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「日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦」NHKスペシャル取材班

2016/07/30公開 更新
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日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが語った敗戦 (新潮文庫)


【私の評価】★★★☆☆(71点)


要約と感想レビュー

日本海軍士官のOBが海軍反省会を開催していたという。その会議のテープを基に、「なぜ、日米が戦争となってしまったのか」という疑問に答えます。海軍の作戦計画の中枢であった軍令部の元部員に対し、「なぜ開戦に至るような決断を下したのか」と質問したところ元軍令部員は「日米戦争になったら必ず負けると思っていた」「上官を説得するまではしなかったが」などと語っていたという。


そもそも海軍省は政府に属する行政機関であり、海軍の軍令部は政府から独立した天皇直属の統帥機関であり、海軍という組織の中にふたつの権力が併存していたことを問題視しています。


・なぜ、あんな風な戦争をやったんだ、二度とこういう戦争をやってはいけないというのが根本ですよね。アメリカのような、国力が日本と比べて大きく違う国とどうして戦争をしたんだろうという、普通に考えればやることのない戦争ですからね(p60)
 

海軍軍令部の本音は、対米戦に備えるという名目で軍備を拡張してきたので、今さら「戦争できない」とは言えないというものだったという。つまり、対米戦争のために準備してきた海軍は引くに引けない立場になってしまったのです。負けるとわかっているので戦争したくない。けれども、海軍が意気地がないとか何とか言われるようなことはしたくない。短期間ならなんとかなる。それで戦争になってしまったとは残念です。


また、陸軍との関係では、東條首相は開戦の決を決める時に、「海軍が反対すれはできませ」と言ったという。海軍が戦わなければ、アメリカと戦争できない。ところが、海軍の保科元中将によれば嶋田海軍大臣は、「もし自分が対米開戦に反対すれば、陸軍が内乱を起こす」と考えていたという。


特攻隊についても、大西中将が軍令部の総長、次長、部長、課長に対し、「今の日本の海軍航空隊の実力では敵を攻撃することはできないから、体当たりでもやるほかしようがない」と発言し、及川総長が「それはやむを得んだろうという。しかし、大西君のほうから命ずるような態度をとってはいかんぞ」と言ったという。


日本の軍隊は上意下達が徹底しており、補給なしで、食料など必要な物資の調達を現地で行うように指示し、結果的に現地住民の反日感情を生んだのは、すべて軍中枢部の戦闘計画によるものと総括してます。NHKさん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・海軍は所帯が小さいから、仲間意識が強くてね。良いところも多いのだけど、困ったことは、失敗しても皆でかばい合って責任がウヤムヤになりがちなんだよね・・(p5)


・野元元少将は、言葉を選びながら続けた・・人事のことについて、(皇族の)博恭王が九年間も軍令部総長をやっている。ああいうのはどうも妙な人事である。殿下がひとこと言われると、もうそれは"はい"と。(p74)


・孫の桂氏も、伏見宮元帥に対する祖父の言葉を覚えていた・・「宮様ということだけで、何も言えなくなってしまう。何も批判ができなくなってしまうということですね、一種のタブーみたいになってしまっていると。そのために、本当のことが分からなくなってしまうんだというようなことを申しておりました(p78)


・『現情勢下に於て帝国海軍の執るべき態度』という文章を作っております(略)。この文章につき、検討批判を加えていく必要があります。この文章は端的に言って、敵を知らず、己を知らず、世界を見ざる独り善がりの魔性の海軍と言うべきか、あるいは稚拙な欠陥論と言うべき代物であります(p90)


・この広大な戦域の作戦計画を立てていたのは、作戦課に属する、わずか十人ほどの参謀であった。「無理がある」というレベルをとうに超え、狂気さえ感じてしまう(p116)


・ガダルカナルの攻撃は毎日のように航空攻撃が行われておりましたけれど、これに対する搭乗員の救助の支度は全然ございません。・・ところがアメリカのほうは我が方に攻撃を仕掛けてきますとその時には必ず救援の支度があります。潜水艦がちゃんと待機している(p197)


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NHKスペシャル取材班
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【私の評価】★★★☆☆(71点)


目次

第1章 超一級資料との出会い
第2章 開戦 海軍あって国家なし
第3章 特攻 やましき沈黙
第4章 特攻 それぞれの戦後
第5章 戦犯裁判 第二の戦争



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