「アダム・スミス」堂目 卓生

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アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)

【私の評価】★★★★☆(87点)


■「視えざる手」で有名なアダム・スミス。


 私の知識は、高校の歴史レベルでした。


 しかし、読んでみて驚いた。


 アダム・スミスは、優れた観察者であり、
 哲学者であり、
 実務的な提案をしているのです。


・成功と昇進とは理解力があり豊富な知識をもった
 同等者たちの評価にではなく、無知高慢で自惚れが強い
 上位者たちの気まぐれでばかげた好意に依存するのだ。
 そこでは、へつらいと偽りがあり、あまりにもしばしば
 真の長所と能力に優る。上流社会では、
 喜ばせる能力の方が、仕事の能力よりも尊重される
(p97)


■当時のイギリスは、戦争を繰り返し、
 世界の覇権国として
 大きな力を持っていました。


 しかし、その代償として、
 多額の戦費のために
 多額の国債を発行。


 国家財政の破綻を回避するため
 アメリカという植民地へ
 課税することを考えます。


 それに反発したアメリカは、
 独立戦争を戦い、結果的に
 独立してしまうのです。


・十八世紀のイギリスにおいて、
 政府支出の約九割が軍事費と国債費であった。
 国債発行の目的は戦費調達であったのだから、
 政府支出のほとんどが軍事関連(p195)


■戦争を繰り返すことになった理由の一つは、
 近隣諸国への偏見でした。


 その偏見が、近隣諸国への
 憎しみを増大させる。


 その憎しみの結果、
 戦争が起きたというのです。


 最近のアジアの状態と
 似ているような気がします。


・スミスによれば、祖国に対する愛は、
 近隣諸国民に対する国民的偏見を生み、
 近隣諸国に対する嫉妬、猜疑、憎悪を増幅させる。
 その結果、自国民に対しては守られる正義の感覚が 
 他国民に対しては守られなくなる。(p128)


■そしてもう一つの戦争への道は、
 お金を富と錯覚してしまったためです。


 価値の交換の道具であるお金を
 人間は富であると錯覚している。


 そのために富を最大化するために、
 あらゆる悪をするように
 なってしまうということです。


 石油がある国や島を、
 自国の支配下におきたいと考える、
 現在の状況も同じように思えます。


・すべての商品の価格は、その商品一単位と交換される
 金や銀の重量で表示されるようになった。このことは、
 人びとの間に、貨幣を富と思いこむという錯覚(貨幣錯覚)
 を引き起こすことになった(p174)


■人間は、100年前から少ししか
 進歩していないのだな、と
 感じました。


 スミスさん、
 良い本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・スミスは、このように、基本的に胸中の公平な
 観察者の判断にしたがう人を賢人と呼び、
 つねに世間の評価を気にする人を弱い人と呼んだ(p53)


・「賢人」は、最低水準の富さえあれば、
 それ以上の富の増加は自分の幸福に
 何の影響ももたらさないと予想する(p83)


・席次は、人間生活における努力の半分の目標なのであり、
 そして、貪欲と野心がこの世に導入したすべての
 騒乱と同様、すべての強奪と不正の、原因
なのである(p91)


・虚偽、陰謀、結託、贈賄、暗殺などを企て・・・
 これらの企てに成功した者は、富と権力によって
 自分の過去の犯罪を隠蔽することができる。
 このようにして、富と地位への志願者たちによって、
 正義が侵犯される恐れがある(p99)


・政府による優遇・抑制政策がなければ、
 労働と資本は、社会にとって最も有利になるように、
 諸産業に配分されるであろう(p238)


・スミスにとって、市場は
 富を媒介にして見知らぬどうしが
 世話を交換する場であった(p272)


・人びとの感情を無視した急激な改革は挫折し、
 社会秩序を不安定にする危険性をもつ

 したがって、自然的自由の体系に向けた
 規制の緩和・撤廃は、人々の感情に配慮しながら
 「徐々に」進めなければならない(p241)


・私たちは、貿易を通じて、外国の人びとの言語、
 文化、習慣を理解し、その結果、国民的偏見を弱めることができる。
 『国富論』の原語タイトルは・・Wealth of Nationsと
 最後が複数形になっている。『国富論』は、一国民または
 特定の国民の豊かさではなく、
 諸国民の豊かさを探究する書物なのである(p274)


アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)
堂目 卓生
中央公論新社
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【私の評価】★★★★☆(87点)

■目次

序章 光と闇の時代
第1章 秩序を導く人間本性
第2章 繁栄を導く人間本性
第3章 国際秩序の可能性
第4章 『国富論』の概略
第5章 繁栄の一般原理(1)―分業
第6章 繁栄の一般原理(2)―資本蓄積
第7章 現実の歴史と重商主義の経済政策
第8章 今なすべきこと
終章 スミスの遺産


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