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「ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年」大澤 武男

2017/08/13公開 更新
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ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)


【私の評価】★★☆☆☆(67点)


要約と感想レビュー

ユダヤ人の歴史についてまとめた一冊です。流浪の民であるユダヤ人は、ヨーロッパで迫害されていました。なぜかといえば、キリスト教は利息を伴う貸金を禁じていますが、ユダヤ教徒はそれに制約されず金貸し業ができたため、ユダヤ人は多くの財産を持っていたからです。戦争があれば、王侯貴族が売りに出した貴金属品や美術品をユダヤ人が買い取り、大もうけすることになり、また兵隊たちの略奪品の買い取りさえやってのけたので、「戦争のどさくさを利用して漁夫の利をむさぼるけしからんユダヤ人」と糾弾されることになっていったのです。


ユダヤ人は少数派の異教徒であり、非武装集団であるため、常に皇帝などの支配者の保護を求めていました。代わりに支配者はユダヤ人に税を課し、搾取の対象にしていました。それでもユダヤ人は迫害を受けています。例えば、マルティン・ルターは、シナゴーグの破壊や放火、ユダヤ人の財産や住居の没収、ユダヤ教の聖典の没収、破壊、焼却、収容所への強制移住、強制労働の強要などを勧告しています。ウィーン会議では、ユダヤ人の既得権としての市民権の保障を放棄してしまっています。19世紀の中頃までユダヤ人は、結婚の制限や商取引の規制など差別されていたのです。結果的に、非武装のユダヤ人は、ナチスに何百万人と殺されたのです。


ユダヤ人の特徴は、対話や議論、自己主張を前提とする教育の伝統を持っているということです。そして知恵や情報が金になることを知っているのがユダヤ人なのです。通信社ロイター(現トムソン・ロイター)を設立したのはドイツに生まれたユダヤ人パウル・ユーリウス・ロイターですし、ドイツを代表する世界的日刊紙「フランクフrター・アルゲマイネ」の創刊者L・ゾンネマンもユダヤ人なのです。労働に価値を見出し、自分の意見や主張をはっきりと提示して論争することを躊躇する日本人とは、極めて対照的であるのでしょう。


現在のユダヤ国家であるイスラエルは、強固な軍事力により独立を維持しています。攻撃に対しては必ず反撃で応答し、しかも、やられた以上に敵を叩くといいうのは、無抵抗のまま殺害されていった600万人のユダヤ人への反省が込められているというのです。日本人もイスラエルに学ぶ必要があるのかもしれません。大澤さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・神のことば、律法を子らに教え込み、伝えるということは、すべてのユダヤ人の義務であり、それゆえ「学ぶ」ということは、古代からユダヤの民の日々の生活の一部となっていた(p19)


・「よい、優秀な生徒とは、すぐれた質問や疑問を持ち出し、教師を利口にする子供である」とフリーマンが述べているように、ユダヤ的教育の核心には、ミシュナーやタルムードを学ぶ時の批判的、反論の精神が前提とされており、「自ら考える力」を養成することがしっかりと目標に掲げられている(p39)


・イスラエルのユダヤ人家庭の平均子女数は2.7名というから、日本やドイツの倍以上である。ユダヤ人家庭での三人子はごく普通なのだ(p161)


・安息日を迎えた夕食の歓談は、なんと三時間以上にも及んだ。実に議論好きな人々であり意見の主張、交換はとめどなく続き、いつ終わるともなかった(p172)


ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年 (ちくま新書)
大澤 武男
筑摩書房
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【私の評価】★★☆☆☆(67点)


目次

第1章 ユダヤ民族存続のカギは教育であった
第2章 都市の民―知恵と商才
第3章 すさまじい進出、あふれる業績
第4章 ユダヤ的教育、教養の伝統と日本
第5章 生き残ることへの情熱



著者経歴

大澤武男(おおさわ たけお)・・・1942年埼玉県本庄市生まれ。上智大学文学部史学科卒、同大学院修士。ドイツ政府給費留学生、ヴェルツブルク大学より博士号を受ける。専攻はドイツ・ユダヤ人史、古代教会史


ユダヤ関連書籍

「ユダヤ商法」マーヴィン・トケイヤー
「ユダヤ人の教養:グローバリズム教育の三千年」大澤 武男
「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」石角 完爾


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