「反転―闇社会の守護神と呼ばれて」田中 森一
2008/05/05公開 更新本のソムリエ [PR]
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【私の評価】★★★★★(91点)
要約と感想レビュー
現在、詐欺の名目で懲役3年の実刑判決を受け、服役中の田中元検事の一冊です。著者は、東京特捜部に在籍していた辣腕検事であり、その検事を辞めた後、弁護士として裏社会の人々を弁護してきました。
田中さんの生き方にはあまり賛同できませんが、社会の裏と、政治家、企業家、高級官僚のつながりが、この一冊を読むだけで見えてきます。
ヤクザ、政治家だけでなく検察を含めた高級官僚の名前がぼろぼろ出てくるのは、検察組織から裏切り者として堀の中に入れられ失う者のない人間だからできることなのでしょう。
・住銀は労せずして、平和相銀の東京の店舗を手に入れ、業務を拡大・・・住銀と検察の関係は古く・・大阪で検事正が検察庁を退官して弁護士になるとき、住銀と読売新聞が責任を持って何十社に及ぶ顧問先をつける。(p178)
この本を読んでから、新聞やニュースを見る気がしなくなってしまいました。「汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす」とは言われますが、闇の部分も知っておく必要があるということです。
検察は力であり、国策捜査もするし、金のやりとりもある。ヤクザも力であり、そうした力がバランスを取りながら世の中が動いているのです。
日本社会の現実を直視するために必読の一冊です。本の評価としては、★5つとしました。
こんな人にオススメしたい!
・検察の捜査に対して「国策捜査」という呼び方をよく耳にする。・・・そもそも検察の捜査の本質が、権力体制と企業社会を守護するためのものだ。つまりすべて国策捜査である。(p16)
・無理やりストーリーをつくり、それを調書にした。・・・そうやって被疑者を追い込みながら、調書を取る。そのテクニックに最も優れているのが、東京地検や大阪地検の特捜部である。(p152)
・警察の捜査を受けて起訴、あるいは不起訴などを決定するのが、検察庁の役割である。・・・検事は、警察の捜査段階から刑事たちの相談を受ける。・・・いわば検事は、事件における捜査の指揮官のような存在である。・・・だから、地方に赴任すると、大きな顔ができるのである。(p77)
・たとえば、本部長や大阪の中心地の警察署長が転勤するときには、当時で2000万円から3000万円の選別が地元の有力業者から贈られる。(p129)
・ヤクザは、その大半が、同和部落出身者かあるいは在日韓国・朝鮮人だといわれる。そういう差別された人たちが数多く住む大阪は、自然とヤクザが幅を利かす。彼らは、行政や経済に深く食い込み、事件の裏で暗躍してきた。(p133)
・会津小鉄会では、京都府の同和対策事業の工事費用をピンハネしていた。建設会社の受注金額の三パーセントを抜くことが、半ば習慣化されていた。そうしたカネがなければ、あれだけの大組織を維持できないのだろう。(p260)
▼引用は、この本からです。
【私の評価】★★★★★(91点)
著者経歴
田中 森一(たなか もりかず)・・・1943年生まれ。岡山大学在学中に司法試験に合格。1971年検事任官。大阪地検を経て、東京地検特捜部。撚糸工業組合連合会汚職、平和相互銀行不正融資事件などを担当。辣腕検事として名を上げ、1988年退官、弁護士事務所開設。2000年石橋産業事件をめぐる詐欺容疑で東京地検に起訴され、2008年2月上告棄却、懲役3年が確定する。
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