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「成道のアヴェ・マリア」川畠 正雄

2008/02/12公開 更新
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成道のアヴェ・マリア―ヴァイオリンの師として、父として

【私の評価】★★★☆☆(79点)


■八歳の川畠成道は、旅行先のロサンゼルスで
 体調を崩し入院します。


 その病状は、全身の皮膚が水ぶくれとなり、
 破れてはがれてしまうという
 生存率5%といわれる原因不明の難病でした。


 成道は、40℃以上の熱に苦しみながらも、
 感染症にもかからず、一命を取り留めましたが、
 視力はほとんどなくなってしまいました。


■成道の目が完全に見えなくなってしまったら
 どうやって食べていけばいいのか?
 父は悩みました。


 将棋はどうだろう?
 ヴァイオリンは修行が過酷だし・・・。


 悩んだ末、成道が興味を持っているヴァイオリンの
 練習を始めることにしました。


 ・「でも、パパ、ほんとに
   ヴァイオリンじゃだめなの?」(p75)


■それから、過酷な練習がはじまります。
 目が不自由なため、大きな模造紙に楽譜を書き写し、
 練習は深夜まで続きました。


 さらに、父もプロのヴァイオリニストですから、
 成道の練習が終わってから、自分の練習です。
 毎日が非常事態のような生活です。


 ・「パパもさっさとすませて、
  二階へ行って練習を見てちょうだい」
  というプレッシャーで、おちおち
  夕食もとっていられない雰囲気だった。・・・
  下に降りてくるのは、
  いつも夜中の一時頃だった(p102)


■中学時代にほとんど目が見えなくなりましたが、
 成道は、高校、大学とヴァイオリンのレッスンを続け、
 大学卒業後は、ロンドンの英国王立音楽院に留学します。


 そして、主席で卒業。
 卒業式と同時に開催された音楽院の
 創立75周年記念演奏会では
 ソリストとしてヴァイオリンを演奏しました。


 演奏後、聴衆は総立ちで床を踏み鳴らし、
 拍手は鳴り止みませんでした。


 ・最後の一音を弾き終わった直後、
  会場全体が割れんばかりの
  拍手と歓声がわき起こったことだ・・・
  聴衆が拍手とともに
  足で床を踏み鳴らしている。(p204)


■この最後の場面は、絶対、泣けますね。


 20年間の「努力にまさる天才なし」
 泣ける一冊でした。★3つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・「こんな努力なんかしたって、
  ソリストになれなかったら、
  意味ないじゃないか」
  最初に成道の口からそういう言葉を
  聞いたときには、あまりの思いがけなさに
  愕然とした。(p144)


▼引用は、この本からです。
成道のアヴェ・マリア―ヴァイオリンの師として、父として
川畠 正雄
講談社 (2003/01)
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【私の評価】★★★☆☆(79点)



■著者経歴・・・川畠 正雄(かわばた まさお)

 1945年生まれ。1967年東京芸術大学音楽部器楽科を卒業。
 在学中より、東京ヴィヴァルディ合奏団、東京シンフォニカ・
 アンサンブルでヴァイオリン奏者として活動。
 卒業後、イソ弦楽四重奏団の一員となる。
 また、東京芸術大学オーケストラに在籍。
 1978年よりコンサートマスター。


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