「夢の百姓「正しい野菜づくり」で大儲けした男」横森正樹
2007/11/05公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(96点)
要約と感想レビュー
横森さんは、農家に生まれ、若くしてアメリカで大規模農業の研修を受け、その後しばらく電気部品を作っていた変わり者です。ちょうどオイルショックで仕事が減ったのを機会に、やりたかった農業を始めました。
昔ながらの、牛糞、稲わら、落ち葉の堆肥を使い、木酢液、蠣殻(かきがら)、木炭などの資材を使って「土づくり」に力を入れています。手間を嫌って、化学肥料を多く使うと、栄養のバランスが崩れ、硬い土になってしまうそうです。
・「栄養が吸収できる状態」の土とはどんなものかというと、実は、土壌微生物がたくさん繁殖し、活発に活動できるような状態のことなのである。(p28)
農業のコツは、こうした「土づくり」に加え、商売としての努力が必要です。横森さんは、仕事の合間に卸売市場に足を運び、流通と販売店の情報を集め、市場が求める安く安全な野菜を作る努力をしています。
つまり農業も企業経営と同じように、コストを削減し、無駄を省き、価格が高くても買ってもらう工夫をする必要があるのです。当たり前の話ですが、そうした当たり前のことがすごいのでしょう。
・農業経営に最も大事なポイントは次の四つではないかと思う。
1 土づくりに投資する。
2 販売の努力をする。
3 企業的感覚を養う。
4 コスト削減の限界まで取り組む。(p173)
こうした努力で、スーパーとの直接取引、ブランド野菜の出荷を始めますが、やはり壁となるのが「農協」です。すでに「農協」は農家のためにというよりは、現状の組織を維持するために活動しているのが、実体というのです。
つまり農協とは農家のためと言いながら、実態的には大多数を占める中小農家を組織化することで食べている官僚組織であるということです。本気で農業を振興するよりも、農家から金を集めて金融業をしているほうが稼げるのが実態なのです。
・スーパーとの直接取引も始まった。・・・農協の職員に「末端では差別化販売を求めている。農協も品質によって価格を別にするなど、臨機応変な対応をしていくべきではないか」と提案した。ところが、農協の返事はたったひと言-「組織を乱すことになるのでやるつもりはない」だった。(p127)
「農協」も「農水省」も期待できないのが実態です。そうしたなかで、横森さんは、「農協」にかわる農家を支援する組織として、「信州がんこ村」という会社を作りました。
役所と農協には、これ以上、民間の努力を邪魔しないでほしいとと感じました。横森さんの農業への思いに圧倒されました。★5つとします。
この本で私が共感した名言
・大根が一本100円だとすると、農家の手取りは30円しかない。残りの70円は、流通業者の利益、そして物流経費や梱包に必要な資材費用に消えてしまっている。(p39)
・農協は、農家を完全に見捨てている。・・・多くの農協は、農家の指導や農産物の販売といった「営農」には全く力を入れていない。やっていることは「共済」や「金融」。そして最近では、「葬祭事業」。(p190)
・国の農業政策もひどい。こんな例がある。私の近くの川上村で、国の補助金で個々の堆肥場がつくられた。このような施設は常に利用されているわけではないので、空いている冬に農業機械が置かれた。すると会計検査院の監査で、本来の目的以外に使われているという理由で、問題になったのである。この話は、いかに税金の有効利用が妨げられているかを示すよい例である。(p239)
▼引用は、この本からです。
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【私の評価】★★★★★(96点)
著者経歴
横森 正樹・・・1940年生まれ。1963年から1965年までアメリカで農業研修。1967年に結婚。電気部品を製造する。農業への思いやみがたく1975年に専業農家となる。現在、「土づくり」を基本とした農業を展開し、研修生の受け入れなど農家の育成に尽力。
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