「正義の教室 善く生きるための哲学入門」飲茶

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正義の教室 善く生きるための哲学入門

【私の評価】★★★★★(90点)


■この物語は一人の非番の消防士の
 話からはじまります。


 保育園が火災となり、
 左には自分の娘がいる、
 右には30人の子どもがいる。


 この非番の消防士はどちらを
 先に選ぶべきなのでしょうか。


 一人より30人の命を優先するのか。
 それとも一人の自分の娘の命を
 優先するのか。


・『消防士は、身内を最後に助けるものだ』それは消防士に明示されたルールであり基本原則・・というわけではないが、それが理念として正しいことは男も十分承知していた・・・だが、とはいえだ。今日は非番(p9)


■この本では過去の正義についての
 考え方を3つに分けています。


 功利主義・・平等
 自由主義・・自由
 直観主義・・宗教


 つまり、
 功利主義は最大多数の最大幸福。
 自由主義は、何でも自由。
 直観主義は、宗教のような正義や
 伝統的な価値観を信じるというもの。


 それぞれ良い点、悪い点があり、
 極論を考えれば、どうしても
 矛盾が出てきてしまう。


 つまり、頭の中で
 絶対的な正義を定義するのが
 なかなか難しいのです。


・功利主義が目指すのは最大多数の最大幸福。つまり、みんなの幸せです。しかし、その幸せを実現させるためには、どうしても『他人を抑圧する強力な権力』の行使が必要になってきます・・・飢えていない2人からおにぎりを強制的に取り上げるという、強い権力が必要になります。昔あった、ソ連という国のことを思い出してください(p114)


■哲学者というのは、正義について
 こうした極論を振り回しながら議論をし、
 禄を食んできたのかとア然となりました。


 理系の私からすれば、
 実験して結果を見ればいい。


 そういう意味では
 社会主義、共産主義は
 実験の結果、天国ではなく
 地獄に近かったということだと
 思うのです。


 何事も中庸でいきたいものです。


 飲茶さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・たとえば、共産主義や社会主義といった『平等』を絶対的な正しさとする国がある。一方で、そんな国を抑圧的だと批判して『自由』を絶対的な正しさだとする国がある。そして、最後に、何らかの『宗教』すなわち『自分たちの国の伝統的な価値観』を絶対的な正しさだとする国がある(p40)


・正義とは何か?・・・この問いについて人類がどのように考えてきたか、その2500年の歴史を学ぶ授業である・・キミたちは『正しさ』という概念から逃れられない存在であり、たとえ無自覚であれ、必ず『正しいこと』を求めて生きてしまう存在であるからだ(p50)


・『臓器くじ』・・世の中には、不運にも病気になってしまい、すぐにでも臓器を移植しなければ死んでしまう人たちがたくさんいる。そんな彼らを救うため・・くじ引きで国民の中から無作為に誰かを選び、その人を強制的に連れ去る。そして、その人の身体をバラバラに分解して、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸などの臓器を移植用に取り出す・・この法律は正義だろうか(p87)


・リベラリズム、リバタリアニズム、・・・両方とも日本語に訳すと『自由主義』という意味になる言葉であるのだが・・・弱者に優しい福祉社会を作る考え方がリベラリズムであり、弱肉強食の自由競争を推進する考え方がリバタリアニズムである(p156)


・強い自由主義における真の論点は、『愚行権の是非』つまり『人間には自分の意思で不幸になる自由があるか?』ということだ。もちろん、強い自由主義は『ある』と考える(p167)


・飛び降り自殺をしようとしているクラスメイトがいたとして、死ぬ死なないも、助ける助けないも、個人の自由だからといって、どちらでもいいとしてしまう自由主義は、明らかにモラルに反していると思います(p170)


・では、崖があることを知らずそっちに歩いている人がいたら、もしくは、麻薬の恐ろしさを知らず麻薬を打とうとしている人がいたら・・・
 そういう人を見かけたら、私たちは絶対に止める『べき』だと思いますし、それを止めなかった人の責任を問われてもいいように思います(p172)


・たとえば超高齢化社会・・・その医療費は誰が出すの?高齢者は弱者で助けるのは義務だから、若い人は財産を差し出して当然ってこと?そんな、モラルを盾にした若者を強制労働させる社会、健全と言えるかしら。むしろ、老後の蓄えができなかったのは自己責任なんだから・・(p181)


・無能で何の取り柄もない異性なんて交際相手に選ばないじゃない。それって敗者の切り捨てと何が違うの?・・・勝った者は生き残り、負けた者は消えていく。そういう格差社会でいいのよ・・・敗者を救おうと、声高に叫ぶ偽善者がいるから、世の中が不自由になって停滞していくの(p182)


・倫理とは、その良心によって観てとることができる『普遍的な善』『絶対的な正義』のことだと私は思っています(p209)


・『もし神が人工的な観念にすぎないとしたら、人間は神なしに、どうして善行などできるだろうか?』これは、ドストエフスキー作品全体の
 テーマに関わる重要な台詞・・(p263)


・道徳があるからこそ、今、人間は平和に暮らせているのではないでしょうか?」「ほう、そうかね。人類の歴史を遡れば、道徳・・つまり、善や正義といった理想を持っている人間の方が、いわゆる悪人よりも、大勢人間を殺しているのだがね。たとえば、人間よりも上位の存在である『神』を信じる者・・たとえば、自分自身の政治思想を『正義』だと信じる者(p266)


・人間は神さまじゃない、完璧じゃない未来も予知できない。仮に神さまが決めた善がこの世に本当にあったとしても、僕たちはそれを知ることはできないのだから、どんな行動をすれば正しかったなんて絶対にわかるわけがないんだ!(p293)


・どうすれば僕たちは、他者の視線に操られることなく、自由で幸福な人生を送ることができるのでしょうか・・・『万人に見られていなかったとしても、もしくは見られていたとしても、それに関わりなく自分がやるべきだと思ったことが、自分にとって善いことである』(p335)


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■目次

プロローグ ある男の選択
第1章 倫理的な彼女たち
第2章 3種の正義「平等、自由、宗教」
第3章 平等の正義「功利主義」
第4章 幸福は客観的に計算できるのか? 功利主義の問題点
第5章 自由の正義「自由主義」
第6章 格差を広げ、弱者を排除してもいいのか? 自由主義の問題点
第7章 宗教の正義「直観主義」
第8章 人は正義を証明できるのか? 直観主義の問題点
第9章 正義の終焉「ポスト構造主義」
エピローグ 正義の決断



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