「独立外交官 国際政治の闇を知りつくした男の挑戦」カーン・ロス
2010/02/21公開 更新本のソムリエ [PR]
Tweet
【私の評価】★★★☆☆(79点)
■イギリス外交官として、国連安全保障理事会で
イラクへの攻撃に関わりながら、
その外交の不合理さに外交官を辞し、
外交コンサルタントとして独立した著者の一冊です。
「独立外交官(Independent Diplomat)」というのが
かっこいいですね。
■本場のイギリス外交官だけあって、
リアルな外交の世界を解説してくれます。
外交官は、ある程度独自に判断、行動し、
間違っても責任を問われない
というのは、本当なようです。
どうりで太平洋戦争の宣戦布告を
遅れさせた外務省の役人も、
責任問題にならないわけです。
・歴史的な慣習の積み重ねで、
どういうわけか、外交官は特別なエリートで、
外部からの検証や影響をほとんど受けず、
説明責任も求められずに、自由に政策決定して
いいのだということが受け入れられている(p33)
■そして、外交の判断となるのは国益。
そして、その国益は、政治で左右されますが、
基本的には「お金」が基準となっているようです。
いくら現地が悲惨な状態であっても、
人権問題があっても、虐殺があっても、
無視される場合があるのです。
著者は、こうした論理に
耐えられなくなったというのが、
独立外交官となった理由だそうです。
・「中間派」の支持獲得に効果を発揮するのは、
決議の内容の検討ではなく、
むしろ政治的な力に物を言わせて、
非常任理事国に「われわれ」と同じ見解をもたせるよう
働きかけることだった。・・・
政治的圧力は通常、外相同士の
非公式の電話で伝えられ、スロベニアの場合は、
米大統領の公式訪問によって伝えられた(p223)
■テレビでしか伝わらない外交という世界の
一端を伝えてくれる一冊でした。
国家が国益を考えて行動するとき、
時として弱者を捨て去るという現実を知って、
少し怖い気持ちにもなりました。
社会人として読んでおくべき一冊でしょう。
本の評価としては★3つとしました。
━━━━━━━━━━━
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・外交官としての最初の数年は、僕もこうしたやり方で
世界について語るのが好きだった。ドイツの国益は何か、
ロシアはどう動くのか、いかにしてフランスを出しぬくか
(イギリスにとって永遠の関心事だ)(p30)
・僕は上司や閣僚に質問をぶつけたり
議論を交わしたりするのが好きだったが、
キャリアを上り詰めるには、
こうしたふるまいを自制する必要があった(p29)
・ケシ栽培地帯(アフガニスタンのほぼ全域といっていい)
の農民に金を払って、
その年の収穫を土に埋めさせることが
計画された・・・ヘロインの収穫は・・・
ほぼ10倍増になった(p62)
・国連安保理が退屈なものだとは思いもしなかったが、
実際そうなのだ。
座って、メモを取り、またメモを取る・・・
その日の議題は、いつもと同じ、未解決の紛争と
人間の苦しみのリストだ。ブルンジ、イラク・・(p190)
英治出版
売り上げランキング: 191879
国家ではなく人類のために・・・
新たな外交へ
外交官の独立請負人
外交交渉の携わる人たちの行動原理とは?
【私の評価】★★★☆☆(79点)
■著者経歴・・・カーン・ロス
15年以上イギリス外務省に勤務。
1998年から4年半国連安保理イギリス代表部。
2004年外務省を辞め、外交コサンルティングの非営利組織
インディペンデント・ディプロマットを設立。
支援先は、コソボ、ソマリランド、西サハラのポリサリオ運動。
読んでいただきありがとうございました!
いつも応援ありがとうございます。
人気ブログランキング
に投票する
メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」 44,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。 >>バックナンバー |
配信には『まぐまぐ』を使用しております。 |
お気に入りに追加|本のソムリエ公式サイト|一日一冊:今日の名言
コメントする