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「中世のかたち-日本の中世〈1〉」石井進

2003/03/23公開 更新
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【私の評価】★★★☆☆(77点)


要約と感想レビュー

■本書は日本の中世の歴史の専門家である
 著者の遺作であるという。


 日本の中世とは鎌倉時代から戦国時代という
 武士による幕府の支配の時代となります。


■日本の中世には温暖期と寒冷期があり、
 その気候変動によって歴史が
 影響を受けているという。


 当時は農業の技術も限定的であり、
 ちょっとした寒冷化が飢饉となって
 人々の命を奪ったのです。


 石井さん、
 良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・日本では7、8月の平均気温が19℃以下のときには、稲の収穫量が半分以下になってしまうという・・・岩手県宮古の約90年間分の7、8月の平均気温21.3℃と比べると、収穫量半分以下の大冷害に襲われる確率は30年に1度くらい。ところが、かりに平均気温が1℃下がったとすれば、大冷害の確率は6~7年に1度の割と高くなる・・・平均気温1度、2度の差がこれほどまで農業生産に影響するとは驚くべきことではないか(p15)


・8世紀末から9世紀初めにかけて、坂上田村麻呂による「蝦夷(えみし)」の「征伐」、そして「東北経営の進展」がつづく。この9~10世紀はロットネスト海進の第一の高まりの時期で、1000年前後に一度、小さな谷間を作った後に1100年前後の最温暖期に到達する。すると日本の中世の始まりの時期は最温暖期と一致しており、東北日本が農業ではもっとものびてゆく、いわばフロンティアに当たっていたのではないか(p16)


・中世のほとんどすべての時期を通じて飢饉や流行病の続発はいつものことであった。ただし飢饉といっても、この12世紀末のような高温・旱魃によるタイプもあれば、逆に例外型飢饉もある。そして13世紀に入って以後、中世のほとんどを通じて温暖期は去り、冷涼な「小氷期」型気候が続くので、多くは冷害型飢饉となる(p21)


・(北海道の)勝山館の発掘成果の最後のテーマとして、この館から「和人」的遺物とともに「アイヌ」的遺物もまた出土するという問題をとりあげよう(p122)


・すでに鎌倉の名越に在って数年間、法華経至上主義の旗をかかげて布教につとめていた日蓮が、文応元年(1260)、幕府の最高指導者北条時頼に上呈した、有名な『立正安国論』・・・正嘉元年(1257)から連年の天変地異・飢饉・疫病の続発を憂えた日蓮が、その原因と対策を求めて一切経を閲覧した末、書き上げた論文・・・1230年代の寛喜の大飢饉は、気候の長期変動が小氷期に入ったことを示す冷害型飢饉の始まりだった。そして正嘉以来の飢饉も冷害、暴風、地震が複合した上に疫病の流行が追い打ちをかけた結果、悲惨な状況が各地で現出した(p160)


・13世紀前半から気候の長期変動曲線が小氷期に入って、そのための飢饉・冷害が以後も続いてゆく。幕府の名執権とたたえられる泰時の治世、武家法典の制定として仰がれる『御成敗式目』制定の直前がこの大飢饉にあたる・・・川崎庸之氏は「絶対他力以外に救いへの道なし」とした親鸞のあの回心のきっかけを東国で寛喜の大飢饉に遭遇した体験に求め、網野善彦氏はそれを引用しつつ、あの印象的な歴史叙述『蒙古襲来』をこの大飢饉から書きはじめた(p208)


・一番下のクラスにいた下人はまた所従ともよばれ、幕府の法律では「奴婢・雑人」とも表現されたが、古代の奴婢とはちがって売買は禁止された・・・中世の譲状を見ると、家財道具類とならべて下人・所従を譲与している例が結構多い。主人にとって重要な財産の一種だったのである(p212)


・羽柴秀吉時代のかれの家老だった杉原七郎左衛門家継は、秀吉の妻おね(北政所)の母親の弟(兄ともいう)という近親だが、その前身は織田信長の城下町清洲で「連雀商人」の者だったという・・・秀吉の姉婿の弥介は、鷹匠配下の下司である綱差だったし、秀吉の祖父で、尾張の甚目寺の東北町に住む又右衛門はホウロク商であった。ホウロクとは素焼きの土鍋・・・秀吉の周囲の親類縁者には、大体このクラスに属する人びとが多かった(p304)


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▼引用は、この本からです


【私の評価】★★★☆☆(77点)


目次

1 気候の長期変動と中世のはじまり
2 「日本国」境界の人びと
3 港湾都市「十三湊」の発見
4 上之国館から見るエゾが島状況
5 都市鎌倉の七口と前浜
6 鎌倉の境界に立つ人びと
7 千葉氏所領下の「人間の鎖」
8 商人の原像―千駄櫃と連雀
9 市の原型、市に集う人びと


著者経歴

 石井 進(いしい すすむ)・・・日本の歴史学者。東京大学名誉教授。専門は日本中世史。文学博士。正四位勲三等旭日中綬章。(1931年7月2日 - 2001年10月24日)


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