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「テレビの大罪」和田 秀樹

2013/09/28公開 更新
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テレビの大罪 (新潮新書)


【私の評価】★★★★☆(84点)


要約と感想レビュー

 非常に大きな影響力を持つテレビへの提言をまとめた一冊です。


 その大きな影響力を考えれば、テレビの報道姿勢が、国家や個人の運命さえ変える可能性があります。戦前は、新聞が戦争を煽りましたが、今、テレビは何を煽っているのでしょうか。


・死因統計によれば「神経性無食欲症」(拒食症)が原因と明記されている死者数が毎年100人前後も出ています・・・テレビでは誰もがウエストサイズを58㎝と偽装して、周囲もそれを嘘と知りながら「わあ、素晴らしいですね」と褒めそやす。(p15)


 この本で指摘する「テレビが煽っているもの」のは、細い女性礼賛 ⇒拒食症を生む。医療過誤を叩く⇒産婦人科が不足する。受験戦争否定 ⇒ゆとり教育が導入される。自殺報道⇒さらなる自殺の連鎖などです。


 例えば、医療事故を叩いて訴訟が続けば、訴訟リスクのある産婦人科をやろうとする人はいなくなってしまいます。こうした結果に、マスコミは大きな影響力を行使しています。マスコミはこうした結果に対し、どういった責任を取るのでしょうか。


・マスコミと警察が医療過誤を犯罪として徹底的に糾弾することによって、医療は萎縮し、産婦人科や小児科のように訴えられるリスクの大きな科の医療崩壊を招いているのです(p66)


 テレビというものは、視聴者を洗脳することによって、政治家を作ることもできれば、人を潰すこともできます。恐ろしい世界ですが、その恐ろしさを知ったうえで、報道することが求められているのでしょう。


 和田さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・ひとたび医療過誤が起きると、テレビは一大キャンペーンをはって医者を"殺人犯"としてコテンパンにたたきます。そして、それが大きな話題になると、今度は警察が動き出して業務上過失致死で医者に手錠をかけてしまうのです(p65)


・WHOなどが自殺報道にまつわるガイドラインを出しています。・・ここに掲げた9項目のうちひとつとして、日本のテレビが守っていることはありません。・・
 1 短期的に過剰な報道をすることを控える
 2 自殺の原因と結果を単純に説明するのを控える
 3 自殺報道は中立的に伝える。自殺をことさら美しいものとして扱ったり、悲劇性を強調しない
 4 自殺手段を詳細に伝えない
 5 実名報道を控える(特に青少年の場合)・・・(p165)


・不良礼賛をやめろ・・・「元不良でも今は弁護士だぜ」と、威張ってテレビに出てもらっては困る。被害者やその家族が彼らの顔を見たら、フラッシュバックを起こしてしまう可能性が高いからです(p90)


・テレビというメディアのもっとも罪深いところは、知的レベルの高い人たちが、自分たちより知的レベルの低い人たちをだまくらかして、社会を悪くしているということ(p110)


テレビの大罪 (新潮新書)
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和田 秀樹
新潮社
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【私の評価】★★★★☆(84点)



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目次

1 「ウエスト58cm幻想」の大罪
2 「正義」とは被害者と一緒に騒ぐことではない
3 「命を大切に」報道が医療を潰す
4 元ヤンキーに教育を語らせる愚
5 画面の中に「地方」は存在しない
6 自殺報道が自殺をつくる
7 高齢者は日本に存在しないという姿勢
8 テレビを精神分析する


著者経歴

 和田秀樹(わだ ひでき)・・・1960年大阪府生まれ、精神科医。東京大学医学部卒、東京大学付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学を専門とする


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