「グリーンファーザーの青春譜―ファントムと呼ばれた士(サムライ)たち」杉山龍丸

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グリーンファーザーの青春譜 ―― ファントムと呼ばれた士(サムライ)たち

【私の評価】★★★★☆(84点)


■著者の杉山 龍丸(たつまる)とは
 何者なのか。


 父は、作家の杉山泰道(ペンネーム夢野久作)。
 祖父は、明治の大アジア主義者で
 政財界の黒幕といわれた杉山茂丸。


 著者は、若くして祖父、父を亡くし、
 家族を支えるため陸軍士官学校から
 航空技術将校となり満洲に赴任。


 太平洋戦争ではフィリピンに転進し、
 破損した戦闘機を整備、修理して
 「幻の戦闘機隊」と米軍から怖れられる。


 この本は、フィリピンでの整備日誌から
 戦場の現実を再現する一冊と
 なっています。


・当時の陸軍は航空部隊の作戦を行うにあたって、
 このような部品や器具・工具・機械等の問題は
 全く考慮しない。そこには日本陸軍では
 「技術・整備の現場を知らない上層部が
 現場を軽視するという問題」があり、
 私はこれが大きな欠陥であると考えていた(p23)


■著者は、陸軍士官学校時代、
 戦争を中止させるために、
 祖父のつてで近衛文麿公、頭山満翁、
 広田弘毅と面談し、
 戦争中止の説得を試みたという。


 恐るべき行動力と見識ですが、
 日本は行くところまで行かねば
 戦争を中止することはできないと
 悟ったらしい。


 さらに、整備将校として奮闘する中で、
 司令部や現地参謀の指示は支離滅裂で
 苦労することになりました。


 日本陸海軍の高級将校は実戦経験がなく、
 近代戦や武器・装備についての素養も乏しく
 欠陥のある人が多かったと嘆いています。


・航空軍の参謀といわれる人も近代戦における
 航空機の素養が全くなくて、大正、昭和初期の
 大陸軍、大陸での地上戦のみの知識と経験した
 持ち合わせがないのみか、これらの人々は
 実戦の経験が全くない。文筆やおもねることを
 主眼とした出世主義の人々のみであることを
 証明する応答となった(p112)


■著者は戦後、
 「アジアのために金を使え」
 という親の遺言に従い、
 インドの緑化事業に生涯を捧げました。


 こんな人がいたのだな・・
 と驚きました。


 杉山さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・飛行場大隊長には軍人としていかがわしい
 考えの人や特異な性格の人が多かった。
 精鋭なる日本陸軍の将兵と言いたいところであるが、
 将校、特に中級の将校の数が大幅に増大していった
 弊害として、多くの問題がある人々が
 将校の地位にあったことも事実である(p93)


・飛行団長以上の指揮官、司令部は、
 米国に原子爆弾ができたことを知って以来、
 私の顔を見ると「杉山ぁー、玉砕だっ!」
 と言いつつ、酒を呑んでいる(p314)


・日本の官僚機構と体制はABCD包囲網を
 突破するために、とにもかくにも南の
 ボルネオ、ジャワ、スマトラ等の石油、
 油井を確保すれば何とかなると思って、
 何等の成算もなしに南方に進出した。
 石油は確保しても、それによって
 日本そのものの活路を見出す対策も
 何もできていない状況でありながら、
 シンガポールを陥落させた戦勝の勢いで
 英国からの和平の申し出を
 蹴ってしまったのである(p88)


・マニラの軍司令部は形式的に「比島決戦」と
 叫んではいるが、事実上、決戦の態勢は
 何もしていなかったというのが現場にいた
 私の実感である・・日本の陸海軍は、
 植民地軍や満洲その他の匪賊、馬賊、
 軍閥の私兵に勝つことはできても、
 本格的な戦争、戦闘に勝つ要素も
 態勢も全くできていない。
 これが現状であった(p101)


・私には気になっていることがあった。
 それは秘密通信の乱数表を入れた軍用行李のこと・・
 非常の場合すなわち米潜水艦に攻撃されて、
 この扶桑丸が沈没する時に軍用行李が
 この船と共に沈んでしまうように鉄片の重しをつけて、
 さらにこの扶桑丸に固定してしまうことを行え」
 と命令した。しかし、この二人の下士官は
 「たとえ部隊の指揮官がいかなる命令を出しても
 『この軍用行李を生命をかけて守れ』と
 命令されている以上、軍用行李と共に
 死ぬ覚悟であって・・といって私の命令に
 従うことを拒否した(p52)


・過去の成功体験に溺れ、日進月歩の技術革新に遅れ、
 過去のことに固執する人々は、極めて頑固であり、
 自由な発想方法を持たぬばかりでなく、
 部下にも自由な発想を持たないことがよいと
 考えていると思われる場合が多いからである・・
 大本営以下司令部の人々が近代戦における部隊運用、
 兵器の進歩、作戦連絡などの研究を怠り、
 それが特に情報判断、戦力判断等の運用面において、
 大きな欠陥となっていたように思われる(p236)


・戦争は膨大な資源と資材を浪費して、
 暴力の限りを尽くし破壊を行なう行為である・・
 愚かといっても、これくらい愚かなものはない。
 しかし、人間の運命はその愚かさの中にある(p182)


・新型の隼戦闘機が欲しい。是非、何とか手に入れたい。
 そのために師団司令部に行って補給参謀に頼むのであるが、
 「『戦力0』のところに補給を優先させる訳にゆかぬ。
 戦闘できる部隊へ優先的に補給する」という・・ 
 そこで私は決心した。クラークフィールドの補給廠、
 修理廠には大破、中破の隼戦闘機が何機もあった・・
 この大破、中破の飛行機をもらうことにした・・
 修理して使うことにした(p205)


・日本の飛行機は当時、各シリンダーに点火する
 点火栓へ行く高圧電線の被膜にゴムが使ってある
 発動機だった。米軍の被覆材は合成樹脂
 (プラスチック)で電気の絶縁が
 完全であるのに対して、日本軍のゴム被覆は
 温度と振動で早く劣化して亀裂を生じ、
 そこに雨水や水分が進入して絶縁を悪くする(p247)


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■目次

第1章 「幻の戦闘機隊」の誕生
第2章 フィリピンへの派遣
第3章 地獄の海上輸送作戦
第4章 飛行第三十一戦隊の作戦準備
第5章 特攻隊攻撃
第6章 戦隊全滅と再建
第7章 レイテ総攻撃戦
第8章 飛行第三十一戦隊終焉への戦い



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