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「警察の犯罪―鹿児島県警・志布志事件」粟野 仁雄

2017/03/07公開 更新
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警察の犯罪―鹿児島県警・志布志事件


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

 2003年に鹿児島県の志布志町でおきた中山信一県議の選挙違反を、警察と検察が捏造した事件の記録です。過酷な取り調べにより自殺未遂者まで出て、最後は全員無罪となりました。「国家の罠」佐藤 優(著)で、国策捜査があることは知っていましたが、実際にあるのですね。


・比較的軽微な罪状の容疑にもかかわらず、身柄拘束日数は、在宅起訴の一人を除くと中山信一さんの395日、妻シゲ子さんの273日を筆頭に、平均でも177日という異常なものだった(p14)


 警察の手法は、次のとおりです。任意聴取でありながら、一日10時間以上取り調べ、100日以上拘留する。認めないと家族を逮捕すると脅す。認めないと罪が重くなると脅す。認めないと返さない。(本当)


 検察の手法は次のとおりです。都合の悪い調書は修正した後で捺印させるか、捺印後に余白に書き込む。被告から弁護士との接見内容を調書して、違法な弁護人活動を指摘して、国選弁護人を解任する。


 普通の人は、これで落ちるでしょう。実際に、卒倒した人、自殺未遂した人が出ました。


・長井健宜警部補は・・お前以外の人は全員認めているんだ」と言う。さらに「今のままだと泥沼に入っていくぞ。どんどん罪が重くなっていく。そうすれば釈放はされないし、面会も許されない(p92)


 アリバイが成立し、中山信一県議ほか関係者は無罪となりました。しかし、本当の黒幕はだれかわかっていません。


・幸いアリバイが成立した・・磯辺(一信 警部)らが多人数の買収会合にしてしまったことが失敗だった(p230)


 関係者の処分も稲葉一次県警本部長は文書注意、濱田隆広警部補は十分の一の減給、黒健治署長は本部長注意、磯辺一信警部と他課長が所属長訓戒、と非常に軽いものでした。気分が悪くなりました。粟野さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・濱田(隆広 警部補)の目付は豹変した・・ワイ(お前)が黙れ、ワイが悪いことして逮捕されたら、娘婿も仕事をやめかただよ(やめなければならない)」と脅した(p27)


・船迫()は「嘘を言っていれば四浦の人、みんな逮捕しますよ」・・「認めなければ親も子供も逮捕する」などと言い、肩を揺することまでした(p72)


・川崎清は「選挙違反は交通違反と同じだから罰金を払えばすぐに出られる」と、甘言を弄したかと思うと「認めなかったら逮捕する」と懐俊裕さんを脅した(p77)


・県警本部生活保安課から応援に来た押領司浩志という巡査部長に「焼酎と金をもろたどが。認めんと親も子も逮捕するぞ。死ねえ」などと厳しく調べ・・(p76)


・小櫻(誠 警部補)は「お前の名前が新聞に載れば家族がばらばらになるぞ」と脅した・・否認すると「嘘を言うな」と怒鳴り通しだった(p80)


・山下健一・・警部補は、なんと「お前が認めないからだんなが病気になったんだ。天罰だ」とまで言った(p105)


・小能(俊一 警部補)は・・「認めれば罰金で済む。交通違反と同じだ。認めなければ逮捕するぞ。認めれば天国、認めなければ地獄だ」(p108)


・堂免(国光 警部補)には「言わんか、こらあ」といって人差し指で胸を突かれたこともあった。「夜はシーンとして疲れたのか堂免は寝ている。そのくせこっちが寝ると怒る」(p150)


・福山準一副検事が判を押させようと、ちらりとだけ見せた調書は「迷惑をかけたので死んだほうがましだ」が「選挙違反をしたので死んでお詫びする」に変わっていた。中村(剛)の報告を上司の磯部(一信 警部)が改ざんしていた(p79)


・「息子、娘も逮捕する。社員もだ。お客さんにまで迷惑をかける。会社も潰れる」と脅した磯部(一信 警部)は、中山さんが否認すると怒り狂って「シゲ子は認めているぞ。県議がこれくらいのことがわからないのか。殺すぞ」とまで恫喝した(p120)


・自分が言ったことを(徳永早美)検事が読み上げた。それで下に拇印を押せというから押そうとしたら下に二、三行の空欄があったんです」。・・後に調書になったものにはそこが埋まっていた。拇印を押すときには書いていなことが書かれた・・(p159)


・徳永(早美)検察官は「証拠がないのであれば、やっていないと言っても負けだ」と・・(p160)


・警察・検察は、弁護人の懲戒を狙い、接見内容を被告から聞き出して調書することを組織的にやったのだ・・・弁護士の解任を狙い、逮捕者を裸同然の無防備状態にする捜査手法・・(p232)


・ある刑事から匿名の電話があった・・黒(健治)署長お得意の叩き割り(事実があるかないかわからないのを引っ張り出して叩く)が始まった。令状なしで引っ張り出して、四浦住民が純朴で法律をよく知らないのをよいことに、何日でも思いのままに責め上げる・・(p246)


警察の犯罪―鹿児島県警・志布志事件
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粟野 仁雄
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【私の評価】★★★★☆(84点)


目次

序章 誰もがウサギになる恐怖
第1章 「踏み字」
第2章 ターゲットを変える
第3章 自殺未遂に追い込まれた人たち
第4章 狙われた集落
第5章 本丸へ、狙いは議員資格剥奪
第6章 名を偽る女性刑事
第7章 一転否認 波乱の公判
第8章 警察とグルで事件をでっちあげた検察
第9章 無罪判決
第10章 仕掛け人は誰か
終章 他人事ではない志布志事件



著者経歴

 粟野仁雄(あわの まさお)・・・ジャーナリスト。1956年、兵庫県西宮市生まれ。大阪大学文学部西洋史学科卒業。ミノルタカメラを経て、1982年より共同通信記者、2001年退社。社会問題を中心に週刊誌、月刊誌に執筆中。神戸市在住


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