「希望を捨てる勇気」池田 信夫

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1335

【私の評価】★★★★★(96点)


■「地獄への道は善意で舗装されている」と言われますが、
 その人を助けようと思っていたのに、
 結果は、逆にその人が不幸になってしまったという事例を
 ズバッと指摘する一冊です。


■まず、指摘するのは姉歯元建築士から大問題になった
 耐震強度計算の擬装です。

 姉歯の設計したマンションを取り壊したり、
 耐震強度をちゃんと計算しようとしましたが、
 チェック強化により建物着工ができず業界が大不況となりました。


・姉歯元建築士の設計した建物は「震度5で倒壊する」とされて
 取り壊されたが、同じ論法でいけば、1981年の建築基準法
 改正以前の建物は、みんな取り壊されなければならない。
 しかし役所もメディアも、それは問題にしない。震度5で
 コンクリートの建物が倒壊した事件はほとんどないからだ。(p32)


■そして、グレーゾーン金利にいたっては、
 それまで問題ないとされていた金利が違法となり、
 過去の金利を返済しなくてはならなくなりました。

 そのため、消費者金融業界は崩壊。

 消費者金融を利用していた人は、
 より高利の闇金融を利用するしかない
 状況になっているのです。


・グレーゾーン金利が、裁判所によって事後的に違法とされ、
 過去に遡及して訴訟が続発していることは、法治国家としての
 日本の信頼を傷つける。シティグループは日本の消費者金融から
 撤退するとき、記者会見で
 「ルールのない国でビジネスはできない」とのべた(p28)


■派遣労働についても、禁止や規制強化がなされれば、
 派遣労働者が幸せになるわけではなく、
 派遣労働者の仕事がなくなるだけに終わる可能性があるのです。


・不況の最中に46万人といわれる製造業の派遣労働を禁止したら、
 規制強化を口実にしてクビを切るか、契約社員やアルバイトに
 切り替えるだろう。(p47)


■これ以外にも、不動産の入居者の権利が強すぎる件、
 医者の手術失敗が刑事罰に問われる件、
 地方を無理に活性化させようとしている件など
 よく考えるとそうかもしれないという
 目からウロコがたくさんでした。


・問題は産婦人科医の不足ではなく、手術の失敗に刑事罰を科すなど、
 人命のためには他のすべてを犠牲にする司法のバイアスである。
 それは結果的には、多くの人命を失う結果をもたらしている。(p29)


■書籍のタイトルが今一ですが、
 内容は最高に充実しています。

 問題というものは、表面的な対応だけでは
 根本的な解決にならないこともわかりました。

 池田さん、よい本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・硬直的な人事制度のおかげで、日本のサラリーマンのほとんどは、
 年をとると何もすることがなくなる。・・・特に管理職になると
 地方勤務が多くなり、単身赴任という世界に類を見ない生活形態が
 増える(p55)


・奴隷は彼らの鎖の中ですべてを失ってしまう。
 そこから逃れたいという欲望までも。
 (ジャン・ジャック・ルソー)(p59)


・需要の変動に対応して雇用調整を行うメカニズムが、
 解雇(50年代)、配置転換(60年代)、出向(70年代)、
 非正社員(90年代)と変化してきたのである。(p67)


・店子の権利が非常に強く・・・立ち退かせにくい家族を
 入居させず、独身向けワンルーム・マンションを建てる。
 その結果、日本の賃貸住宅の質は低く、家賃は高い。(p26)


・地方はもっと(経済の自然な流れにそって)衰退しても
 おかしくない。・・・これからは都市国家の時代だ。(p136)


・比較優位・・・「アインシュタインが秘書よりタイピングが
 うまくても、彼がタイプしてはいけない」のだ(p185)


・「世界一速いコンピュータ」・・・時代錯誤の戦艦大和のような
 「大艦巨砲コンピュータ」に多くの優秀なエンジニアを
 投入することは、IT産業をミスリーディングし、
 税金よりもはるかに重大な人材の浪費になるだろう(p194)


・新聞社には気の毒だが、この流れはもう変わらないだろう。
 ・・・デジタル情報の限界費用(複製費用)はゼロなので、
 その価格がゼロになることは避けられない。(p207)


希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1335
おすすめ度の平均: 4.5
5 若者よ、これを読んで選挙に行こう
5 斜陽=成熟社会という幻想
3 絶望後の"希望"が疑問も、やはりここからしか始まらないようだ・・・
4 絶望から、はじめよう。
4 日本の構造的問題を的確に分析

【私の評価】★★★★★(96点)


■著者紹介・・・池田 信夫

 1953年生まれ。
 大学卒業後、NHK入社。
 1993年退職後、国際大学GLOCOM教授。
 経済産業研究所等を経て、
 現在は上武大学大学院教授。


■関連書評■

a. 「国破れて霞が関あり」若林 亜紀
【私の評価】★★★★☆

b. 「官僚とメディア」魚住 昭
【私の評価】★★★☆☆


c. 「日本の真実」大前 研一
【私の評価】★★★★☆


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