「原発ホワイトアウト」若杉 冽

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原発ホワイトアウト (講談社文庫)

【私の評価】★★★☆☆(80点)


■東大法学部卒の現役キャリア官僚による
 原発メルトダウンを主題にした小説です。


 共産党工作員による
 新潟での原発事故ストーリーは
 最後に少しだけ触れるだけ。


 その内容のほとんどは、電力業界に関わる
 官僚、政治家、電力会社の裏の構造の
 暴露話になっています。


(どこまでが正しいのか、
 私にもわからないところがあります)


・取引先のうち気心の知れた仲間の企業を
 「東栄会」という名前で組織化し、
 各社受注額の約四パーセント程度を
 東栄会に預託する・・
 関東電力の外部への発注額は年間で
 二兆円もあるので、約800億円が、
 形式的には受注会社が東栄会に預託したカネ、
 実質的に関東電力が自由に使えるカネ、
 となる(p63)


■国家戦略として原子力を進める政治家と、
 主導権を取ろうとする官僚、
 電力の安定供給を目指す電力会社が
 原子力開発を進めてきました。


 もちろんそこには金の話があり、
 組織としての主導権争いがあり、
 大組織の影響の行使もある。


 それぞれの組織が、
 それぞれの思惑の中で
 現状があるということなのでしょう。


・「電力システム改革はやりました」と
 保守党政権が胸を張りつつ、
 細かい穴がいくつもあって、
 実際には競争が進展しない状態、
 というのが現実の落とし所だろう・・
 譲れない一線は、あくまでも競争の
 フレームワークのさじ加減は
 官僚が決める、ということだ(p83)


■現在ある原子力をどう運転していくのか、
 地震、風雪害などの天災、テロへの対策を
 どれだけ準備するべきなのか、
 考えさせてくれる一冊でした。


 この本にあるような
 各関係者の思惑を理解しつつ、
 あるべき日本のエネルギー供給を
 考えていくことが、
 大事なのではないでしょうか。


 若杉さん、
 良い本をありがとうございました。


───────────────


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・電力会社による選挙応援の対象は
 保守党だけではない。
 民自党候補者は電力会社の労働組合が
 同じように支援し・・・
 どちら側が勝っても電力会社の恩が
 売れるようにしておくのだ(p21)


・これまで落選中だった元議員に当てがっていた
 私立大学の客員教授のポスト、
 非上場会社の顧問のポスト・・
 これらを適当にシャッフルしたうえで、
 再チャレンジの意思がある落選議員にのみ、
 くれてやるのだ(p49)


・現在の大衆は、原始人よりも
 粗野で愚かで短絡的だ・・
 太陽光や風力は、お天気次第、風まかせなのは
 明らかだし、安定した基幹電源とはなりえない。
 どうがんばったって、電気代は三倍になる(p78)


・法律上は県や市町村長の権限など、まったく
 明文化して規定されていないにもかかわらず、
 「地元の知事や市町村長の同意がないと
 原子力発電所の稼働はできない」という、
 事実上のルールが定着してしまっている(p112)


・原発立地県出身のコネ採用者の活用・・
 地域対策枠は全体の約一割の30名であるが、
 新崎県に原発を立地する構想が浮上した
 1960年代末から継続しているので、
 地域対策枠の総計は1000名を超え、
 新崎原発の関係者の子弟ということでも
 400名は超える計算になる(p120)


・日本電力連盟広報部の世に知られざる仕事内容は、
 マスコミの言動を監視することである。
 広報部は、部長、副部長以下六名の体制。
 勤務時間中はひたすら、新聞、雑誌、テレビを
 六名で手分けをしてチェックし、原子力発電や
 電力会社に対して批判的な言動をチェックする。
 問題があればプレッシャーをかける(p206)


・アメリカのNRCみたいに4000人も職員がいて、
 職員の流動性があって、職員が最新の知見を
 持っているっていうなら別ですよ。
 でも、原子力規制庁の審査員は80人、しかも
 ロートルだ。そんなアメリカみたいなことは
 無理ですよね(p267)


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若杉 冽
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【私の評価】★★★☆☆(80点)



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■目次

序 章 70メートル送電塔
第1章 選挙の裏側
第2章 記者会見
第3章 官邸前デモ
第4章 落選議員のカネ
第5章 再稼働の必然
第6章 記者失格
第7章 知事が嵌まった罠
第8章 商工族のドン
第9章 盗聴
第10章 暴走する新聞
第11章 検事総長と総理の密会
第12章 大スクープ
第13章 御用記者の群れ
第14章 官のためのエネルギー計画
第15章 デモ潰し
第16章 知事逮捕
第17章 再稼働の日
第18章 国家公務員法違反
終 章 原発ホワイトアウト



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