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「男子の本懐」城山 三郎

2011/08/25公開 更新
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男子の本懐 (新潮文庫)


【私の評価】★★☆☆☆(68点)


要約と感想レビュー

 歴史を見てみると、第一次世界大戦後の不況後に関東大震災が発生。その復興財源やモラトリアムなどで経済は混乱します。


 そして円の解禁と世界恐慌で、一気に経済は縮小。大量の失業者と、予算を削減された軍部の不満が蓄積されていきました。その後、日本は戦争へ向かっていきます。


・予算編成の度に、大幅削減を強いられるのは、陸海軍省予算である。・・・「軍部予算は、まるで削られるために在るみたいではないか。国防はどうなってもいい、というのか」こうした憤慨を、軍部が持つのも、自然の勢いであった(p147)


 この本では、「金本位制復帰」を実施したライオン宰相浜口雄幸と日銀のプリンス井上準之助の生涯を追っていきます。


 「金本位制復帰」は、金との固定相場のようなもので、当時入超の日本では、強烈なデフレ政策でした。給料が減り、物価が下り、大量の失業者と政府予算の大幅削減などで、経済は大不況となるのです。


 デフレが進行すれば、いずれは景気も戻ってくるのでしょうが、人間は、そうした不況に耐えられないようです。結局、浜口、井上の二人は、暗殺されてしまうのです。


・金本位制への復帰・・・本質的には、極端な不況政策である。運用が難しいばかりでなく、不人気と身の危険さえ予想される仕事であった(p12)


 なんだか、今の日本と世界も当時と似てきたような気がしました。不況でも震災でも頑張れるでしょうか。


 城山さん、良い本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・すでに決死だから、途中、何事か起こって中道で斃れるようなことがあっても、もとより男子としての本懐である(p19)


・ある国で輸出超過が続けば、決済代金として、外国から金が流れこむ。その結果、その国の金の保有量がふえ、これに比例して自動的に通貨が増発される。(p24)


・「銀座のカフェーを不景気にするような施政方針は 取らないことを請合い」と新聞で評された犬養毅の内閣。金輸出再禁止もしたため、世間ではインフレ時代到来と受け取った。円相場は二割あまりの暴落。小麦・木材・硫安はじめ輸入品の値段は、いっせいに高騰しはじめた(p211)


・井上準之助は日銀に在って・・・学卒者を講師にし、輪番で毎日テーマを変えて勉強会を開かせた。それは、講師自身の勉強にもなった(p64)


・浪人井上(準之助)は、また読書三昧にふけった・・・洋書だけでも千五百冊あり、目録づくりが一仕事であったが、その洋書がさらに年間百冊から二百冊ふえ続けた(p124)


・スイス人は、質素な上に、用心深くもある。・・・ふつう、3ヵ月から半年分の食糧を貯蔵する。・・・石油なども、ほぼ1年分を貯蔵している家が少なくない(p348)


男子の本懐 (新潮文庫)
城山 三郎
新潮社
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【私の評価】★★☆☆☆(68点)



著者経歴

 城山三郎(しろやま さぶろう)・・・(1927-2007)名古屋生れ。海軍特別幹部練習生として終戦を迎える。一橋大学を卒業後、愛知学芸大に奉職し、景気論等を担当。1957(昭和32)年、『輸出』で文学界新人賞を、翌年『総会屋錦城』で直木賞を受賞し、経済小説の開拓者となる。吉川英治文学賞、毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』の他、『男子の本懐』『官僚たちの夏』『秀吉と武吉』『もう、きみには頼まない』『指揮官たちの特攻』等。2002(平成14)年、経済小説の分野を確立した業績で朝日賞を受賞。


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