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「「米中経済戦争」の内実を読み解く」津上 俊哉

2017/10/23公開 更新
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「米中経済戦争」の内実を読み解く (PHP新書)


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

■中国経済評論家が教える
 中国経済の状況です。


 中国の不動産バブルが破裂する、
 国営企業が破綻するという
 報道もあります。


 確かに中国では債務の増加に伴い
 不良債権が増えていますが、
 日本のように国家財政出動で
 景気を維持している状況です。


 したがって、日本のように、
 成長率が徐々に下がっていくのではないか
 というのが著者の見立てです。


・政府債務が累増する日本のグラフとは対照的に中国で債務が集中しているのは中央政府よりも脆弱な企業セクターだ・・国有企業や地方政府の直系子会社が多数含まれている(p153)


■注目すべきは中国共産党の
 権力争いの影響です。


 どれだけ習近平が権力を掌握したかで、
 経済政策にも影響が出るらしい。


 権力がなければ、金利を上げる、
 公共投資を削減するという
 引き締め策を実施できないのです。


 中国共産党の内情はわからないので、
 予想することになります。


・習近平は2016年秋から厳しい引き締めを始めた。「それくらい状況が悪い」せいかもしれないが、過去の例から考えると、安定成長派の不安・不満を押さえ込める自信がなければできないことだ。この引き締めのせいで、2017年後半には恐らく景気が失速する(p54)


■中国にはいろいろな勢力があって、
 それらの権力闘争の結果によって
 方針が大きく変わることが
 わかりました。


 対外的に領土拡張を進めたい勢力もあれば、
 中国共産党を守ろうという勢力もあれば、
 国際的な経済発展を目指すグループもある。


 中国では騙すよりも、
 騙された人が悪いらしいので、
 騙されないようにしたいものです。


 津上さん
 良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・国有企業のくせに、元本はおろか金利すら払えないという情けない会社が急増している・・業種別に見たときに、PER(株価収益率)が一桁しかない業種は銀行しかない・・不良債権の増加のせいで、正味の自己資本はもうそれほど残っていないはず(p143)


・何が起きているのだろうか。「資本流出」と言っても、実体は中国人が元建て資産をドル建て資産に持ち替える。外貨建て負債を弁済して元建て負債に持ち替えるといった動きが中心であり、それに伴って為替市場で元が売られる過程で、政府が為替市場に元買い・外貨売りの介入をした。この結果、政府の外貨準備は大きく減ったが、その傍らで民間が保有する外貨資産が増えた(p199)


・不動産バブル崩壊よりもっと心配すべきことは、2015年8月に起きたように、元安が周辺の東南アジア諸国、経済関係が密接な台湾や韓国、さらには新興国や資源国など他の国に為替を引きずるように通貨安の連鎖を引き起こすことだ・・それらの国の中には、中国と異なり、国際収支が赤字で海外から借金をして経済が回っている国がある・・通貨安に見舞われれば、借金償還の負担が急増して経済が破綻する国も出てくる(p201)


・2016年10月人民元が晴れて五番目の主要通貨としてSDRバスケットに加えられた後は、中国から資金を外に移動させるための行政許認可手続きが強化された。昨今は外資が利益配当を本国に送金するにも煩瑣(はんさ)な手続きを求められ、なかなか送金できないという苦情が聞かれる(p204)


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【私の評価】★★★★☆(84点)


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目次

第1章 習近平の政権力学
第2章 第一九回中国共産党大会―習近平政権の天王山
第3章 トランプの対中政策―「米中貿易戦争」の内実
第4章 習近平の対トランプ政策―首脳会談での「踏み込んだ」発言?
第5章 北朝鮮問題―中国による「レジーム・チェンジ」の可能性
第6章 中国バブルは崩壊するのか―九〇年代日本に似てきた中国経済
第7章 中国経済の今後―グッドニュースとバッドニュース
第8章 人民元と資本流出
第9章 戦略的な日中関係のために


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