「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」カレン・フェラン
2015/05/19公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
要約と感想レビュー
コンサルタントによるコンサル失敗例と成功例です。面白いのは、戦略策定の本当の意味です。そもそも未来を見通すことは難しい。今後の経済状況や業界の変化や、競合他社の動向や、顧客のニーズを予測できる可能性は低いのです。だから戦略は間違う可能性があるのです。
ただ、著者の言い訳は、仮に戦略が間違ったとしても、戦略を策定する過程で会社の環境・強みが理解できていれば、より適切に修正ができるというのです。もし戦略を策定していなければ、現状が良いのか悪いのかさえ理解できないのですから、計画することに意味があるのだという考え方です。
・コア・コンピタンス・・・数値データが導き出したとおりの将来を実現しようとした私たちの試みは大失敗だった。そもそも、将来を正しく予測することさえできなかったのだ(p48)
そして、欧米においても、ツールよりも人間関係、相互理解と納得が大事ということです。社員の知恵を集めて、理解と納得を深め、改善案を実行する。こうすることで、抵抗を減らし、実行性が高まるのです。
実は業績が悪いことの原因は、仲間や上司とうまくいっていないか、職場の雰囲気に合わないためだという。だから、優れたマネジャーとは、よい関係を築くためのスキルを持っており、どうすればよい人間関係を築けるかを理解している人なのです。
・関係者を一堂に集め、なぜ現行のやり方で業務を行っているのか、それによって関係者にどのような影響が出ているのかを話し合い、他部門の人が抱えている問題をみんなで理解するという方法には、計り知れない価値があった(p79)
コンサルタントはその会社に入ったら、ヒアリングをして問題の原因をわかっている人から問題点を教えてもらうのです。解決策を知っている人がいることもあるでしょう。そうした問題と解決策をまとめて報告すれば、一件落着なのです。
これがコンサルタントの本音だと思いました。コンサルタントは使うべきであって、コンサルタントに決めてもらうものではない、という著者の考えに同感でした。フェランさん、良い本をありがとうございました。
この本で私が共感した名言
・欲張ってプロジェクトをあれこれ立ち上げると、行き詰まりが生じる。社員が同時にこなせるのはせいぜい2、3個のプロジェクト・・(p97)
・「数値目標」が組織を振り回す・・各部門の人が自部門の評価基準の最高レベルを目指すあまり、他部門の利益を犠牲にしてしまうのだ(p128)
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【私の評価】★★★★★(92点)
目次
Introduction 大手ファームは無意味なことばかりさせている
第1章 「戦略計画」は何の役にも立たない : 「画期的な戦略」でガタガタになる
第2章 「最適化プロセス」は机上の空論 : データより「ふせん」のほうが役に立つ
第3章 「数値目標」が組織を振り回す : コストも売上もただの「数え方」の問題
第4章 「業績管理システム」で士気はガタ落ち : 終わりのない書類作成は何のため?
第5章 「マネジメントモデル」なんていらない : マニュアルを捨てればマネージャーになれる
第6章 「人材開発プログラム」には絶対に参加するな : こうして会社はコンサルにつぶされる
第7章 「リーダーシップ開発」で食べている人たち : リーダーシップを持てる「チェックリスト」なんてない
第8章 「ベストプラクティス」は"奇跡"のダイエット食品 : 「コンサル頼み」から抜け出す方法
著者経歴
カレン・フェラン(Karen Phelan)・・・経営コンサルタント。マサチューセッツ工科大学(MIT)および同大学院を卒業後、大手会計事務所系コンサルティングファーム「デロイト・ハスキンズ&セルズ」(現デロイト・トウシュ・トーマツ)、戦略系コンサルティングファーム「ジェミニ・コンサルティング」等で、戦略、オペレーション、組織開発、IT分野の経営コンサルタントとして活躍。その後、製薬大手ファイザーに転職して研修部門を立ち上げたのち、コンシューマービジネス部門のアジア太平洋地域のIT担当マネージャーを、続いてジョンソン・エンド・ジョンソンではコンシューマービジネス部門のオンラインマーケティング担当マネージャーを務めた。現在はオペレーティング・プリンシパルズ社の共同設立者となり、再び経営コンサルタントとして活動している。夫とふたりの息子とともに米国ニュージャージー州に在住。
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