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「人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか」中川 毅

2018/04/23公開 更新
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人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)


【私の評価】★★★★☆(83点)


要約と感想レビュー

福井県にある水月湖(すいげつこ)には7万年以上の安定した堆積物があり、この堆積物を規準にした年代目盛りが地質年代の世界標準になっているという。つまり通常20%もの誤差を持つ炭素14を使った放射性炭素年代測定値を、水月湖の堆積物が補正しているのです。補正には、水月湖の堆積物だけではなく、樹木の年輪やサンゴ、鍾乳洞の石筍なども検討されています。


なお、炭素14の残存量はおよそ5万年で、ほとんどゼロになってしまいます。炭素14年代測定法が適用できるのはおよそ5万年前までに限られるのです。


・最終的に得られた年代目盛りの誤差は、5万年でプラスマイナス169年にまで改善していた・・「標準時計」・・14C年代を正確な年代に読み替えるための換算表のことである(p113)


こうした古気候学によって、過去の地球の気温の変化が明らかになっています。地球の気候は2000万年ほど,氷河期が続いており、現在のような温暖な間氷期は1割もないという事実です。さらに現在の温暖期は、1万年前から続いており、これまでの数千年しか続かなかった温暖期としては異例の長さなのです。


多くの研究者が、現在の温暖期がすでに例外的に長く続いていることから、人間が氷期の到来を遅らせているのではないか、という仮説を指摘してきました。今では、地球は氷期の到来を遅らせるだけでなく、さらに暑くなっていくと予想している人もいるというわけです。


・現代と同等あるいはそれより暖かい時代は、全体の中の1割ほどしかない・・数十万年のスケールで見た場合、「正常」な状態とは氷期のことであり、現代のような温暖な時代は、氷期と氷期の間に挟まっている例外的な時代に過ぎない(p34)


地球温暖化ガスによる地球温暖化が、効果を発揮しているのかもしれないと思いました。ただ、それは温暖化が問題なのではなく氷河期が来るのを遅らせているというプラスの意味です。


あと10年もしたら氷河期を遅らせるためにどんどん温暖化ガスを出しましょうなどと言い出す科学者が出てくるかもしれませんね。中川さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・西暦869年の夏に、おなじく東北地方を襲った貞観地震・・貞観地震の津波の地層は、記録に残るいかなる津波よりも内陸にまで分布していた・・次に起こるのは1000年後かもしれない災害のために、税金から巨額の対策費を支出し続けることに、999年間いちども文句を言わない覚悟がある人はおそらくいない(p4)


・今から1億年前から7000万年前頃の地球は今よりはるかに暖かく、北極にも南極にもいわゆる氷床が存在しなかった。これは、IPCCが予測する100年後の地球よりもはるかに温暖な状態である・・当時はいわゆる恐竜時代である(p29)


・確認されている中で最古のシダ胞子の化石は、じつに3億5000万年前のものである。しかもこの「化石」は、恐竜の骨のように珪酸質の岩石に変化していない(p124)


人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)
中川 毅
講談社
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【私の評価】★★★★☆(83点)


目次

プロローグ──「想定」の限界
第1章 気候の歴史をさかのぼる
第2章 気候変動に法則性はあるのか
第3章 気候学のタイムマシン──縞模様の地層「年縞」
第4章 日本から生まれた世界標準
第5章 15万年前から現代へ──解明された太古の景色
第6章 過去の気候変動を再現する
第7章 激動の気候史を生き抜いた人類
エピローグ──次に来る時代
あとがき



著者経歴

中川 毅(なかがわ たけし)・・・1968年、東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1998年、エクス・マルセイユ第三大学(フランス)博士課程修了。Docteur en Sciences(理学博士)。国際日本文化研究センター助手、ニューカッスル大学(英国)教授などを経て、現在は立命館大学古気候学研究センター長。専攻は古気候学、地質年代学。趣味はオリジナル実験機器の発明。主に年縞堆積物の花粉分析を通して、過去の気候変動の「タイミング」と「スピード」を解明することをめざしている。


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