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「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」村中 璃子

2018/04/16公開 更新
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10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

全国子宮頸がんワクチン被害者の会が提訴

子宮頸がんワクチン問題を取り上げた一冊です。子宮頸がんワクチン問題とは、ワクチンを接種した子どもに"激しいけいれん"、"自分の意思とは無関係に手足が動く"、"歩けない"、"階段が登れない"、といった症状が出るのではないか、という疑いがかけられたのです。そのため、全国子宮頸がんワクチン被害者の会が国とメーカーに損害賠償を求め東京地裁に提訴し、子宮頸がんワクチン接種も停止されたのです。


それに合わせて朝日新聞を含むマスコミは科学的データに基づかない、感情的な反ワクチン報道を繰り返しました。NHKも2016年1月に「クローズアップ現代:"副作用"がわからない?~信頼できるワクチン行政とは~」を放送し、表面的なワクチン副反応の恐怖をあおる内容だったのです。


2016年4月19日に日本小児科学会をはじめとする17の学術団体による共同声明「子宮頸がん予防ワクチン摂取推進に向けた関連学術団体の見解」では、国内外の疫学データをもとに、子宮頸がん予防ワクチンは安全であり、専門的見地から子宮頸がんワクチンの積極的な接種を推奨するとしています。しかし、未だに子宮頸がんワクチンは自己負担の「任意接種」となっており、接種率は1%未満と低迷したままなのです。


NHKは、2016年1月27日放送「クローズアップ現代」の「"副作用"がわからない?~信頼できるワクチン行政とは~」で、手をけいれんさせる少女の映像を全面に出した構成の番組を放送した・・肝心な事実には触れないなど、目に余る内容だった・・(p185)

神経免疫異常症候群には科学的な証拠がない

著者が子宮頸がんワクチン接種を推奨する理由は、次の2つの事実です。一つ目は、海外のデータでも名古屋市のデータでもワクチン接種による副作用と思われる症状の増加は見られないこと。二つ目は、西岡久寿樹氏、横田俊平氏、黒岩義之氏などが提唱する子宮頸がんワクチンにより発症する神経免疫異常症候群(HANS)には、検査所見や科学的な証拠がないということです。


このような科学的な根拠があるにもかかわらず、厚生労働省はワクチン接種を差し控え、マスコミはデータを積極的に報道せず、被害者の会を支援する人の政治運動も止まらないのです。毎年、子宮頸がんで死亡していく3000人のお母さんの家族の苦しみは想像に絶するものがあります。


日本では毎年、子宮頸がんによって3000人の命と1万の子宮が失われている(p1)

西欧のデータではリスクはない

2015年にフランス当局は、子宮頸がんワクチン接種後に起きている副反応について200万人の大規模調査に基づき、ワクチン接種群と非接種群の間には「接種後3カ月時点でのギランバレー症候群の発症を除くすべての症状の発症率に有意差なし」と結論付けた。そのギランバレー症候群の発症上昇リスクも10万例に1例程度の可能性があるとしていましたが、イギリスで1040万接種、アメリカで6000万接種と副反応報告のあった270万接種を解析した結果「ギランバレー発症のリスクは否定できる」とフランス当局は評価を改めているのです。


それに対し、2016年3月16日にTBSの「NEWS23」で池田修一氏は、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ脳の海馬・記憶の中枢に異常な抗体が沈着。海馬の機能を障害していそうだ」と発言しています。池田氏が責任者を務める神経難病学講座は、子宮頸がんワクチンの副反応とされる症状にも用いられる医薬品を製造販売するキッセイ薬品工業株式会社から1億6000万円の寄付を受けており、ポジショントークであることが明らかです。


名古屋市の7万人の調査・・月経不順、関節や体の痛み、光過敏、簡単な計算ができない、簡単な漢字が書けない、身体が自分の意思に反して動くなど、メディアで繰り返し報道されてきた症状がワクチン接種群に多く発生しているわけではなく、「むしろ15症状で少ない」(p61)

子宮頸がんで毎年3000人が死亡し続ける

データを見れば、子宮頸がんワクチンが子宮頸がんによる死亡者を減らす効果は明らかです。また、副作用と思われる症状も、データから推定されるのは、ワクチンを飲んでも飲まなくても発症したものである可能性が高いのです。仮に副作用があるとしても、効果とリスクを比較したうえで、効果のほうが大きければ、ワクチン接種は肯定されるべきでしょう。


私には子宮頸がんで亡くなった女性の親族は、データの検証もなく子宮頸がんワクチンの薬害として報道したマスコミと、HANSを創り出した人々を訴えるべきなのではないか、と感じました。また、全国子宮頸がんワクチン被害者の会に参加した人々も、家族が病気になったことは残念なことですが、マスコミや弁護士に煽られて将来子宮頸がんで死亡するであろう年間3000人の人々を見殺しにする結果となったことを直視すべきなのでしょう。


村中さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・子宮頸がんワクチン・・世界の市場に出て、すでに10年が過ぎた。「9価ワクチン」を用いれば、90%以上の予防効果が期待される(p23)


・著者が知るだけでもふたつの新聞が、薬害を前提としない記事掲載を試みた後、再び報道のトーンを変えている。・・実際の理由は、薬害を主張する団体やその支援者からの連日の抗議だ(p186)


・2009年度から2013年度の間で市販薬による副作用の報告数は1225件、うち15件が死亡例だ(p34)


10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか
村中 璃子
平凡社
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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

序章 並べられた子どもたち
第1章 子宮頸がんワクチン問題とは何か
第2章 サイエンスが暴いた捏造
第3章 子宮頸がんワクチン問題の社会学
終章 母と子



著者経歴

村中璃子(むらなか りこ)・・・医師、ジャーナリスト。一橋大学社会学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了後、北海道大学医学部卒業。世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局の新興・再興感染症チームなどを経て、現職。2017年、子宮頸がんワクチン問題に関する一連の著作活動により、科学雑誌「ネイチャー」などが共催するジョン・マドックス賞を日本人として初めて受賞。


子宮頸がんワクチン関連書籍

「変異ウイルスとの闘い―コロナ治療薬とワクチン」黒木 登志夫
「ワクチンは怖くない」岩田健太郎
「10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」村中 璃子
「ワクチン鎖国ニッポン―世界標準に向けて」大西 正夫


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