【書評】「外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」藤沢 数希
2012/10/12公開 更新

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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
損したら公的資金で救済される
この本を読んで、世の中の本質は、単純なのかもしれない。そう思いました。
宝くじの胴元が確実に儲けられるのと同様に、金融も儲かるのです。なぜなら、博打をして儲けたら自分のもの。損したら公的資金で救済されるからです。
著者は外資系投資銀行で年収5000万円のトレーダーでした。イメージとしては年5億円を稼いで、5000万円の給料をもらう。ただし、損をしたときはクビになります。
そうであれば、リスクを最大化してガッツリ儲ければいい。世界では数兆円のお金にレバレッジをきかせた金融ギャンブルが行われているのです。
儲けたときは莫大なボーナスを受け取り、損したときは最悪でクビになるだけのトレーダー。同様に儲けたときは莫大な報酬を受け取り、損しても、契約に基づき莫大な退職金まで持っていく経営者。(p229)
サブプライムローンはAKBのようなもの
著者の視点がおもしろいのも特徴です。ゴミくずのような住宅ローンを集めた債務担保証券は、普通の女の子を集めたAKB48のようなもの。
巨大企業は損失を出しても公的資金で救済されるという安心感があるから、ギャンブルをする。確かにそうなのかもしれません。
アメリカでは、貧乏人の住宅ローンを寄せ集めたMBSのクズをさらに束ねたCDOが、急にアメリカ国債並みのトリプルAの信用を得るという奇跡が起こっていた。日本では、並程度の容姿の若い女を大量に集めて結成されたアイドルグループAKB48が大ブレーク(p155)
日本の銀行はギャンブルしない
一方の日本の銀行は、市中からほとんどゼロの金利で預金を集めて、それで日本国債を買って、手堅く稼いでいました。もし、金利が上昇すれば、日本国債の価値は減りますので、日本の銀行は日本国債と一蓮托生なのです。
やや、どぎつい表現がありますが、そこもこの本を読みやすくしているように感じました。
金融についてちょっと学びたい人に、お勧めします。藤沢さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・ギャンブルは時に愚か者に課せられた税金といわれる・・こんなボロい儲けが出る商売を民間企業に渡すわけにはいかないのだ。そして、民間の手に渡ったボロい儲けが出る商売が「金融」(p76)
・ユーロに加盟するには、マーストリヒト条約により、国の債務残高をGDP比で60%以内に抑え、さらに財政赤字はGDP比で3%以内に抑える・・・ギリシャ政府が行ったことは、なんと「粉飾」であった。そしてそれを助けたのがゴールドマン・サックスである(p4)
・AIGでCDSをしこたま取引して世界を破滅の縁に追い込んだ部署の責任者だったジョセフ・カッサーノさんは、300億円ほどのボーナスをもらった後に会社を辞めて、悠々自適の暮らしをしているという(p18)
・株式調査部なんて証券会社にある必要はなく、本当に価値あるリサーチなら、・・・有料メルマガでもやればいいではないか。個人投資家になってもいい。(p221)
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【私の評価】★★★★★(92点)
目次
第1章 大きすぎてつぶせない
第2章 金が天から降ってきた
第3章 金融ほどすてきなビジネスはない
第4章 サル山の名前は外資系投資銀行
第5章 ヨーロッパとアメリカの失われる10年+
第6章 金融コングロマリットの終焉
著者経歴
藤沢数希(ふじさわ かずき)・・・欧米の研究機関にて、理論物理学の分野で博士号を取得。科学者として多数の学術論文を発表した。その後、外資系投資銀行に転身し、マーケットの定量分析、トレーディングなどに従事
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