「その数学が戦略を決める」イアン・エアーズ
2010/06/03公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★★☆(83点)
要約と感想レビュー
2007年と古い本ですが、今でいうビッグデータ解析を予言した一冊と感じました。つまりデータ解析結果を利用して、実際に成果を出す環境が整ってきたということなのでしょう。すべてのデータをデジタルで記録できれば、あとは解析するだけということです。
例えば、ネットでの広告やキーワードの世界では、AB実験してみてデータ分析することで常識となっています。つまり、広告を見た人のうち、どの程度の人が商品を買ってくれるのか、コンバージョンレートを見れば、一発でわかるのです。
・「期間限定サービス!」と書くのがいいのか、「初年度利息2.9パーセント!」と書くのがいいのか?キャピタル・ワンは見込み客を無作為に二つのグループに分けて両方試し、どっちの成功率が高いかを実地に調べるのだ(p71)
具体的な例としては、ワインの価格も、病気の治療方法も、融資判断も、保険の料率も健康食品の効果などもデータを集めて分析することで、人間よりもより正確な判断、予測ができる時代になってきました。コンピュータとソフトウエアの性能向上により、こうしたデータ分析を利用したほうが人間の経験や勘よりも効果を出せる分野が広がっているのです。
・名前がわかっただけで、ググれば住所も写真もその他無数の情報がその場でわかってしまう。そして顔面認識ソフトを使えば、名前さえ不用かもしれない。やがて気がつかれずに通行人を同定することも可能となるだろう(p239)
なんだか恐ろしいような、便利なのかわからない世界になってきたようです。時代は人工知能やビッグデータ分析です。その大切さがわかっただけでも、良い本だったと思います。イアンさん、よい本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・ワインの質=12.145+0.00117×冬の降雨+0.0614×育成期平均気温-0.00386×収穫期降雨(p10)
・毎年何千人もの集中治療室患者たちが、胸の中心静脈カテーテルの挿管後に感染症で死んでいることに気がついた・・系統的な手洗い・・で中心静脈カテーテルからの感染リスクが90%以上低下する(p118)
・レンタカー会社や保険会社は、クレジットカードの返済実績の低い人々にサービスを拒否している。データマイニングによれば、返済実績の低い人は事故も起こしやすい(p23)
・私は本書の題名を決めるときに無作為抽出テストを使った。(p202)
・低脂肪食は女性の健康を改善しなかった(p254)
・七年がかりの無作為抽出テストでは、カルシウムサプリメントを摂取しても腰骨骨折の減少にはまったく影響しない(が腎臓結石のリスクは高まる)ことがわかった。(p256)
・37歳の女性はダウン症の子供を産む確率が250人に一人・・・250件に一件ほど、羊水穿刺(針を刺して羊水を採取する検査)を受けた女性は流産してしまう(p284)
【私の評価】★★★★☆(83点)
目次
序章 絶対計算者たちの台頭
第1章 あなたに代わって考えてくれるのは?
第2章 コイン投げで独自データを作ろう
第3章 確率に頼る政府
第4章 医師は「根拠に基づく医療」にどう対応すべきか
第5章 専門家vs.絶対計算
第6章 なぜいま絶対計算の波が起こっているのか?
第7章 それってこわくない?
第8章 直感と専門性の未来
補章 革命は続く
著者経歴
イアン・エアーズ(Ian Ayres)・・・エール大学教授。データ分析で有名。データ収集、分析により現実の政策、裁判に影響を与えている。
読んでいただきありがとうございました!
いつも応援ありがとうございます。
人気ブログランキング
に投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 44,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
お気に入りに追加|本のソムリエ公式サイト|一日一冊:今日の名言
コメントする