【書評】「バルセロナで豆腐屋になった 定年後の「一身二生」奮闘記」清水 建宇
2025/11/25公開 更新
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【私の評価】★★★★★(96点)
要約と感想レビュー
定年後は豆腐アドベンチャー
著者は朝日新聞記者時代に、「世界名画の旅」取材班となり、1年半15ヵ国を訪れました。訪れた都市の中で、住んでみたいと思えたのが、バルセロナだったのです。
実はバルセロナは心の中では、スペインではありません。カタルーニャ人という強い民族意識を持っているのです。奥さんと一緒にバルセロナを旅して、豆腐屋について了解を得ることができました。
子どもたちには「父さんと母さんは定年退職したらバルセロナに移り住んで豆腐屋になる。だから学校を卒業したら家を出て自活してほしい」と告げたのです。長女は「豆腐アドベンチャー」と命名してくれ、協力してくれたという。
年金という制度がある。豆腐屋が失敗しても、日本に戻ってつつましく暮らすことはできる(p7)
バルセロナで日本食が売れる
著者は近くの豆腐やで修行を始めます。また同時に、豆腐屋に必要な設備を準備しはじめました。日本では1960年に5万件あった豆腐屋が今では1万件あまりに減ってきたという。スーパーで豆腐を買う人が増えたのです。
順調に豆腐屋での修行を終え、設備もコンテナでバルセロナまで移送。組み立て中の配線ミスでモーターを焼損するも、応急処置で対応できました。
実際にバルセロナで商売をしてみると、豆腐類が4割、弁当が4割、即席めんが2割と、「豆腐も売っている弁当屋さん」状態になってしまいました。当時スペインでは昼休み2時間を1時間に短縮する企業が増えており、弁当を求めるスペイン人が増えていたと著者は分析しています。
その後の値上げや、味と品質で顧客も増えたこと。弁当を作ってくれる人の退社などを経て、「豆腐屋」としての経営も安定したようです。
バルセロナ市内には200件以上の日本食レストランがある・・日本人が経営する店は40件ほどしかなく、8割近くは中華料理店が看板替えした・・なんちゃって日本食(p137)
小さく生んで大きく育てる
著者はバルセロナの豆腐事情をよく調べず、顧客調査もせず、価格を安く設定してしまい、さらに人を多く雇って資金繰りで苦しんだと反省しています。小さく生んで大きく育てるという慎重さが欠けていたとしていますが、起業はそんなものではないでしょうか。
奥様のがん再発もあり、事業継承に苦労されていますが、まさに「一身二生」だと思いました。こうした冒険は大好きです。清水さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・「旅行者よ、覚えておいてくれ、カタルーニャはスペインではない」と英語で書かれた大きな横断幕がサグラダファミリアに張られたのを見たことがある(p6)
・輸入豆腐も軒並み2ユーロを越えている・・・豆腐を2.1ユーロ・・焼き豆腐、厚揚げ、がんもは2.2ユーロにした(p109)
・油揚げの生地の固さは人差し指で押して確かめる。がんもの生地は練っている途中でヘラで突っ込み、その手ごたえで判断する、大豆の煮え具合は湯気のにおいでつかむ(p34)
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清水 建宇 (著)、岩波書店
【私の評価】★★★★★(96点)
目次
一身にして二生を経る
「失敗したって、たいしたこたぁないよ」
不況のどん底こそ起業のチャンス
崖っぷちに舞い降りた天使たち
うれしい誤算、うれしくない誤算
我が家はバルセロナ市の文化財
忙人不老
異国の文化は「新しい、良い」
日本食ブームは、より広く、より深く
「どちらから来られました?」「北極から」
南仏プロヴァンスと比べたら
コロナ禍、お客は半径500メートルの住民だけ
欧州はプラスチックを規制し、検査ビジネスを育てる
事業の継承は険しい山道を登るが如し
カミさんと私
著者経歴
清水建宇(しみず たてお)・・・1947年生まれ。神戸大学経営学部卒.1971年,朝日新聞社入社.東京社会部で警視庁,宮内庁などを担当.出版局へ異動し,『週刊朝日』副編集長,『論座』編集長.2000年1月から2003年3月までテレビ朝日「ニュースステーション」でコメンテーター。2007年,論説委員を最後に定年退職.この間,『大学ランキング』創刊の1995年版から2008年版まで13冊の編集長を務めた.
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