「昭和のロケット屋さん」林紀幸,垣見恒男 他
2009/05/30公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
■また北朝鮮がロケット発射の準備をしているようですが、
この本では日本におけるロケット開発のウラ話を
聞くことができます。
ロケット開発は「軍事力」と密接に関係しており、
防衛省との関係や、アメリカからの圧力など
現場の人の話はやはり面白いですね。
■ロケットの歴史は、プロジェクト失敗の歴史でもあるわけで、
この本でプロジェクト・マネジメントを
学ぶことができます。
まずは、各部門のコミュニケーションです。
部門内だけでなく、部門外との
情報交換のやり方を見るだけで、
プロジェクトの成否がわかるといいます。
・あれを始めた時にですね、どこで誰がやっているのか、
現場のみんなに知らされなかったんですね。・・・で、
「そんなやり方してたら、ロケットはきっと失敗しますよ」
って私が言った。(林)(p186)
■そして、次の技術の伝承です。
やはりマニュアルやOJTで伝えていくことになるのですが、
最も怖いのは、「慣れ」だというのです。
「慣れ」とは「過信」なのかもしれませんが、
そこから事故が起ってくるというのです。
・最初のうちは不慣れですから手順書に近い状態でやるわけです。
ですから、これを見ながらやっているうちは大丈夫なんです・・
慣れてきてドライバーを事前に用意しなくなる。・・・
そういうところが忘れられると、
必ず事故を起こす。(p194)
■よくある「失敗学」の本よりも
実のある一冊でした。
プロジェクトマネジメント、失敗学に興味のある方には、
最適の一冊だと思います。
本の評価としては、★3つとしました。
─────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・いいこと、悪いこと、
みんな人間がやっているんですよ・・・
ですから、どんな人間がやっているか、
どんな人間関係の中で作っているかで、
このロケットは成功するとか失敗するとかが
なんとなくわかるんです。(林)(p206)
・失敗の原因を追究していけば、
次にはちゃんとできるんですけどね。・・・
日本はどうしてもそういう点がダメで
「原因の追究」じゃなしに「責任を追及」を
する人が多いもんですからね。(垣見)(p213)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★☆☆(79点)
■著者経歴・・・林 紀幸
1940年生まれ。
1958年に東京大学生産技術研究所の糸川研究室に就職。
技官として「ロケット班長」などを務める。
2000年退職。430機のロケットを打ち上げる。
■著者経歴・・・垣見 恒男
1928年生まれ。
陸軍士官学校に入校するも、終戦で退学。
東京大学第一工学部へ進学。
富士精密に入社し、ロケット開発に参加。
以後、ロケット設計を行う。
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毎回本当に楽しみにしながら拝見させていただいております。
今回紹介をされた書籍について、著者の林さん、垣見さんともに実際にお会いしてお話を伺ったことがあります。
お二人とも本当に明るく、元気な方でした。
特に林さんについては、短い期間ではありますが、非常に親しく接していただいたことがあり、なにより、人に元気を与えることでできるすばらしい方でした。
私自身、少々仕事や人間関係ですこし悩みがあった時期だったのですが、「あんたはもっと自身を持っていいんだ。あなたが自分で言うような人間だったら、私があんたにこんなに会うかい?会わないよ。あんたはもっと自分に自身を持っていいんだ。」と励ましていただきました。
あの励ましがなかったら私はあそこでどうなっていたのだろう
と今でも思います。
成功した話もたくさん、失敗した話もたくさん(どちらかといえば失敗した話が多い)ですが、いつも本当に楽しそうに、懐かしそうに話をされるのです。
そこに林さんの、人間というものに対する理解の深さ、やさしさの深さといったものを感じました。本当に大きな方です。
林さんは現在もロケット業界で活躍されていますが、もうひとつのふるさと、三重県の伊勢市では、明治の重要文化財『賓日館(ひんじつかん)』という建物の保護活動をされており、npo法人の会長をされております。
賓日館の会
こちらの方面に行かれることがありましたら、ぜひお立ち寄りください。
ロケット関係で外出されていなければ、入り口脇の事務所に林さんがいらっしゃり、お願いすると館内をくまなく、この文化財についてありとあらゆる魅力を紹介してくださります。(うまくいくと、秘蔵のロケット資料を見せていただけることもあります。)