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【書評】「The New Case for Gold 投資の正解が見えない時代でも、 ゴールドだけは裏切らない」ジム・リカーズ

2026/09/28公開 更新
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「The New Case for Gold 投資の正解が見えない時代でも、 ゴールドだけは裏切らない」ジム・リカーズ


【私の評価】★★★★★(90点)
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要約と感想レビュー


基軸通貨ドル崩壊の可能性

流動資産の10%を金の現物で保有すべきだと主張する一冊です。原著が刊行されたのは2016年。当時、金価格は比較的低い水準で安定していましたが、その後、金価格は大きく上昇しています。


著者が金の現物保有を推奨する理由は、ドルを基軸とする現在の国際通貨制度が、いずれ崩壊すると予想しているからです。


著者によれば、国際通貨制度は20世紀に1914年、1939年、1971年の3度崩壊、大きくルールが変更されており、さらに1998年、2008年にも崩壊の危機にあったのです。通貨制度の危機は約30年ごとに起きており、次の崩壊も近いと予測しているのです。


また著者は、銀行のデリバティブ禁止や、証券業務を規制したグラス・スティーガル法を復活させるべきだと主張しています。1998年のLTCM破綻時にLTCMに在籍していた著者だけに、その主張には説得力があります。


買えるうちに、つまり今すぐに金を買うこと・・・流動資産のうち10%を金に割り当て、安全な場所に保管したら、あとはのんびりくつろいで展開を見守る(p267)

過去の国際通貨制度の崩壊

これまでドルを基軸通貨とした通貨制度を支えていたのが、アメリカ政府の保有する大量の金でした。


1933年、アメリカ政府は国民が保有する金を接収。その後、第二次世界大戦で戦場となった欧州からの支払いなどを通じて金がアメリカに集まり、当時、世界の金の約7割を保有していたといいます。


つまり著者の考えでは、もし現在の国際通貨制度が崩壊すれば、多くの金を保有する国ほど、新たな「国際通貨制度のルール作り」で影響力を持つ可能性があるのです。


そして近年、金価格が上昇している背景の一つとして、中央銀行による金購入があります。中央銀行の金保有量は3万3000トンから3万6000トン超へ増加し、その購入量は年間の金産出量の約20%に相当するのです。


1937年にフォートノックスが建設されたのは、1つには連邦準備銀行の金の保管をするため、そしてもう1つには1933年に国民から接収した金を保管するためだった(p49)

中国とロシアの金購入

特に著者が注目しているのが、中国とロシアによる金の購入です。


2015年、中国の公式な金準備は1658トンでした。しかし著者は、採掘量や輸入統計などから推計すると、実際には4000トン近く保有している可能性があるとしています。さらに2025年には、中国の公式な金準備は約2285トンまで増えています。


実は2009年、アメリカ国防総省で金融戦争のシミュレーションが行われ、著者は「中国」チームとして参加しました。


そこで著者が実行した作戦は、ロシアと連携して金を裏付けとする新通貨を発行し、ロシアのエネルギーや中国の工業製品の決済には、ドルではなくその新通貨しか使えないようにするというものでした。


興味深いのは、その後、ロシアが金準備を大幅に増やし、中国も金保有量を拡大していることです。著者は、中国とロシアが将来の国際通貨制度の崩壊を予見し、金を蓄積していると考えているのです。


中国は大量の金を短期間に取得しようとしている・・・だが、中国の購入計画が公になると金価格が上昇してしまうため、秘密工作や軍の資産などを利用して秘密裏に調達している(p140)

金は「投資」ではなく「保険」

ウォーレン・バフェットが現金比率を高め、中国やロシアが金を買い増しています。こうした動きは、ドルを基軸とする現在の国際通貨制度に対する警戒の表れなのでしょう。


著者は、もし国際通貨制度が崩壊すれば、アメリカ政府が再び金を接収する可能性まで予想しています。


そして、その後の国際通貨制度として、金本位制、あるいは金を裏付けとするSDRなど、金を大量に保有している国々が主導する新たな通貨制度が登場すると予想しています。


著者はこうした国際通貨制度が崩壊したときの「保険」として、金の現物を流動資産の10%の保有を提言しているのです。10%であれば、金が暴落しても損害は限定的で、金融制度が崩壊したときには金の価値は数倍になるので、資産は守られるのです。


通貨制度そのものに対する「保険」としての金が有効なのがわかりました。仮に日本が外国から侵攻されて占領されたとしても、持って歩けるほどの金を保有していれば、「保険」となるのでしょう。


リカーズさん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言


・金は普遍の価値測定単位であり・・・変動しているのは通貨であって金ではない(p134)


・金に価値がないのなら、なぜアメリカは8000トン以上の金を保有しているのか・・なぜ中国は数千トンの金を密かに取得し、ロシアは年間100トン以上の金を調達しているのか(p75)


・財政が持続可能かどうかを判断する基準は、名目経済成長率が国債利回りを上回っていることである・・必要なのは、実質成長率にインフレ率を加えた名目経済成長率だ(p125)


・デフレの環境では、実質債務額が膨らみ、貸倒損失が増える。その損失は銀行に跳ね返ってくる・・・デフレはまた、政府の税徴収にも打撃を与える。労働賃金が上がらないため、課税対象となる所得が増えないからだ(p123)


▼引用は、この本からです
「The New Case for Gold 投資の正解が見えない時代でも、 ゴールドだけは裏切らない」ジム・リカーズ
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ジム・リカーズ、APJ Media 合同会社


【私の評価】★★★★★(90点)


目的


Chapter 1. 金とFRB
Chapter 2. 金は貨幣である
Chapter 3. 金は保険である
Chapter 4. 金は不変である
Chapter 5. 金は打たれ強い
Chapter 6. 金を買おう
Chapter 7. 金とトランプ大統領


著者経歴


ジム・リカーズ(James G. Rickards)・・・ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家。金融ニュースレター『パラダイム・レポート』の編集長。経済学者であり、シティバンク、キャクストン・アソシエイツ、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)で上級職を歴任。1998年には、連邦準備制度理事会(FRB)が支援したLTCM救済交渉の交渉担当者を務める。現在は、米国情報機関および国防総省に対して資本市場に関する助言を行うほか、ワシントンDCにあるFDD(民主主義防衛財団)経済・金融力センターの諮問委員を務める。


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