「誰がこの国を壊すのか」森達也、上杉隆

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誰がこの国を壊すのか

【私の評価】★★★☆☆(77点)


■元衆議院議員公設秘書、
 元ニューヨーク・タイムズ記者の
 上杉さん。


 元テレビ制作会社社員で、
 オウム真理教のドキュメンタリー
 映画を作った森さんの対談です。


 上杉さんの主張は、
 談合組織である記者クラブの廃止と、
 署名記事の拡大です。


 横並びを尊重する記者クラブは、
 真実を伝えるという
 ジャーナリズムとは
 相容れないということです。


・日本にはNHKとか朝日新聞とか立派な
 メディアはある。だけど、真実を伝えようとする
 ジャーナリズムはそれらのメディアの中にはない。
 今回の原発報道を見れば、それは明らかでしょう?
 出世に響くとか飛ばされるとかいう理由で
 真実を伝えようとしない(上杉)(p68)


■森さんの主張は、
 司法制度の歪みへの怖れです。


 起訴されれば、99%有罪にとなる司法。
 容疑者段階で犯罪者扱いされる報道。
 状況証拠で死刑になる司法も怖い。


 そのような司法制度ですから、
 仮に覚えのない痴漢に間違われたら、
 逮捕を避けるために連絡先を伝えて、
 その場を立ち去るのがいいらしい。


 推定有罪の世界は、
 怖いものがあります。


・推定無罪原則を厳守するならば、
 容疑段階では容疑者も被害者も
 匿名になるはずです。
 実際にそうした報道を実践している国は多い。
 韓国も実はそうです・・
 北欧なども匿名報道です(森)(p192)


■人間関係の濃密な日本は、
 住みやすい安全な国ですが、
 忖度・談合する社会でもあります。


 そうした社会であっても、
 より事実に近づきたいという
 二人の気持ちが伝わりました。


 上杉さんはニューヨーク・タイムズでの
 経験が大きいように感じました。


 上杉さん、森さん
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・アメリカのメディアが厳しいのは、
 ミスは100回してもいい。
 ただし一回でも嘘をついたら所属する会社を
 解雇されるだけじゃなくて、
 メディア全体から追放になることです・・
 日本の場合は逆です。記者クラブ制度の下では・・
 嘘をついてそれがばれなければ出世する(上杉)(p42)


・アメリカの新聞は、客観報道は完全に放棄している。
 その代わりに署名原稿です・・
 しょせん記事は主観である・・
 主観であるがゆえに、記事というのは
 何について書かれてあるかと同時に、
 誰によって書かれたかが
 非常に重要である(上杉)(p60)


・TBSのワイドショーが坂本堤弁護士の
 インタビュー映像をオンエア前にオウムの
 幹部たちに見せたことで、結果的には
 一家の殺害に繋がったということが
 明らかになった。
 しかもTBSはこの事実を伏せていた・・
 叩きながら各局は、
 「ウチもやばい」と・・(森)(p105)


・プロパブリカなどにはサンドラー財団や
 フォード財団をはじめ、有力財団や資産家から
 年間1000万ドルの寄付が集まる。
 それで一切広告を取らない。
 スポンサーに縛られない自由な報道が
 できる条件を担保している(上杉)(p126)


・原発事故に関しても同じ。
 自己検証、自己批判がまるでない・・
 日本は「誰かの責任ではなくみんなの責任だ。
 だから許してね」で済んできた社会なのです・・
 (上杉)(p131)


・ニュースのエンターティメント化については、
 もちろん功と罪の両方があります。
 でも番組立ち上げ時のディレクターたちを
 何人か知っていますが・・
 「俺たちが日本の報道をダメにした」との
 言葉を何度か聞いたことがあります。
 確かにテレビ・ジャーナリズムを視聴率という
 市場原理と結びつけた番組の嚆矢(こうし)は、
 「ニュースステーション」(森)(p26)


・堀江さんはまず「ご迷惑をおかけしました」
 と謝るわけです。それから208億円を弁済したことを
 説明した・・「バンキシャ!」の記者ですけど、
 「謝らないんですか」と訊くわけです。
 堀江さんは、いやさっき謝りましたけど・・
 もう一回謝った。その部分は「バンキシャ!」
 放送時では使われない。・・そして
 放送時にスタジオで粕谷賢之解説委員が、
 「まだ一言も謝っていない」と断罪する(上杉)(p181)


・田中眞紀子さんに関する一連の報道・・
 彼女に関するいろいろなエピソードを話すと、
 局の担当者がうなずきながら聞いてくれるのです。
 「そうですよねえ、本当にひどいですよねえ、
 ウチもドタキャンされて」みたいな感じで。
 そして、ついでのように「田中眞紀子さんには
 いいところはないんですか?」というような
 ことを聞いてくる。こちらは
 「まあ、突破力とか、既成概念にとらわれない
 とかはいいんじゃないですか」
 とか答えるわけです。すると、
 放送ではその部分だけが使われる・・
 テレビには生放送しか出ないと
 決めたことさえありました(上杉)(p35)


・確かに橋下さんが指摘するように市の清掃局・
 交通局で解放同盟の職員が一般企業の1.5倍の
 給与をもらっていて、それが公務員給与全体、
 ひいては大阪市財政を圧迫しているのは
 一部本当にあるかもしれません・・
 いきなり入れ墨を持ち出すという彼一流の
 やり方に僕は首肯できない(上杉)(p188)


・和歌山カレー事件・・
 物証はない、本人も否定している、
 ただ状況証拠を集めただけでの事案で
 死刑が確定することなど、
 かつてではあり得ないことです。
 木嶋佳苗裁判も同様です(森)(p174)


・松本サリン事件のときに、本当は被害者であった
 河野義行さんが重要参考人として取り調べを受け、
 マスコミがあたかも河野さんを犯人であるがごとく
 報道したことがありました・・(森)
 厚生省の村木厚子元局長の冤罪事件に関しては、
 マスコミは村木さんに謝罪していません・・
 衆議院議員の牧義夫氏に関する朝日新聞の誤報問題。
 あれも裁判でも負けているにもかかわらず、
 朝日新聞は謝罪していません(上杉)(p191)


・現状の刑事司法の問題点は、
 それこそ取り調べの可視化問題であったり、
 起訴後の有罪率99.9%という
 ありえない数字であったり・・
 司法の民意に迎合する傾向が
 加速度的に大きくなっている(森)(p172)


・本来であれば容疑者の有罪・無罪を
 決定するのは裁判所の仕事です。
 ところが今は警察が容疑者を発表した途端に、
 ぱーっと写真が出て・・
 警察という行政機関に判決が
 委ねられてしまっている(上杉)(p179)


・政治部出身者がNHK経営中枢を
 独占していることは問題です。
 政治部記者が何人いるかというと
 50数人で、全職員1万3000人のうちの
 0.6%にすぎない。その0.6%で
 経営の8割を占めてしまうというのは、
 おかしいのではないか(上杉)(p145)


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■目次

第1章 オウム事件―メディアと社会の分水嶺
第2章 メディアは社会の合わせ鏡である
第3章 客観中立報道はあり得ない
第4章 メディア論とジャーナリズム論を峻別すべし
第5章 メディアは市場原理でしか動かない
第6章 国家権力の監視こそメディアのレゾンデートル
第7章 上杉隆=メディア論
第8章 未だリテラシーを語る段階にあらず



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