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「幸福論」ヒルティ

2003/12/20公開 更新
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「幸福論」ヒルティ


【私の評価】★★★☆☆(70点)


要約と感想レビュー

 幸福論とは、19世紀、スイスのカール・ヒルティがベルン大学の法学教授職の傍ら、執筆したものです。内容としては、仕事が大切であること、効率的に仕事をする方法などが書いてあり、自己啓発本的な内容の一方で、幸福とはなにかを考察しています。


 面白いのは、幸福のために仕事が絶対に必要であるということ。また、幸福になるためには、若干の不幸が必要であると言っていることです。つまり、仕事もせず、ぶらぶらしているのは幸福なようですが、実は仕事をしながら、いくつかの困難を突破した人にこそ、幸せというものが理解できるとしていることです。


 これは早期リタイアを考えている人がいるようですが、早期リタイアしてみると、数ヶ月は楽しそうにやっていますが、だんだん暇になってきて苦痛になるというのです。つまり、何もないということは、自分の存在意義もないし、やりがいもない人生になってしまうのです。


 そうした逆説を解く一冊でした。現代社会でも、通用する内容であり、ある意味常識的な内容でした。


この本で私が共感した名言

・完全にその仕事に沈潜し、われを忘れることのできる者は、最も幸福な労働者である(p16)


・習慣的な勤勉が容易になるようなこつがある・・・第一は着手しうるということである・・・最初の一字を書くなりあるいは一打ちをするなりしてしまえば、事柄はすでにぐっとやさしくなっているのである・・・ともかく始めることだ(p19)


・時間を生みだす最もすぐれた方法は、一週に六日(五日でも七日でもない)、一定の昼間の(夜間ではない)時間に、断続的ではなく、規則正しく仕事をすることである(p30)


・時間のこまぎれを利用することである・・・特にほんとうに何物かを生みだそうという精神的仕事の場合には、最初の一時間、あるいは往々最初の三十分が最善の時間だといっても、決して誇張ではない(p34)


・時間浪費・・・われわれはまた無用な仕事を決して自己に課してはならない(p43)


・適度の心配(これは本来は心配ではない)、およびそれから開放されること、これは人間幸福のきわめて大きな部分をなすものである。人生において最も堪えがたいものは、悪天候の日の連続ではなくて、むしろ雲ひとつない日の連続である(p58)


・仕事なしでは、実にこの世に幸福はない・・・さりとて仕事がそのまま幸福であり、したがって仕事なら何でもきっと幸福感にみちびくというなら、それはまたさらに大きな誤謬である(p62)


・不幸は幸福に必要なものだということである・・・不幸のうちにはどのような力、どのような深い内面的な幸福・・・人が生涯に一度ほんとうに感得したら、もう忘れることのない幸福・・・が隠れているかを、みずから経験しなかった者には、その真の意義は絶対につかめない(p73)


▼引用は下記の書籍からです。
「幸福論」ヒルティ


【私の評価】★★★☆☆(70点)



目次

「仕事をするこつ」
「時間をつくる方法」
「幸福」
「人間とは何だろう、どこから来て、どこへ行くのか、金色に光る空の星のかなたにはだれが住んでいるのか?」
「人間知について」
「教養とは何か」
「高貴なる魂」
「二つの幸福」
「苦難をとおしての勇気-信仰の勇者」


著者経歴

 カール・ヒルティ(Carl Hilty)・・・1833‐1909。スイスのザンクト・ガレン州のヴェルデンベルクに生まれる。ドイツの大学で法学・哲学を学んだのち、スイスにもどり弁護士となる。その後、ベルン大学の法学教授、国会議員、オランダ・ハーグの国際裁判所判事などを歴任しながら、『幸福論』『眠られぬ夜のために』などの宗教的・倫理的・人生論的な著述を多く残した。豊かな経験と深い思索にはぐくまれた、具体的かつ実践的なヒルティの思想は、"永遠の古典"として世界中で読み継がれている


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