たとえば、ニュートンは自分のことを自然哲学者と考えていました(p142)
・いまの科学の現場では、生命の起源については本当になんにもわかっていないんですよ(p166)
・十三歳から十七歳までのアメリカの若者に・・ダーウィンの進化論は証拠によって支持された、検証済みの科学理論であると思っている人は37%(p162)
・マイナスイオンがからだにいいという「仮説」は、専門家のあいだでは白い仮説として認められていません(p241)
光文社
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【私の評価】★★★☆☆(77点)
目次
プロローグ 飛行機はなぜ飛ぶのか?実はよくわかっていない
第1章 世界は仮説でできている
第2章 自分の頭のなかの仮説に気づく
第3章 仮説は一八〇度くつがえる
第4章 仮説と真理は切ない関係
第5章 「大仮説」はありえる世界
第6章 仮説をはずして考える
第7章 相対的にものごとをみる
エピローグ すべては仮説にはじまり、仮説におわる
著者経歴
竹内 薫(たけうち かおる)・・・1960年生まれの猫好き科学作家。その裏の顔は、ミステリー作家の湯川薫。「花咲爺さん」の異名をとり、人々を幸福にするという噂がある。趣味は、猫と引っ越し。著書に『世界が変わる現代物理学』(ちくま新書)、『物質をめぐる冒険』(NHK出版)、『ホーキング 虚時間の宇宙』(講談社ブルーバックス)など多数。東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学(カナダ)大学院博士課程修了。
読んでいただきありがとうございました!
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