「無私の日本人」磯田 道史

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無私の日本人 (文春文庫)

【私の評価】★★★★☆(89点)


■無私の日本人として、
 1000両の町の基金を作った穀田屋十三郎、
 無欲の儒者である中根東里、
 京都で慈善を行った大田垣蓮月
 を紹介している一冊です。


 穀田屋十三郎は
 『殿、利息でござる!』で映画化され
 大ヒットしました。


 藩に金を貸して利息を取るというのは、
 当時の身分制度からすれば
 死をも覚悟した取り組みでした。


・江戸時代は、-徒党というものが、
 蛇のごとく嫌われた。
 お上の許しなく、三人以上がひそかにあつまり、
 ご政道について語れば、それは徒党であり、
 謀反同然の行為とみなされる(p33)


■驚くのは、江戸時代の身分制度と
 武士の役人根性の面白さです。


 事務作業が遅い。
 面倒くさい仕事は他に振る。
 例外の仕事はさらに時間がかかる。
 今も昔も役人は変わらないのです。


 三人以上で密談してはならない。
 上位者に逆らってはならない。
 武士は借金を返さなことがある。
 どこかの共産国家のようですね。


・江戸という社会は、日本史上に
 存在したほかのいかなる社会とも違い、
 身分相応の意識でもって保たれていた。
 身分というものがあり、
 人がその身分に応じた行動をとる約束事で
 成り立っていた社会である・・
 武士が見事に腹を切るのも、
 庄屋が身を捨てて村人を守るのも、
 この身分相応の原理に従ったもの・・(p93)


■衆知を集めるという意味では
 江戸の身分制度は堅苦しい
 時代だと感じました。


 その影響が現代にもあるように感じました。
 人は変わらないのです。


 磯田 さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・伊達家の重臣は、ちょうど御大名が
 江戸と国元を往復するように、
 仙台城下と城館のあいだを参勤交代している。
 まったく奇妙な光景といっていい(p16)


・東北の農民には、上の者が決めたことに
 黙々と従う風がある。列島のなかで、
 この文化を共有しているのは、
 薩摩や肥後など南九州であろう。
 東北農村には上位者に対するある種の従順さがあり、
 頭領に一族郎党がしたがう(p129)


・どこでも蔵元は、年利1割で資金を調達し、
 それを武家に年利二割近くで貸している。
 利ザヤが一割近くあるのだから、
 濡れ手に粟の商売にみえるが・・
 武家はすぐに借金を踏み倒す。
 お武家からは借金のかたをとるのが難しい・・
 藩の蔵役人たちに日ごろから、つてをつけて、
 便宜をはかってもらい、武士の屋敷に
 年貢米が運びこまれる前に、
 差し押さえられるものたちだけが、
 武家相手の金貸しができた(p31)


・仙台藩では庄屋・名主のことを
 「肝煎(きもいり)」という。
 大肝煎は百姓のなかでは、
 お上に最も近い立場である。
 お上の手先といえば、
 そういえなくもない(p39)


・蔵元は大名の銀行であり、
 金貸しが本業だが、
 大名の資金運用もしていた。
 伊達家はこの大文字屋を使って
 金を動かしている(p29)


・天保銭・・これは一枚で、
 百文(いまの五千円)に通用する
 恐るべき銭であり、
 この天保銭を「私鋳」することで、
 幕末、諸藩は大いに儲けた(p59)


・江戸時代の日本人の、公共心は、
 世代をタテにつらぬく責任感に支えられていた。
 (そんなことをしては、
 ご先祖様にあわせる顔がない。
 きちんとしなければ、子や孫に申し訳ない)
 という感情であり・・(p96)


・家意識とは、家の永続、子々孫々の繁栄こそ
 最高の価値と考える一種の宗教である。
 この宗教は「仏」と称して「仏」ではなく
 祖先をまつる先祖教であり、同時に、
 子孫教でもあった。子孫が絶え、
 先祖の墓が無縁仏となることを
 極端に恐れた(p97)


・江戸時代、庶民は識字率は高いといっても、
 男女の半数以上は字が読めなかった。
 そこで、法律や政治においては、
 読み聞かせが大きな意味をもった。
 江戸のはじめは、とくに、そうであり、
 庄屋などが村人を一堂にあつめ、
 法令を読み聞かせることで
 領主の支配は末端まで届いた(p106)


・江戸時代は「地所を持つ」というただ一つのことが
 発言力をきめている社会であり、
 地所のない者は「一軒前」にあつかわれず、
 寄合にもよばれなかった・・(p88)


・お大名というものは、一見、金に
 困っているようにみえても
 本当は困ってはいない・・
 お大名にとって一番こわいのは、
 ご公儀(幕府)から急の御役目を命じられたときに、
 金を調達する手立てがなくなり、
 勤めが果たせなくなることです(p35)


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■目次

穀田屋十三郎
中根東里
大田垣蓮月



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