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「偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞」長谷川熙

2018/04/02公開 更新
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偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞 (WAC BUNKO 273)


【私の評価】★★★★★(90点)


要約と感想レビュー

文科省の内部文書で印象操作

元朝日新聞記者の長谷川さんが、「モリ・カケ」の加計学園疑惑に絞って調査した一冊です。加計学園疑惑は、朝日新聞の歪曲報道からはじまったと断言しています。なぜなら、朝日新聞が加計学園疑惑の根拠とした文科省の内部文書には、安倍首相が関与したとは全く書かれていないからです。


【文科省内部文書から引用】
「設置の時期については、今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている」


国家戦略特区の担当が、安倍首相がいつも話している「規制改革を最短で進める」という意向を再確認したと省内の報告文書に記載した。それを、あたかも安倍総理が加計学園の案件を進めるよう圧力をかけているかのように報道したのが実態なのです。(なお、国家戦略特区の担当者は、そんな発言はしていないと否定。文科省の内部文書が創作である可能性もある)


この文科省文書は獣医学部新設問題について首相からの指示は何もなかったことを逆に裏書きしている・・岩盤規制の打破をスピード感をもって進めるという常々安倍首相が指示している原則論を、国家戦略特区担当の内閣府側が具体案件に当てはめて強調したごく普通の発言と理解できます(p39)

報道しないことによる印象操作

さらに朝日新聞の問題は、「安倍首相によって行政がゆがめられた」と主張する前川前文科事務次官の主張ばかり報道していたことでしょう。加戸守行 前愛媛県知事は、「獣医学部の問題で強烈な岩盤規制のために10年間、我慢させられてきた岩盤にドリルで国家戦略特区が穴を開けて頂いたということで、『ゆがめられた行政が正された』」と主張しましたが、ほとんど報道されないのです。


強烈な岩盤規制とは、「大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準」(平成十五年三月三十一日文部科学省告示第四十五号)で、「第一条の二、医師、歯科医師、獣医師及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと」と文科大臣が決める告示で、獣医学部の新設が文科省によって実質的に門前払いされていたことを指しています。


さらに、獣医学部は加計学園一校のみ認められましたが、その経緯は2017年7月の国会での「加計」問題集中審議の際に山本幸三地方創生担当相から「日本獣医師会からの要請、つまり圧力で一校のみになった」経緯が答弁されています。日本獣医師会の圧力で、とりあえずは広域的に獣医師養成系大学などが存在しない地域の、それも一校に限って何とか認められたというのが実態なのです。


獣医師会・文科省・朝日新聞VS愛媛県・国家戦略特区・官邸という対立と憎しみの構図が見えてきました。新聞、テレビ報道は記録として残っていますので、検証するのは容易です。今後、加計学園問題が既得権を守るために獣医師会・文科省がマスコミと連携して情報操作した歴史的事件として分析・評価され、記録されることでしょう。


加戸氏は・・加計学園が獣医学部を新設するのは行政がゆがめられたのだと言う前川前文科事務次官を厳しく批判し、「歪められていた行政が正された」のだと7月10日の参院委で、詳しい経緯と共に明言したのですが、決定的に重大な加戸発言の中のこの核心部分もいや、決定的に重大であるからこそなのでしょうが、少なくとも朝日新聞にはひと言も載っていません(p123)

なぜ歪曲報道が連続するのか

朝日新聞には、これと同じような報道が、東日本大震災の時にもありました。震災時の東京電力福島第一原子力発電所で「吉田所長の待機命令を無視して社員が撤退した」と朝日新聞が報道した事例です。


現地取材により、当時の状況を把握していた門田隆将氏は、「これは朝日の歪曲だ」と指摘しましたが、門田氏は朝日新聞から抗議文を送りつけられています。(今回も朝日新聞は同じように「徹底検証『森友・加計事件』」を出版した小川栄太郎氏と飛鳥新社に対し5千万円の損害賠償などを求める訴訟を起こしています。この本も訴えられるのでしょうか?)


ところが「吉田調書」を新聞各社が入手し読んでみると、朝日新聞が歪曲していたことが明らかとなり、社長が辞任することになったのはご記憶のとおりです。朝日新聞には構造的に報道機関として問題があるようです。長谷川さん、良い本をありがとうございました。


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この本で私が共感した名言

・朝日の推量、立論を支える根拠となっているのが・・2017年5月17日付の朝刊で大々的に報じた文科省の内部文書、つまり「官邸の最高レベルが言っている」と「総理のご意向だと聞いている」がそれぞれ含まれている・・(p26)


・朝日新聞などによる、長期にわたる安倍「加計」疑惑の報道で加計学園の関係学校の志望者が減って加計学園が潰れる可能性がなきにしもあらず・・印象操作のような報道が延々と続いてきたことで、在校生も周りから馬鹿にされ、非常に苦しんでいる(p94)


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【私の評価】★★★★★(90点)


目次

第一部 「文科省内部文書」による空中楼閣」に嵌まった朝日新聞
第二部 獣医師界と癒着した官庁行政の欠陥を黙殺した朝日新聞
補遺 「流言飛語」と「報道しない自由」を謳歌する朝日新聞



著者経歴

長谷川熙 (はせがわ ひろし)・・・1933年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学専攻卒。1961年に朝日新聞社入社。静岡、新潟の両支局を経て、1988年初めまで経済部で取材、執筆し、次いで、創刊の週刊誌「AERA」に異動。1993年に定年退社したが、その後もフリーの社外筆者などとして「AERA」で取材、執筆を2014年8月まで続ける。2014年8月5日の居直り的な慰安婦報道釈明記事を見て、朝日との訣別を決意。4


加計学園問題関係書籍

「偽りの報道 冤罪「モリ・カケ」事件と朝日新聞」長谷川熙
「宣戦布告: 朝日新聞との闘い」」小川 榮太郎、足立 康史
「大手新聞・テレビが報道できない「官僚」の真実」高橋 洋一


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