「スモール イズ ビューティフル―人間中心の経済学」E.F.シューマッハ
2009/07/01公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
要約と感想レビュー
1970年代にエネルギー危機を指摘したイギリス経済学者の一冊です。あまりにも現代を適切に予測しており、こういうものを学問というのだな、と納得しました。
シューマッハが指摘するのは、石炭、石油、ウランはいずれ枯渇するという当たり前の事実です。枯渇すればエネルギーの価格が上昇し、そのエネルギーを買えるのはお金を持った国、または軍事力を持った国ということになります。
資源は有限であるがゆえに、だんだんと価格が高くなり、豊かな国しか使えないことになってしまうのです。
・富んだ国が経済成長を続けるから燃料への需要は厖大にふくらみ、その結果、貧しい国が冨と教育と工業技術と資本蓄積の力を手に入れて、化石燃料に代わる燃料を大規模に使えるようになるよりはるか以前に、世界の安く使いやすい燃料は高価で稀少なものになってしまうだろう(p36)
この本では、木材や水力といった再生可能エネルギーを推奨するとともに、大量生産大量消費から節約と節制の社会を提唱しています。昨今のバイオマスを中心とした再生可能エネルギーの開発の動き、省エネルギーの推進などを見ると、やっとこの本が予測した時代が近づいてきたのでしょう。
有限なものはいずれ高くなりますので、安いうちから使うのを節約して、高くなってからそれを大切に使えばよいのです。そして、有限な資源があるうちに、再生可能な水力発電を使う努力をしていくべきなのでしょう。
・石炭、石油のような再生不能の燃料と、薪や水力のような再生可能な燃料との間には、本質的な違いがあるのであって、この違いはけっして無視できない。再生不能財は、やむをえない場合に限って使うべきもので、その場合でも、それを保全するために最善の注意と細心の配慮を払わなければならない。(p78)
再度、じっくり読みたくなる一冊でした。古い本ですので、今の状況とシューマッハの予測とを比較しながら読むとおもしろいと思います。
本の評価としては、★3つとしました。
この本で私が共感した名言
・近い将来深刻なエネルギー不足が起こりうることを指摘した人たちの議論は、反論されるのではなく、嘲笑されるか無視された(p164)
・過去と現在の経験は例外なく、基本的な資源を供給するのは自然ではなく人間であること、経済開発の決定要素は人間の精神であるということを教えている(p100)
・貧乏人や不満分子には、性急に金持ちに戦いを挑んだりすると、将来自分たちにも金の卵を産んでくれるはずのガチョウを、かえって殺すことになる、と教えればよい。一方、金持ちには、利口になってときどき貧乏人を助けること、そうすればますます金持ちになる、と教えればよい。(p31)
▼引用は、この本からです。
講談社
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【私の評価】★★★☆☆(76点)
著者経歴
E.F.シューマッハ・・・1911年ドイツ生まれの経済学者。戦後、英国に帰化。英国石炭公社顧問として早くから石油危機を予言。1977年没。
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