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「教科書では教えない入門 新世界史 文藝春秋SPECIAL 2017年春号」

2018/08/16公開 更新
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文藝春秋SPECIAL 2017年春号[雑誌]


【私の評価】★★★☆☆(78点)


要約と感想レビュー

 世界史というと敷居が高いので、まずは雑誌からと手にした一冊です。多くの著者に説明してもらえるのですが、テーマは脈絡がなく幅広いものとなっています。


 例えば、なぜローマは滅んだのか。ニュートンの素顔。ペルシャからイランの歴史。マキャヴェリはなぜ「君主論」を書いたのか、などは、ただ「君主論」を読むより事前のインプットで読み方が変わるはずです。


・マキャベリは人間を五箇条をもって定義している
 一、受けた恩はすぐに忘れ易い。
 二、すぐに飽きて、移り気である。
 三、偽善的であり、自分の行動に大義を欲しがる。
 四、危険に際しては臆病で、恐怖から行動する。
 五、利に対しては常に貪欲である(p177)


 面白かったのは、現代社会を歴史との比較で考えてみることです。例えば、トランプ大統領の保護主義、民族主義が力を持つことになれば、90年間前と同じように、ブロック経済による世界恐慌の再来となるのか。


 また、現在の金利の低さは、この1000年の金利の動きから見てどう考えるべきなのか。資本主義においてお金持ちは、より高い金利を求めて常に動いているのです。


・軍備を放棄し戦争を否定したつもりが、かえって軍事バランスを崩し、近隣国が戦争に踏み切るメリットを増大させてしまうことにもつながる。これが戦略に常に発生するパラドックスだ(p70)


 歴史をどう読むのかは、人それぞれでしょう。また、だからこそ歴史が面白い!ということでしょうか。文藝春秋さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・江戸時代、特に末期の平均身長は男性で155センチ、女性が143センチ平均体重も男性で50キロ台だったという推定値があります・・・日本の歴史で最も貧弱な体格だったと考えられます。しかも江戸時代は、身分制度によって職業選択の自由もなく、移動の自由も制限されていました(p9)


・五世紀にローマ帝国の西側(西ローマ帝国)が滅んだのは、その完備された道路網が失われたことも大きな原因のひとつです。四世紀中頃から侵入してきた蛮族によって道路がズタズタに寸断され、馬や兵ががいた駐屯地を奪われることで、治安維持の基盤だった情報インフラが機能しなくなったのです(p11)


・ローマ帝国がキリスト教を国教とした・・・他宗教の人たちは住みにくくなります。アテネの古代オリンピックも中止されます。オリンピックとは、ギリスト教にとって異教の神であるゼウスを崇める祭典だからです。このときにローマ帝国は、それまであった<寛容さ>をひとつ失いました(p12)


・商人や旅人からお金を取り上げるのが「関所」で、民間団体が勝手に行うのが「山賊」「海賊」というだけのこと。どちらにも商人にとってはそれだけコスト高になって、交易の妨げになります(p13)


・ヴァイキングはふつうに商売ができるときはただの商人です。これは倭寇も同様で、明との交易がうまくいっている時期は海商の共同体だったのですが、明が海禁政策をとり、彼らの商売を禁じたために海賊となった。明がモンゴル系の北方民族に対しても、通商を断ったがために侵攻され、皇帝が捕虜になったりしています(p17)


・現在も存続している主なヨーロッパ王室は、イギリス、スペイン、オランダ、ベルギー、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどだが、最も古いのは十世紀から続くデンマークのグリュックスブルク家である(p42)


・悪名高い魔女狩りや魔女裁判は宗教改革以前には見られず、ほとんどが宗教改革後のプロテスタント圏で起こっているのだが、それが宗教美術を破壊するのと同根の異常なまでの偏狭さや不寛容が生み出したものだった(p48)


・教皇選挙のたびにヨーロッパの有力政治勢力は水面下で選挙に介入し、自分に有利な教皇を当選させようと熾烈な争いを繰り広げた。そして代替わりするたびに教皇の政策は変更され、同盟する政治勢力も交替した(p59)


・ここで重要なのは、同盟という大戦略は、しばしば不快で、残酷でもあり、疲労を強いられるものだ、ということである(p75)


・ドイツとは何か・・・ナポレオン打倒後に開かれたウィーン会議では、35の君主国と4つの自由都市からなるドイツ連邦が成立しました。これは各国が独立国でありながら、フランクフルトに連邦議会を置くというもので、その議長国はオーストリアでした(p110)


▼引用は下記の書籍からです。
文藝春秋SPECIAL 2017年春号[雑誌]
文藝春秋SPECIAL 2017年春号[雑誌]
posted with Amazonアソシエイト at 18.08.15
文藝春秋 (2017-03-03)


【私の評価】★★★☆☆(78点)



目次

◎モンゴル帝国VS.五賢帝ローマ 出口治明
◎トランプ以後の世界史を語ろう エマニュエル・トッド


教科書に載ってない世界史14

◎古代ギリシアはペルシア帝国に操られていた 森谷公俊 
◎人間孔子とは何者だったのか 呉智英
◎ローマ帝国を滅ぼした難民と格差 井上文則 
◎女子継承で争ったヨーロッパ王室史 海野弘
◎ルネサンスを破壊した宗教改革 宮下規久朗
◎マキャヴェッリはなぜ『君主論』を書いたのか 原基晶
◎明を揺るがした日本の火縄銃 久芳崇
◎戦略家家康が駆使した「同盟の論理」エドワード・ルトワック
◎"金貸し"ニュートン 二つの錬金術 東谷暁
◎フランス革命も「外圧」の産物だった 中野剛志 
◎歴史人口学から見た太平天国の乱 上田信
◎トランプには真似できない大英帝国の支配術 中西輝政
◎臆病なビスマルクがドイツ帝国をつくった 臼井隆一郎
◎韓国大統領はなぜ悲惨な末路を迎えるのか 木村幹 


10分でわかる!気になる国の歴史

◎ナポレオンが火をつけたロシアの魂 中村逸郎
◎北朝鮮 粛清とミサイルの起源 鐸木昌之 
◎インド 開かれた亜大陸 脇村孝平
◎イラン 古代帝国から核開発までの二千五百年史 宮崎正勝
◎ラテンアメリカ 米国との終わりなき闘い 野谷文昭
◎「『古代ローマを調べてくれ』孫正義が歴史から学んだ 三〇〇年帝国のつくり方」嶋聡
◎大転換がやってくる! 金利・株式会社・資本主義の終焉 水野和夫


世界を動かすアメリカ史

◎全採点! アメリカ大統領の値打ち戦後編 福田和也
◎トランプ対CIA 冷戦後に何が起こったのか? 春名幹男
◎「南シナ海で米中衝突」を予言! 1942年イエール大白熱授業 奥山真司
◎共和党VS.民主党 日本人が知らないアメリカ史 渡辺惣樹


特別講義 宗教を知れば日本史がわかる 本郷和人

大日本史満州事変と天皇機関説 山内昌之×佐藤優


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