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【書評】「真説「陽明学」入門: 黄金の国の人間学」 林田 明大

2026/09/04公開 更新
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「真説「陽明学」入門: 黄金の国の人間学」 林田 明大


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー


「心」を鍛える陽明学

陽明学に学んだ人物として、佐藤一斎、山田方谷、横井小楠、大塩平八郎、佐久間象山、吉田松陰など、日本史に登場する偉人が多数紹介されています。では、彼らに影響を与えた陽明学とは、いったいどのような思想なのでしょうか。


この本を読んでわかるのは、陽明学とは現実社会の中で「心」を鍛える学問だということです。陽明学は「心学」とも呼ばれ、「不動心」を養うことを目的としています。


結果だけを求めるのではなく、努力するプロセスに価値がある。努力することで心の力が育ち、それが「不動心」につながっていくという考え方です。


王陽明の有名な言葉に、「山中の賊を破るは易く、心中の賊を破るは難し」があります。戦うべき相手は、自分の心の中にある私欲や迷いなのです。


朱子の学問は、結局のところ、心を無視し、義を外から借りてくるだけのことにすぎないのです(「伝習録」上巻)(p170)

知っているだけでは意味がない「知行合一」

陽明学の代表的な考え方が「知行合一」です。


当時の朱子学は、まず知識を身につけ、その後に実践するという「先知後行」という考え方でした。それに対して王陽明は、知ることと行うことは切り離せないと考えました。


例えば、本を読んで「これは大切だ」と思っても、実際にやらなければ何も変わりません。私自身、毎日本を読んで書評を書いているのは、実践につなげるためです。


また、知識として知っていることと、体験を通じて知っていることとの間には、大きな差があります。だからこそ、本を読む以上に、一冊の本から一つでも実践することが大切なのです。


陽明の「知行合一」説は・・さまざまな解釈がある。一般的にいえば、朱子学の「先知後行」(認識は前、実践は後)説に対する反論として強調されたものである(p181)

自分の中の「良知」に従う

もう一つ、陽明学の重要なキーワードが「良知」です。著者によれば、「良知」とは、人間が生まれながらに持っている、善悪を判断する心です。


そして「良知を致す」とは、自分に嘘をつかず、自分の中にある良心に従って生きることだという。知識を増やせば立派な人間になるとは限りません。実際、著者は、教養は豊かでも人格的には問題のある儒学者が少なくなかったと指摘しています。


大切なのは、知識を得ること以上に、自分の心の歪みや我欲を減らしていくこと。自分の中にある「本当はどうするべきなのか」という声に耳を傾けることなのです。


陽明学の核心は、「心即理」「知行合一」「致良知」の三つです。つまり、「答えは自分の心の中にある」「知ったことは実践する」「自分の良心に従って生きる」だと理解しました。


「良知」とは、是非善悪を知る能力のことであり、「仁・義・礼・智」の四つの徳のことである(p197)

陽明学とキリスト教

興味深かったのは、著者が陽明学とキリスト教との共通点を指摘しているところです。


陽明学では、権威に盲従するのではなく、自分の「良知」に従うことを求めています。キリスト教も、教会や聖書といった外部の権威だけに従うのではなく、内なる心を重視する「自律」の思想としているのです。


著者は陽明学を、権威に媚びない「主体性確立のための人間学」と表現しています。「上司が言ったから」「みんながやっているから」と、自分で考えることをやめてしまえば楽でしょう。しかし、本当に必要なのは、自分の頭で考え、それを行動に移すことなのです。


今回読んで、陽明学については、まだまだ語れるレベルではないこともわかりました。もう少し陽明学について調べてみたいと思います。


林田さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・知行合一について・・・人に一念が動いたとき、それはすなわち行ったことであることを、よく知ってほしいからなのです(「伝習録」下巻)・・・情が動くのも「行」に含まれる、とするのが陽明学である(p193)


・陽明にとって、心の本質(良知)は・・善でありながら善でもなく悪でもない(p215)


・権威に媚びず、権威に盲従せず、主体性を確立することが、そのまま自由ということである。陽明学とは主体性確立のための人間学なのである(p157)


▼引用は、この本からです
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林田 明大 (著)、三五館


【私の評価】★★★★☆(83点)


目次


第1部 王陽明の生涯
第2部 陽明学の思想
第3部 日本陽明学派の系譜


著者経歴


林田明大(はやしだ あきお)・・・1952年長崎県島原市生まれ。独自に進めてきたゲーテ、シュタイナー、禅の研究を通して、シュタイナーと王陽明の思想に共通点を見いだす。以来、両者の比較と融合を繰り返しながら、1994年に『真説「陽明学」入門』(第一版)を上梓、それまで「帝王学」とされてきた陽明学を、現代人のためのテキストとした


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