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「正義の教室 善く生きるための哲学入門」飲茶

本のソムリエ 2019/08/29メルマガ登録
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正義の教室 善く生きるための哲学入門


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

 この物語は一人の非番の消防士の話からはじまります。保育園が火災となり、左には自分の娘がいる、右には30人の子どもがいる。この非番の消防士はどちらを先に選ぶべきなのでしょうか。


 一人より30人の命を優先するのか。それとも一人の自分の娘の命を優先するのか。今日は非番だから、自分は正式な消防士ではないのですから、自分の娘を助けても非難されることはないでしょう。


・『消防士は、身内を最後に助けるものだ』それは消防士に明示されたルールであり基本原則・・というわけではないが、それが理念として正しいことは男も十分承知していた・・・だが、とはいえだ。今日は非番(p9)


 この本では過去の正義についての考え方を、3つに分けています。


 功利主義・・平等
 自由主義・・自由
 直観主義・・宗教


 つまり、功利主義は最大多数の最大幸福。自由主義は、何でも自由。直観主義は、宗教のような正義や伝統的な価値観を信じるというもの。それぞれ良い点、悪い点があり、極論を考えれば、どうしても矛盾が出てきてしまう。つまり、頭の中で絶対的な正義を定義するのがなかなか難しいのです。


・功利主義が目指すのは最大多数の最大幸福。つまり、みんなの幸せです。しかし、その幸せを実現させるためには、どうしても『他人を抑圧する強力な権力』の行使が必要になってきます・・・飢えていない2人からおにぎりを強制的に取り上げるという、強い権力が必要になります。昔あった、ソ連という国のことを思い出してください(p114)


 哲学者というのは、正義についてこうした極論を振り回しながら議論をし、禄を食んできたのかとア然となりました。社会主義・共産主義は社会経験も少ないマルクスという若者の頭の中のロジックから生み出された、もっともらしい理論だったのです。


 理系の私からすれば、実験して結果を見ればいいと考えてしまいます。そういう意味では、実験してみたら社会主義・共産主義は地獄に近かった、ということだと思うのです。


 実は世の中の正しい道とは、何事も中庸にあるのかもしれません。飲茶さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・たとえば、共産主義や社会主義といった『平等』を絶対的な正しさとする国がある。一方で、そんな国を抑圧的だと批判して『自由』を絶対的な正しさだとする国がある。そして、最後に、何らかの『宗教』すなわち『自分たちの国の伝統的な価値観』を絶対的な正しさだとする国がある(p40)


・正義とは何か?・・・この問いについて人類がどのように考えてきたか、その2500年の歴史を学ぶ授業である・・キミたちは『正しさ』という概念から逃れられない存在であり、たとえ無自覚であれ、必ず『正しいこと』を求めて生きてしまう存在であるからだ(p50)


・『臓器くじ』・・世の中には、不運にも病気になってしまい、すぐにでも臓器を移植しなければ死んでしまう人たちがたくさんいる。そんな彼らを救うため・・くじ引きで国民の中から無作為に誰かを選び、その人を強制的に連れ去る。そして、その人の身体をバラバラに分解して、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸などの臓器を移植用に取り出す・・この法律は正義だろうか(p87)


・リベラリズム、リバタリアニズム、・・・両方とも日本語に訳すと『自由主義』という意味になる言葉であるのだが・・・弱者に優しい福祉社会を作る考え方がリベラリズムであり、弱肉強食の自由競争を推進する考え方がリバタリアニズムである(p156)


・強い自由主義における真の論点は、『愚行権の是非』つまり『人間には自分の意思で不幸になる自由があるか?』ということだ。もちろん、強い自由主義は『ある』と考える(p167)


・飛び降り自殺をしようとしているクラスメイトがいたとして、死ぬ死なないも、助ける助けないも、個人の自由だからといって、どちらでもいいとしてしまう自由主義は、・・・(p170)


・では、崖があることを知らずそっちに歩いている人がいたら、もしくは、麻薬の恐ろしさを知らず麻薬を打とうとしている人がいたら・・・それを止めなかった人の責任・・(p172)


・たとえば超高齢化社会・・・その医療費は誰が出すの?高齢者は弱者で助けるのは義務だから、若い人は財産を差し出して当然ってこと?そんな、モラルを盾にした若者を強制労働させる社会、健全と言えるかしら・・(p181)


・無能で何の取り柄もない異性なんて交際相手に選ばないじゃない。それって敗者の切り捨てと何が違うの?・・・勝った者は生き残り、負けた者は消えていく。そういう格差社会でいいのよ・・・敗者を救おうと、声高に叫ぶ偽善者がいるから、世の中が不自由になって停滞していくの(p182)


・倫理とは、その良心によって観てとることができる『普遍的な善』『絶対的な正義』のことだと私は思っています(p209)


・『もし神が人工的な観念にすぎないとしたら、人間は神なしに、どうして善行などできるだろうか?』これは、ドストエフスキー作品全体の
 テーマに関わる重要な台詞・・(p263)


・どうすれば僕たちは、他者の視線に操られることなく、自由で幸福な人生を送ることができるのでしょうか・・・『万人に見られていなかったとしても、もしくは見られていたとしても、それに関わりなく自分がやるべきだと思ったことが、自分にとって善いことである』(p335)


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【私の評価】★★★★★(90点)



目次

プロローグ ある男の選択
第1章 倫理的な彼女たち
第2章 3種の正義「平等、自由、宗教」
第3章 平等の正義「功利主義」
第4章 幸福は客観的に計算できるのか? 功利主義の問題点
第5章 自由の正義「自由主義」
第6章 格差を広げ、弱者を排除してもいいのか? 自由主義の問題点
第7章 宗教の正義「直観主義」
第8章 人は正義を証明できるのか? 直観主義の問題点
第9章 正義の終焉「ポスト構造主義」
エピローグ 正義の決断


著者紹介

 飲茶(やむちゃ)・・・東北大学大学院修了。会社経営者。哲学や科学などハードルの高いジャンルの知識を、楽しくわかりやすく解説したブログを立ち上げ人気となる。日常生活に哲学的思考を取り入れてほしいという思いから、哲学サロン「この哲学がスゴい!」を主宰


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