「不発弾」相場英雄

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不発弾

【私の評価】★★★★☆(83点)


■主人公が働く証券会社は、
 大蔵省の総量規制によるバブル崩壊と
 営業特金の解約を促す通達により
 営業特金で大きな損失を出します。


 営業特金では、通常、口頭で
 利回り保証がされており、
 証券会社は一部の顧客には
 損失補てんしました。


 その他の一部企業は、
 海外への損失を飛ばしました。


 主人公は損失の飛ばしを紹介する
 金融コンサルタントとして
 独立することとなったのです。


・営業特金とは、正式名称「特定金銭信託」・・
 投資する銘柄と株数、価格や売買の
 タイミングを一任するのが特徴だ・・
 証券会社と顧客企業との間で暗黙の
 「にぎり」があることだ。
 例えば、100億円の資金を年六%で
 運用すると口約束を交わすのだ(p152)


■損失の処理方法では2つ紹介されており、
 一つ目はデリバティブを用いた
 仕組債による海外への飛ばしです。


 仕組債は、ある条件を満たせば
 利益が出ますが、
 条件が満たせなければ、
 損失が出るギャンブルのようなものです。


 ギャンブルですから、利益が出る可能性は、
 その利益の大きさに反比例して
 小さくなっていきます。


・日本の平均株価の先物、そして
 ロンドンの銀行間金利のオプション、
 その他いくつかの指標金利のオプションを
 組み合わせた仕組債です・・
 仕組債は一種の賭け事です・・
 35億円の損失を五年間も表面化させない。
 裏返せば、五年後は株価が昨年末並みの
 市場最高値レベルに戻っているだろう、
 そんな見通しを前提に仕組債は作られています(p192)


■二つ目は、海外の企業のM&Aを行い、
 利益が出れば損失と相殺させ、
 損失が出ればこれまでの損失と合わせて
 目立たなく処理するという方法です。


 オリンパスの海外M&A,
 東芝のウエスチングハウス買収と
 日本郵政のトール・ホールディングス買収が
 同じ構図に見えてきますね。


 この本では東芝のパソコン事業での
 粉飾決算だけでなく、
 原子力部門の損失隠蔽を予想しています。


・パソコンや家電の不振を隠していた1500億円分に加え、
 三田電機は原発事業の減損2000億円を後に計上したが。
 だが、実態は世間に発表した分よりも1000億円多い、
 つまり本当の減損は3000億円だったのだ。
 この1000億円分を海外企業のM&Aに見せかけて
 隠すよう助言したのが・・(p365)


■損失を海外に飛ばすアドバイスしている
 主人公の金融コンサルタントを
 犯罪者として描いているのに
 違和感を持ちました。


 損失を飛ばす判断をしているのは、
 企業の経営者であって、
 コンサルタントはアドバイスだけのはず。


 法治国家では、
 法律の定める範囲で
 商売しても良いはずなのですが、
 日本では許されない場合もあるのですね。


 相場さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・平均株価が短期間で9000円以上も下げた。
 大蔵省だって局長通達のインパクトが
 強すぎたことを後悔している・・・(p183)


・大手は、解約に応じない客、あるいは損失計上して
 本業の決算に多大な影響が出るような客には、
 事実上補填を行うそうじゃないか(p184)


・日本に時価会計が導入され、運用損を
 一気に開示せよと大蔵省が言い出したらどうなるか・・
 稼げるときに稼いでしまおうというのが本音だろう。
 外資系金融機関は、日本に時価会計が導入されて
 おらず、その間隙を突いた商品を売り出すことに
 なんの後ろめたさも感じていない(p209)


・海外の新興企業を成長の見込み大として買収、
 あるいは出資する形で金を出す。
 数年後、見込みが外れたことを李勇に
 特損を計上し、以前からシコっていた
 損失の存在をうやむやにするのだ(p297)


・大手のクルマメーカーが系列のレンタカー会社に
 在庫を押し込む、あるいは
 下請けの部品会社に売り上げ協力をさせ、
 利益の調整を行っている(p343)


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