「フィンチの嘴」ジョナサン ワイナー
2011/07/04公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(92点)
■ダーウィンは、
ガラパゴス諸島の生物に触発されて
「種の起源」を書いたといわれています。
そのダーウィンの進化論を実証するために、
ガラパゴス諸島のフィンチ(小鳥)すべてを
二十年以上にわたり、
測定した科学者がいます。
全てのフィンチに番号をつけ、
体重、嘴のサイズを測定し、
だれと結婚したのか、
いつ死んだのか、
食糧の種類、量などを
すべて記録していったのです。
・全個体の戸籍をつくって追跡し、家計図を描き、
ノートにその死亡年月日を記入するほど
徹底的な調査研究が行なわれたのは、
ダーウィンフィンチ類以外にない(p253)
■そこからわかってきたことは、
非常に短時間に種というものは、
環境に適応していくということです。
自然は乾燥と豪雨、
暑さと寒さと大きく移り変わりますので、
その中で生物は、自然選択と多様性の助けにより、
どんどん環境に適応していきます。
変化の多い時期は、
雑種や突然変異が増え、
その中から適応する種が生まれる。
反対に安定している時期には、
現状維持をする力が
強くなるようです。
(人間社会と同じですね)
・生活条件が厳しくなると突然変異率を上げ、
和らぐと再び率を下げる生物が多いようだ(p280)
■島で進化した生物は、
大陸よりも競争が少なく、
独特の進化をするという事実に
「日本」をイメージしました。
「日本人」こそ、
人間が特殊に進化してきた
特異な種なのかもしれません。
・島の生きものたちは大陸にいる近縁種よりも絶滅する
危険が高い。個体数が少なく、大陸で見られるような
熾烈な競争から隔離されて進化してきたからである(p310)
■生物の進化の不思議さを
追求した一冊でした。
生物学の楽しさがわかりますが、
一方で、進化が抗生物質に耐性を持った
細菌を生みだしていることもわかりました。
進化を突き詰めながら、
生物の一種である人間というもの
についても深く
考えさせられる一冊でした。
ワイナーさん、良い本をありがとうございました。
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■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・「科学は測定である」
ヘンリー・ステイシー・マークス(p259)
・殺虫剤は毒に弱い個体を淘汰する。
反対に、毒に強い個体ほど長生きして
多くの子孫を残すので、毒に強い個体は選択される(p319)
・ロックフェラー大学のアレグザンダー・トマスは、
こう述べている。「バクテリア類が抗生物質に対して、
これほど短い時間のうちにいろいろな対抗手段を
身につけたと考えるとおそろしい」。(p327)
・ゾウの密猟者がゾウの牙が小さくなりつつあることに
不満をもつのと同様、漁師たちも魚が小さくなることを
おもしろくなく思っている。しかし、この魚とゾウの
どちらの変化も、漁師や密猟者自身がもたらした
選択の直接の結果なのである(p334)
・変化する状況の中で雑種が有利なのは、
雑種はくちばしなどが非常に個体差に富んでいるから
というだけではない。雑種の持って生まれた新しい
遺伝子が、わずかばかり有利な形質を数多く
生みだしたからという理由もあるだろう(p247)
・ローズメリー曰く、「大事なことは、
種はじっとしてはいないということ。
種を『保存する』ことはできません。
種は常に変化しており、さらに変化する
可能性をはらんでいるのです(p315)
・ピーターとローズメリーに言わせれば、
自然選択は一世代単位でも起こるが、
進化は世代を超えて起こるものである。(p105)
早川書房
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【私の評価】★★★★★(92点)
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