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「死因不明社会―Aiが拓く新しい医療」海堂 尊

2012/12/06公開 更新
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死因不明社会―Aiが拓く新しい医療 (ブルーバックス)


【私の評価】★★★☆☆(79点)


要約と感想レビュー

 日本における検死の問題を指摘した一冊です。私の日本の医療のイメージは、非常に進んだものと考えていましたが、死因の究明に限れば、お寒い状況のようです。


 日本における死因究明の問題点は次の2つ。
 1 解剖があまり行われない(死因究明が不十分
 2 監察医制度で死因究明しているのはたった五都市


・医師か解剖を毛嫌いする理由・・・
 (1)「解剖」は遺族の了承を取りにくい。・・
 (2)「解剖」は手間がかかる・・・
 (6)「解剖」には高額の費用がかかる・・・
 (7)「解剖」に対する費用拠出が行われていない・・(p50)


 「解剖」しなくても死因がわかる場合も多いと思います。それでも、名探偵コナンではありませんが、不審死が見逃されているケースも多いはず。著者が推奨するのは、「解剖」の替わりに、簡単、低コストの死亡時CT,MRIで死因を究明するということです。実際の医療現場では、蘇生継続中にCTやMRI撮影をしたという名目で実施されているようです。


・解剖は一体当たり25万円です。エーアイの一種、検死CTは一体あたり3万円だから、費用は約10分の一だね(p146)


 日本は殺人天国とも言われているそうです。なぜなら、死因究明が適当だから。著者の怒りは、CT,MRIが進歩してきたなかで、死因究明のシステムを変えようとしない厚生労働省の役人の不作為に向いています。不作為で被害の広がった薬害エイズのようにならないことを願います。


 海堂さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・「解剖」には高額の費用がかかる・・・病理学会の試算では一体25万円の経費がかかる・・・他の試算では一体50万円を算定している報告もある(p50)


・巨大な「死因究明センター」、東京都監察医務院・・・運営するのに必要とされる費用は年間10億円と言われている・・千葉県では、行政解剖に対する県予算は年間500万円(p86)


・2005年度の死者101万人のうち変死者数は約15万体(交通事故関係を除く)。司法解剖、行政解剖という変死者用の解剖で対応できたのは1万3570体。解剖が必須の死体に対してすら解剖率9%である(p35)


・死後映像撮影は、実に107施設(88%)で経験ありだった。面白いことに経験なしと答えた14施設のうち、2施設はわざわざCT終了まで蘇生継続と併記してきた。これこそ死亡時画像がシステムとして導入されていないから、現場でやりくりして撮像しているという証拠さ(p230)


・病理解剖  厚生労働省 強制力なし 費用拠出なし
 行政解剖1 地方自治体 強制力なし 費用拠出あり
 行政解剖2 地方自治体 強制力あり 費用拠出あり
(監察医制度)(限定五都市)
 司法解剖  警察庁   強制力あり 費用拠出あり(p69)



【私の評価】★★★☆☆(79点)


目次

そして誰も「解剖」されなくなった
現代日本の解剖事情
死体のゆくえ
解剖崩壊
医療事故調査委員会における厚生労働省の謀略
Aiは医療事故問題解決の処方箋となりうるのか?
Aiの病院死症例における威力
「死亡時医学検索」の再建のための処方箋「Ai」
犯罪監視システムとしてのAi
死をめぐる医療と司法の相克
Aiの医学的考察
「死因不明社会」の処方箋と明るい未来



著者経歴

 海堂 尊(かいどう たける)・・・1961(昭和36)年、千葉県生れ。医学博士。外科医、病理医を経て、現在は重粒子医科学センター・Ai情報研究推進室室長。2005(平成17)年、『チーム・バチスタの栄光』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌年、作家デビュー。2008年、『死因不明社会』で、科学ジャーナリスト賞受賞


検視解剖の課題関連書籍

「死因不明社会―Aiが拓く新しい医療」海堂 尊
新版 焼かれる前に語れ 日本人の死因の不都合な事実」岩瀬 博太郎
監察医が泣いた死体の再鑑定:2度は殺させない」上野 正彦


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