「日本軍のインテリジェンス」小谷賢

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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)

【私の評価】★★★★★(93点)


●これは、本ではなく、論文です。


 史実を調査し、日本の諜報の
 あるべき姿を提言しています。


 著者は、日本における諜報組織の弱さを
 過去にさかのぼって明らかにし、
 現在の日本が取るべき対策を提示しています。


 この本の内容こそが、
 日本が諸外国に知られてはならない
 最大の秘密ではないかと赤面しました。


 ・情報部の地位の低さというのも日本特有のものである・・・
  英米、特にイギリスでは・・・
  優秀な人材がインテリジェンスに集まる・・・
  戦前の日本では・・・
  作戦部に優秀な人材が集められた(p207)


●日本の欠点は、情報部の地位が低いこと。


 さらに、情報を戦略的に考え、
 政策に反映する組織、仕組みと
 なっていないことです。


 日本では、実務者レベルが政策を作成し、
 各部署を調整して決定するというプロセスですが、
 その中で情報に基づく客観的な判断は埋もれていくのです。


 ・陸軍内の政策決定過程だけでも、まず課長級が
  中心となって部内の意見を取りまとめ、
  そこから参謀本部作戦部長、陸軍省軍務局長、陸軍省次官、
  参謀本部次長、陸軍大臣、参謀本部総長の決裁を経て
  陸軍の試案が生み出される。・・・
  その結果・・・情報に基づいた合理的な案ではなく、
  各組織の「合意」を形成できるような玉虫色の案と・・(p182)


●また、情報部門の予算の少なさ、
 人員の少なさも問題です。


 これは、昔も今も
 あまり変わりはないようです。


【昔】
 ・優秀なエージェントを雇うための条件の一つは
  十分な報酬であったが、
  各特務機関はそこまでの潤沢な資金を手にしていなかった。
  例えば、憲兵隊に逮捕されたソ連側スパイは、
  当時最高級のライカのカメラと現金5000円
  (現在約400万円)を持っていたというが、
  日本側では一人のスパイにそこまで
  金をかけることができなかった(p52)

【今】
 ・現在日本のインテリジェンス・コミュニティー全体で
  使われる予算は推定で1000億円以内と考えられる。
  アメリカの・・・予算が年間3兆円強、
  イギリスが3000億円程度と言われるのに比べると、
  いかに細々と行われているかがわかるであろう。(p206)


●著者の提案は、情報と分析を行う独立組織の設立です。


 実行部隊とは別に、情報組織をつくることで、
 客観的な情報収集・分析ができるようになるわけです。


 ・行動しようとする人間が情報を扱い出すと、
  手段と目的が入り混じるために客観的な情勢判断が
  難しくなってしまう現象である。
  これに対する処方箋として・・・
 「実行するスタッフと調査するスタッフをできる限り
  厳密に分離しておくしかない(p195)


●本として評価するのは難しい本でした。
 国家のあるべき姿を考えたい方にお薦めします。


 日本の情報組織のあるべき姿を提言するものとして、
 ★5つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・ハルは米側の通信情報(マジック)によって、
  日本との交渉決裂が戦争を意味することを
  すでに知っていたため、妥協的な暫定協定案を
  用意していた。・・・中国にとっては
  日米間の妥協成立は好ましくなかった・・・
  ロンドンの中国大使館はUPに
  (暫定協定案の)情報を漏らしてしまった・・・
  ハルは一夜の内に考えを変え、
  26日には強硬なハル・ノートを日本側に
  提示することになった。(p186)


 ・1941年9月、陸軍省軍務課の戦争経済研究班も、
  対米戦の見通しについて、日本の生産能力は限界に近く・・・
  米英の生産力は上昇を続ける・・・
  持久戦には堪えがたい、という主旨の報告を行っている。
  杉山元参謀総長は報告の調査は完璧で議論の余地はないが、
  研究班の結論は国策に反するとして
  報告書の焼却を命じた(p192)


 ・奇襲攻撃が成功した後に海軍が頼りにしたのは、
  アメリカの世論が厭戦気分に支配されることと、
  ドイツの欧州制覇であった。・・・
  まったく逆であった・・・
  米世論に対するプロパガンダ工作も、
  ドイツ軍に対する客観的な研究の実施も
  不十分なままであった。(p167)


▼引用は、この本からです。

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)
小谷 賢
講談社
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4 「知の集積地」としての日本軍
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5 現代的視点から評価した日本軍の「情報感度」

【私の評価】★★★★★(93点)



■著者紹介・・・小谷 賢(こたに けん)

 1973年生まれ。
 大学卒業後、ロンドン大学キングス・カレッジ大学院修士課程修了。
 京都大学大学院博士課程修了。
 防衛省防衛研究所戦史部教官。
 専門はイギリス政治外交史、インテリジェンス研究。


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