「梅干と日本刀」樋口 清之
2005/08/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(90点)
●日本の良さ、日本人の特徴、
日本人の気質を、考古学の権威(故人)
である著者が、教えてくれる一冊です。
・村八分という文字の示すとおり、この断絶は、
"八分"であって・・・八分は断絶するが、
二分の交際は残すという意味なのだ。
その二分は "葬式"と"火事"である。
つまり絶縁はしても、悲しい出来事だけは、
分かち合おうというのが村八分なのだ。(p219)
●これ一冊で、三冊分をまとめたものですので、
読み応えがあります。
私で四日間かかりました。
・日本の芸道から学ぶべきは、技術ではなく、
技術を通して、その裏にある"精神"、
自然から学べる静かな心や精神状態、
人間との関係をスムーズに深くしていく
心なのである。(p207)
●39年間、日本人として生きてきた私でさえ、
「へー、そうなんだ」と思うところが、
いくつもあります。
本来なら、このような本を学校の教科書と
して使うべきものなのかもしれません。
・五節句の飲み物や食べ物は、すべて薬品である。・・・
私たちの祖先は、薬品を食品化することで、
まず日常の食餌療法をやり、
さらに労働スケジュールに合わせて、
その時期にいちばん必要な薬物を年中行事化することで、
魔除けや信仰として摂取し、健康体を維持できるように、
実に巧妙といっていい、
健康管理を行っていたのである(p130)
●日本の心を学び直す最適の一冊ということで、
文句なく★5つです。
・私たちの祖先の知恵というものは、
一見、不合理に見えながら、実は
合理的であるという「不合理の合理」に満ちている。
ただ、私たちにはその知恵が不合理という壁にさえぎられて、
その中の合理性が見えない場合が多いのである。(p61)
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・今日では、農機具、農薬の発達や食料輸入で、
一挙に一億になった。
もし、西洋文明の刺激と食料輸入がないと、
おそらく今日の日本で、もっとも
適量な人口は、五、六千万人であろう(p75)
・日本へ来ると、原産地のものより必ず大きくなっている。・・・
白菜は、元は山東白菜といって、
中国の山東省の産で、何本かを束にして店先に
並べる程度の大きさのものである。
中国人が来て、日本の白菜を見て、
"化けものになっている"と驚いたという話があるが、
実際、日本人は、
何でも大きくしてしまうのが本当に好きだ(p176)
・江戸の市民は朝起きると、まず自分の家の前を掃く。
別にそういう法律的な義務があったのではない。
隣り付き合いとして、その町の住人として、
自分の町を大切にしているという、連帯感を確認する
自発的な行為である。(p263)
・五人組の連坐制の中で、罪科は分散されるために重くはないが、
とくに厳しい連坐制を実行されたものに幼児犯罪がある。
子どもの犯罪である・・・子どもはしたがって
一組の夫婦の子どもというより、町の子ども
という意識が強かった。いたずらがすぎると、
他人の家の子どもでも、厳しく叱る。(p335)
・レンガ造りの家屋は、できないから、やらなかったのではなく、
長い歴史の過程で、適性のない栽培品種を捨てたように、
捨てたものなのである・・・日本人は・・・
木材を建築材として選択したのである(p408)
・日本人はよく、「よそに出しても恥ずかしくない子に育てる」
という言い方をする。
西欧人は「よそに出しても自立して生きていける子に育てる」
という言い方をする・・・
前者の場合は、他の人々に認められる「人格」が
重視されているし、
後者の場合は、他の人々に認められる「能力」が
重視されているといっていいだろう。
祥伝社
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素晴らしい先人の知恵
偏りはあるけれど...
学校の教材にぜひ!
【私の評価】★★★★★(90点)
●著者経歴・・・樋口 清之
1909年生まれ。1997年逝去。登呂遺跡発掘などを手がけた考古学者。
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