「希望を捨てる勇気」池田 信夫

| コメント(0) | このエントリーをはてなブックマークに追加

希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学

【私の評価】★★★★★(96点)


■「地獄への道は善意で舗装されている」と言われますが、

 その人を助けようと思っていたのに、
 結果は、逆にその人が不幸になってしまったという事例を
 ズバッと指摘する一冊です。


■まず指摘するのは、

 姉歯元建築士から大問題になった
 耐震強度計算の擬装です。


 姉歯の設計したマンションを取り壊したり、
 耐震強度をちゃんと計算しようとしましたが、
 チェック強化により建物着工ができず

 業界が大不況となりました。


・姉歯元建築士の設計した建物は「震度5で倒壊する」とされて
 取り壊されたが、同じ論法でいけば、1981年の建築基準法
 改正以前の建物は、みんな取り壊されなければならない。
 しかし役所もメディアも、それは問題にしない。震度5で
 コンクリートの建物が倒壊した事件はほとんどないからだ。(p32)


■そして、グレーゾーン金利にいたっては、
 それまで問題ないとされていた金利が違法となり、
 過去の金利を返済しなくてはならなくなりました。


 そのため、消費者金融業界は崩壊。


 消費者金融を利用していた人は、
 より高利の闇金融を利用するしかない
 状況になっているのです。


・グレーゾーン金利が、裁判所によって事後的に違法とされ、
 過去に遡及して訴訟が続発していることは、法治国家としての
 日本の信頼を傷つける。シティグループは日本の消費者金融から
 撤退するとき、記者会見で
 「ルールのない国でビジネスはできない」とのべた(p28)


■派遣労働についても、

 禁止や規制強化がなされれば、
 派遣労働者が幸せになるわけではなく、
 派遣労働者の仕事がなくなるだけに
 終わる可能性があるのです。


・不況の最中に46万人といわれる製造業の派遣労働を禁止したら、
 規制強化を口実にしてクビを切るか、契約社員やアルバイトに
 切り替えるだろう。(p47)


■これ以外にも、不動産の入居者の権利が強すぎる件、

 医者の手術失敗が刑事罰に問われる件、

 地方を無理に活性化させようとしている件など

 よく考えるとそうかもしれないという
 目からウロコがたくさんでした。


・問題は産婦人科医の不足ではなく、手術の失敗に刑事罰を科すなど、
 人命のためには他のすべてを犠牲にする司法のバイアスである。
 それは結果的には、多くの人命を失う結果をもたらしている。(p29)


■書籍のタイトルが今一ですが、
 内容は最高に充実しています。


 問題というものは、表面的な対応だけでは
 根本的な解決にならないこともわかりました。


 池田さん、よい本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・硬直的な人事制度のおかげで、日本のサラリーマンのほとんどは、
 年をとると何もすることがなくなる。・・・特に管理職になると
 地方勤務が多くなり、単身赴任という世界に類を見ない生活形態が
 増える(p55)


・奴隷は彼らの鎖の中ですべてを失ってしまう。
 そこから逃れたいという欲望までも。
 (ジャン・ジャック・ルソー)(p59)


・需要の変動に対応して雇用調整を行うメカニズムが、
 解雇(50年代)、配置転換(60年代)、出向(70年代)、
 非正社員(90年代)と変化してきたのである。(p67)


・店子の権利が非常に強く・・・立ち退かせにくい家族を
 入居させず、独身向けワンルーム・マンションを建てる。
 その結果、日本の賃貸住宅の質は低く、家賃は高い。(p26)


・地方はもっと(経済の自然な流れにそって)衰退しても
 おかしくない。・・・これからは都市国家の時代だ。(p136)


・比較優位・・・「アインシュタインが秘書よりタイピングが
 うまくても、彼がタイプしてはいけない」のだ(p185)


・「世界一速いコンピュータ」・・・時代錯誤の戦艦大和のような
 「大艦巨砲コンピュータ」に多くの優秀なエンジニアを
 投入することは、IT産業をミスリーディングし、
 税金よりもはるかに重大な人材の浪費になるだろう(p194)


・新聞社には気の毒だが、この流れはもう変わらないだろう。
 ・・・デジタル情報の限界費用(複製費用)はゼロなので、
 その価格がゼロになることは避けられない。(p207)


希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学
池田 信夫
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1335
おすすめ度の平均: 4.5
5 若者よ、これを読んで選挙に行こう
5 斜陽=成熟社会という幻想
3 絶望後の"希望"が疑問も、やはりここからしか始まらないようだ・・・
4 絶望から、はじめよう。
4 日本の構造的問題を的確に分析

【私の評価】★★★★★(96点)

■著者紹介・・・池田 信夫

 1953年生まれ。
 大学卒業後、NHK入社。
 1993年退職後、国際大学GLOCOM教授。
 経済産業研究所等を経て、
 現在は上武大学大学院教授。


楽天ポイントを集めている方はこちら



読んでいただきありがとうございました!

いつも応援ありがとうございます
人気ブログランキング
に投票する

人気ブログランキングへblogrankings.png


メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」
44,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。
もちろん登録は無料!!
        配信には『まぐまぐ』を使用しております。



お気に入りに追加
本のソムリエ公式サイト一日一冊:今日の名言



この続きは無料メールマガジン 「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』:1ヶ月30冊を超える情報をe-Mailで」でお読みいただけます。

無料メルマガ購読 スポンサードリンク

コメントする

QR_Code.gif
左記QRコードまたはこちらから、空メールを送信してください。
※空メールに返信がない場合、ドメインbookmag2.comを指定受信リストに設定してください。


カテゴリー評価別

>月別(2002年7月~)

最近のコメント

  • おお: 最近、映画「ビリギャル」を再び見ました。 誇張の部分があるかもしれませんが、 私は素直に坪田先生とさやかちゃんに共感しました。 ど 続きを読む
  • HA: 会社組織で仕事を上手く進めていく指南書。 わかりやすく、自分のためになる本であった。 また、他の人にも勧めたい。 続きを読む
  • ryo: 名言セラピーは、全部読みました。 とても好きな本です。 いつも私の知らない本の書評で、 読書の指標になってますが、 こうして読んだ 続きを読む
  • 本のソムリエ: 中国製を辞めて、PRC(People's Republic of China)とは、頭いいですね。 国際関係で誠意を期待してはいけ 続きを読む
  • haru: こんにちは。 中国関連本といえば、こちらもお薦めします。 『メイド・イン・PRCの恐怖』郡司和夫著。桜の花出版。 PRCって、なん 続きを読む
  • KH: Kindle読み放題が始まってから、先日ソムリエ様がまとめてご紹介下さった本を順番に読んでおります。 どれもいい本でしかも読み放題 続きを読む
  • sano: サラとソロモンを読んで、今まで以上に幸せな状態自分の心地良い状態とは一体どういったことなのだろう、何だろう?とさらに考えるようにな 続きを読む